MR協会について


CPS試験を受験された皆さん、お疲れさまでした。
今回は21名が受験され、16名の方が合格されました。
ここ数年のCPS試験に継続して関わっていますが、年々受験者のレベルが上がっていることを実感しています。過去には合格ラインまでかなり努力を要すると思われる方もおられましたが、近年の合格を逃した方は、皆、「あと1歩」の方ばかりです。言い換えれば、あと少しトレーニングを重ねれば、必ず合格するレベルですので、諦めずにトレーニングを続け、再チャレンジして欲しいと思います。また、合格した方においては、今後も協会の勉強会等を活用し、スキルの定着につとめて欲しいと思います。
以下に主任試験員として気づいたことをコメントします。
                             MRインストラクター 戸上尚子

メッセージコントロール

 メッセージコントロールについては、どの受験者も重点的に練習を重ねてきた様子がうかがえました。特に深いうなずき、驚き、相手の苦しい心情へ共感する表情などは、上手にできていた方が多かったように思います。
 一方、相槌については、リズムはいいものの、単調な同じ相槌ばかりになってしまう方がおられました。この単調さがずっと続くと、「聞いているよ」のメッセージにはなるものの「興味をもって聞いているよ」にはならずに、「流して聞いているよ」の印象を与えることがあります。
 「うん、うん」や「はい、はい」以外にも「(息を吐きながら)あーー(そういうことなんですね)」「(ゆっくりしたリズムで)うーーーん(それはひどいなぁ)」「はーーーぁーーー(そんなに大変だったんだ)」このように、声の抑揚やスピードを変えたり、吐息とともに言葉を発すると、( )内に示したカウンセラー側の受け止め(理解)を、言葉を使わずに伝えることができますし、クライエントには「自分の話を大切に扱って聴いてくれている」と感じてもらえます。是非、工夫してみてください。

 また、受験者全員に共通していたのは、「要約が少ない」という点です。
 今回の試験のように、ショックな出来事にあったクライエントの体験を聴いていく際には、5ステップを使ってリズムよく聴きながら、今聞いている話題の先を促して聴き進める必要があります。多くのクライエントはカウンセラーを前にして「これから○○さんの体験をお聞きしますね」と言われても、何をどう話していいか分からないのです。その際に効果的なのが「ポイント要約+促し質問」です。例えば「頭が真っ白になって・・・。それから、○○さんはどうなさったのですか?」「事務棟の外にでて、それで?」などと促しを入れていけば、クライエントは何を話せばいいのかがわかるので、スムーズに会話が進むはずです。

 また、ある程度話を聴いたタイミングで、メッセージを込めた中要約を入れていくことも、とても重要です。今回、「○○さん(クライエント)は大変な中でも、部下への指示や現場へ駆けつける等、やれることをやっていた」という返答をしていた方が複数おられました。この返し自体は悪くないのですが、要約のない中で語ると、とってつけた印象にとられる可能性があります。  
 クライエントへのねぎらいの言葉のみだけを返すよりも、これまで聴いた話の中で、クライエントにとって大事な感情、出来事を取り上げつつ、「言いたいこと、分かって欲しいこと、聴いて欲しいこと」を含めながら要約していくと、もっと味方感が出るはずです。「メッセージを込めた要約」を効果的に使って欲しいと思います。

体験を聴くということ

 受験者の皆さん全員が、「クライエントの体験を丁寧に聴く」という点はしっかり理解されていると感じました。ではなぜ「丁寧に聴く」のでしょうか?また「どのように丁寧に聴けばいい」のでしょうか?
 ショックな出来事に遭ったクライエントは、思考や感情に偏りがでて、自責感・無力感が「過剰に」なっていることがあります。本人が出来事のどのような場面で自責や無力感を感じたのか、本人が1つ1つのエピソードをどのように捉えているのかは、詳しく聴いてみないとわかりません。クライエントが何に苦しんでいるのか、その「苦しみの背景」を知るために、今回の出来事がその人の目にどのように映っているのかを教えてもらうのです。

 上記の点をふまえて、体験を聴く時には「時系列で細かく」という風にお教えしていると思います。しかし、聴き進める際には、クライエントに与えるメッセージには十分に配慮する必要があります。特に悲惨な現場の様子を聴く時には、「倒れていた人の体(頭)の向きは?」の様に聴くと、やや事情聴取的になりますし、「苦しみの背景を知る」という意図からは逸れた聴き方になってしまいます。例えば「○○さんが駆けつけた時、○○(研修生)さんはどのような様子で倒れられていたのですか?」「○○さんの目にはどのように見えましたか?」といった聴き方の方が、クライエントの抵抗や戸惑いがなくお話いただけるように思います。

 また、お互いが共通認識を持つために図を書いてみる、ということも皆さんとても上手に出来ていたと思います。しかしながら、最初からクライエントに真っ白な紙とペンを渡して「書いて下さい」としてしまうと、やや唐突な感じがして警戒心をもってしまいます。
 図示してもらう時は、まずカウンセラーが聞き取ったことを少し書いてみて、その後に、「えーっと、すみません。2つの建物の位置関係がどんな感じか教えてもらえますか?」のように自然にクライエントに協力を促す感じにすると良いように思います。

自責の扱い方

 今回のシナリオでは、クライエントがカウンセラーとのやりとりの中で「自分が情けない」という自責感を強く出していました。試験では、自責を軽くしてあげたいがあまり、本人の健闘を称え過ぎて「変われメッセージ」になってしまうパターンや、自責に対し「そうですか…」と軽く触れるだけで引いてしまい、「配慮しながら触る」方は少なかったように思います。自責が語られると「あ、ここは辛いんだろうな。聴いたら傷つけてしまうかも」と変に察しが良くなってしまいがちですが、講座でお伝えしたように、自責は0にする必要はありません。

 軽く出来そうな自責だけ触るのではなく、軽く出来ない可能性がある自責にも配慮して触れていくのです。クライエントが感じている自責にまつわる部分をしっかり詳しく聴くことで、その方がどんなに辛いかをしっかり受け止めることが出来るはずです。消えない自責にただ静かに寄り添うことも、大事な支援であることを心に留めておいて下さい。

症状説明

 症状説明については、比喩(ボールや熱いお湯の例)を使った方が多かったようです。しかしながら、例えとのつながりが分かりにくく、クライエントが戸惑ってしまうシーンも見受けられました。
 今回のクライエントの症状は「眠れない」「場所に近寄れない」「何度も同じシーンが思い浮かぶ」などでした。ボールの例なら「目を傷つけないように目をつむる」のが本能的な反応であり、体を守るために目が無意識に反応している、ということですが、これを今回の例に使った場合、「この症状もボールと同じ自分を守る本能的な反応なのです」だけでは、なぜ苦しい反応が身を守っているのかの説明がないので、クライエントは腑に落ちないのです。
「ショックな出来事に遭うと、自分を再びの危険から守るために、危険なことが起こったその場所に近寄らせないような反応を起こしている、」などと「理由があるよ」の点をもう少し付け加えると良いでしょう。

CPS試験を受験された皆さん、暑い中の受験、お疲れさまでした。
今回は6名が受験され、4名の方が合格されました。
受験者の皆さんが、試験日にむけて、ご自身の苦手な部分の修正に努めてこられたのがとても良く伝わってきました。残念ながら今回は不合格となった方もいらっしゃいますが、その差はあと1歩、半歩の僅かな差です。更に研鑽を積んで勘所がわかってくれば、必ず合格できるレベルでしたので、ここで諦めずに是非次回もチャレンジしてください。
また今回は、再受験の方が何名かおられましたが、前回とは見違えるほどに力をつけており、文句なしの合格でした。「継続は力なり」をまさに体現した形です。是非、この合格をさらなるステップとして、トレーニングを重ねて欲しいと思います。
以下に主任試験員として気づいたことをコメントします。
                             MRインストラクター 戸上尚子

メッセージコントロール

メッセージコントロールについては、どの受験者もその重要性をよく理解して、練習してこられた様子が伝わってきました。特にその場に合った表情を作る工夫はどの方もしっかりトレーニングされていたと感じます。

しかしながら、今回の試験においては、相手が感情などの重要なテーマなどを話した時の、共感的なメッセージが全体的に薄かったように感じます。惨事を経験したクライエントの話を聞く場合、その方の事実認識を丁寧に聴いていくことになりますが、図を書いたり、聞き取った内容をメモしたり、やることが増えてくると、聴いた話に対して「そんなに大変な経験をしたのですね」「あぁ、そんなことが(あなたの身に)起こったのですか」「なるほど、この事実がこのようにつながっているのですね」的な、共感的な「納得・了解」や要約がどうしても薄くなりがちです。
興味津々のうなずきや、驚きのみで「それで、その後は?」と聴き進めていくと、「カウンセラーの情報収集のために聴いている」という風に相手には映ってしまいます。
相手の話をしっかり受け取ったよ、というメッセージを伝えるためには、体験の話の節目節目で、「(大きな深いうなずきと共に)あぁ、そうでしたか〜(余韻を持たせた語尾)」と返してみたり、その人の体験の大変さをメッセージを込めた中要約を使って返したりするといいでしょう。
また、声のスピード・抑揚、メモを取る頻度・分量、身振り、これらもすべて、何らかのメッセージをクライエントに与えています。自分の発信するメッセージが相手にどのように受け取られているか、自分の意図と違ったメッセージになっていないかを常に意識するようにしてください。

体験を聴くということ

「体験を聴く」という点については、今一度その目的を整理しておいて欲しいと思います。
うつのカウンセリングでは、症状にまつわる事柄を、惨事のカウンセリングでは、惨事にまつわるその方の体験を丁寧に聴きましょう、と講座ではお伝えしています。
なぜ、事柄や体験を聴くのでしょう?
我々カウンセラーは日々、悩んでいる人の話を聴きますから、「身近な人が突然亡くなった」「職場の上司にいじめられている」「家族の中で不和が生じている」などのテーマを聴いただけで、なんとなく、その人の苦しさや大変さが想像できてしまいます。
そのイメージだけで話を聴いてしまうと、かなり早い段階で「お辛いですね」「苦しいでしょうね」と言ってしまいがちです。そうやって使われた言葉は、「世界でたった1つのその人の体験」に向けられた言葉ではなく「カウンセラーの常套句」というメッセージとなって伝わってしまう可能性があります。

苦しんでいるクライエントに真摯に寄り添うのであれば、その人の「たった1つのストーリー(体験)」をしっかり聴く必要があります。
体験をしっかり聴くことで、目の前の人の「苦しみの背景」を教えてもらうのです。その背景を「納得・了解」して「共感」から出る言葉は、間違いなくクライエントに寄り添う言葉になるはずです。例えば今回のクライアントなら、うつの症状があるからと言って、症状だけを聞いていてもなかなか味方になれていきません。やはり3週間前の部下を失った体験をある程度しっかり聞かなければ、その方の全体の苦しみを理解できないのです。当然アドバイスも受け入れてもらえないでしょう。
目的を意識しながら、体験や事柄を聴くことを覚えておきましょう。

自責の扱い方

今回のシナリオでは、クライエントの自責感が非常に強く出ていることにカウンセラーは気づいたはずです。自責を上手に緩めるアプローチは必要な関わりですが、カウンセラーが「あなたは悪くない」「あの状況では仕方がなかった」と言い過ぎるのは「変われメッセージ」になってしまう可能性があります。自責0を目標にする必要はありません。
消えない自責にただ静かに寄り添うことも、大事な支援であるはずです。

症状説明やできること探し

症状説明については、説明用の図を用意してきた方、比喩を使った方など、色々工夫されていたと思います。症状説明は、慣れていないと曖昧な表現になったり、説得力が弱く伝わりがちです。
カウンセラーの「うまく言えるかな?」の不安な気持ちが、そのまま声のトーンや、説明の語尾に出てしまうからです。しかし、症状説明こそ、「これこれこういう理由だから、あなたは壊れている訳じゃないんだよ。ちゃんと対処があるからね」と自信をもって伝えなくてはいけない重要なパートです。しっかり練習しましょう。また事例を使った説明も有効です。自分の事例がなくても、講座や勉強会で耳にする事例を覚えておいて、上手に活用しましょう。
出来ること探しについては、無理強いをする人はいませんでしたが、カウンセラーの提案を受け入れられないクライエントである場合、何なら出来そうかを一緒に探していかないといけません。
うつっぽくなっているクライエントである場合、本人が周囲へ働きかけるエネルギーが残っていないことも多くあります。カウンセラーがクライエントの代わりに周囲に働きかけることも視野にいれ、クライエントに提案してもいいでしょう。これに限ったことではなく、様々な出来ることのパターンはあると思います。また「一緒に考えてくれる人がいる」だけでも、クライエントの助けになっていることも多いのです。できることを探すだけが、支援ではないということも意識しておきましょう。

CPS試験を受験された皆さん、暑い中の受験、お疲れさまでした。
今回は6名が受験され、4名の方が合格されました。
受験者の皆さんが、試験日にむけて、ご自身の苦手な部分の修正に努めてこられたのがとても良く伝わってきました。残念ながら今回は不合格となった方もいらっしゃいますが、その差はあと1歩、半歩の僅かな差です。更に研鑽を積んで勘所がわかってくれば、必ず合格できるレベルでしたので、ここで諦めずに是非次回もチャレンジしてください。
また今回は、再受験の方が何名かおられましたが、前回とは見違えるほどに力をつけており、文句なしの合格でした。「継続は力なり」をまさに体現した形です。是非、この合格をさらなるステップとして、トレーニングを重ねて欲しいと思います。
以下に主任試験員として気づいたことをコメントします。
                             MRインストラクター 戸上尚子

メッセージコントロール

メッセージコントロールについては、どの受験者もその重要性をよく理解して、練習してこられた様子が伝わってきました。特にその場に合った表情を作る工夫はどの方もしっかりトレーニングされていたと感じます。

しかしながら、今回の試験においては、相手が感情などの重要なテーマなどを話した時の、共感的なメッセージが全体的に薄かったように感じます。惨事を経験したクライエントの話を聞く場合、その方の事実認識を丁寧に聴いていくことになりますが、図を書いたり、聞き取った内容をメモしたり、やることが増えてくると、聴いた話に対して「そんなに大変な経験をしたのですね」「あぁ、そんなことが(あなたの身に)起こったのですか」「なるほど、この事実がこのようにつながっているのですね」的な、共感的な「納得・了解」や要約がどうしても薄くなりがちです。
興味津々のうなずきや、驚きのみで「それで、その後は?」と聴き進めていくと、「カウンセラーの情報収集のために聴いている」という風に相手には映ってしまいます。
相手の話をしっかり受け取ったよ、というメッセージを伝えるためには、体験の話の節目節目で、「(大きな深いうなずきと共に)あぁ、そうでしたか〜(余韻を持たせた語尾)」と返してみたり、その人の体験の大変さをメッセージを込めた中要約を使って返したりするといいでしょう。
また、声のスピード・抑揚、メモを取る頻度・分量、身振り、これらもすべて、何らかのメッセージをクライエントに与えています。自分の発信するメッセージが相手にどのように受け取られているか、自分の意図と違ったメッセージになっていないかを常に意識するようにしてください。

体験を聴くということ

「体験を聴く」という点については、今一度その目的を整理しておいて欲しいと思います。
うつのカウンセリングでは、症状にまつわる事柄を、惨事のカウンセリングでは、惨事にまつわるその方の体験を丁寧に聴きましょう、と講座ではお伝えしています。
なぜ、事柄や体験を聴くのでしょう?
我々カウンセラーは日々、悩んでいる人の話を聴きますから、「身近な人が突然亡くなった」「職場の上司にいじめられている」「家族の中で不和が生じている」などのテーマを聴いただけで、なんとなく、その人の苦しさや大変さが想像できてしまいます。
そのイメージだけで話を聴いてしまうと、かなり早い段階で「お辛いですね」「苦しいでしょうね」と言ってしまいがちです。そうやって使われた言葉は、「世界でたった1つのその人の体験」に向けられた言葉ではなく「カウンセラーの常套句」というメッセージとなって伝わってしまう可能性があります。

苦しんでいるクライエントに真摯に寄り添うのであれば、その人の「たった1つのストーリー(体験)」をしっかり聴く必要があります。
体験をしっかり聴くことで、目の前の人の「苦しみの背景」を教えてもらうのです。その背景を「納得・了解」して「共感」から出る言葉は、間違いなくクライエントに寄り添う言葉になるはずです。例えば今回のクライアントなら、うつの症状があるからと言って、症状だけを聞いていてもなかなか味方になれていきません。やはり3週間前の部下を失った体験をある程度しっかり聞かなければ、その方の全体の苦しみを理解できないのです。当然アドバイスも受け入れてもらえないでしょう。
目的を意識しながら、体験や事柄を聴くことを覚えておきましょう。

自責の扱い方

今回のシナリオでは、クライエントの自責感が非常に強く出ていることにカウンセラーは気づいたはずです。自責を上手に緩めるアプローチは必要な関わりですが、カウンセラーが「あなたは悪くない」「あの状況では仕方がなかった」と言い過ぎるのは「変われメッセージ」になってしまう可能性があります。自責0を目標にする必要はありません。
消えない自責にただ静かに寄り添うことも、大事な支援であるはずです。

症状説明やできること探し

症状説明については、説明用の図を用意してきた方、比喩を使った方など、色々工夫されていたと思います。症状説明は、慣れていないと曖昧な表現になったり、説得力が弱く伝わりがちです。
カウンセラーの「うまく言えるかな?」の不安な気持ちが、そのまま声のトーンや、説明の語尾に出てしまうからです。しかし、症状説明こそ、「これこれこういう理由だから、あなたは壊れている訳じゃないんだよ。ちゃんと対処があるからね」と自信をもって伝えなくてはいけない重要なパートです。しっかり練習しましょう。また事例を使った説明も有効です。自分の事例がなくても、講座や勉強会で耳にする事例を覚えておいて、上手に活用しましょう。
出来ること探しについては、無理強いをする人はいませんでしたが、カウンセラーの提案を受け入れられないクライエントである場合、何なら出来そうかを一緒に探していかないといけません。
うつっぽくなっているクライエントである場合、本人が周囲へ働きかけるエネルギーが残っていないことも多くあります。カウンセラーがクライエントの代わりに周囲に働きかけることも視野にいれ、クライエントに提案してもいいでしょう。これに限ったことではなく、様々な出来ることのパターンはあると思います。また「一緒に考えてくれる人がいる」だけでも、クライエントの助けになっていることも多いのです。できることを探すだけが、支援ではないということも意識しておきましょう。

CPS試験を受験された皆さん、
寒暖の差が大きく体調管理もむずかしい中での受験、お疲れさまでした。
今回は16名が受験され、10名の方が合格されました。
試験の回数を重ねる毎に、受験される皆さんのレベルが高くなっていることを感じます。そのため最近では、合否判定の審議に時間がかかることが多く、試験員、試験スタッフともに嬉しい悲鳴をあげています。講座のロールプレイや勉強会での皆さんの努力の成果がはっきり表れていることの証かと思います。残念ながら今回は不合格となった方もいらっしゃいますが、合格まであと一歩のところですので、ここで諦めずに是非次回もチャレンジしてください。合格された方も結果に満足することなく、講座の再受講、勉強会への参加、講座のクライエント役などを通して、いまの能力を実践で充分に使える「技」にまで高めていただけますようお願いします。
以下に主任試験員として気づいたことをコメントします。
                                 MRインストラクター 塩坪純

メッセージコントロール

まず、メッセージを伝えるとはなにかを、もう一度考えてみてください。
惨事介入の現場では、クライエントさんとカウンセラーは『その時』初めて向き合います。その時、クライエントさんが気になっているのは、この人(カウンセラー)は、「味方になってくれる」人かどうか、この人についていっても大丈夫なのか、だけです。カウンセラーがクライエントさんを観察するよりも鋭く敏感な目で、クライエントさんはカウンセラーを観察して、評価していることを忘れないようにしてください。カウンセラーは観る側ではなく観られる側であること、自分の表情や言葉がどのようにクライエントさんに届いているのか常に意識していることがたいせつです。これを発展させていくと、がけ崩れが起こったことに気づけること、気づけたら修復ができるようになります。

もう一点、メッセージコントロールの「技」以前に、メッセージを意識した時にたいせつにしていただきたいことに触れておきます。服装とネックレスなどの装飾品です。カウンセラーとしての実力があれば服装など関係ないという考え方もあるかもしれませんが、ここでもう一度、惨事介入の場面を考えてみてください。クライエントさんに関われる時間は限られていて、しかも「一発勝負(関われるのはこの時だけ)」です。メッセージコントロールの目的には短時間でラポールを作り上げることがあります。これを意識すると、クライエントさんに余計な思いを抱かせない配慮としての服装や装飾品があります。介入の現場では、入り口で躓いている時間はありません。繰り返しになりますが、クライエントさんはカウンセラーを観察して、評価していることを忘れないようにしてください。

 以下を参考に、もう一度整理してみてください。
 1.表情と相づちについて

  • ロールプレイのあとの実技指導者からのフィードバックを受けて、改善する努力をされてきたことははっきりとわかります。
  • 5ステップのうち、「興味津々」、「共感」などは比較的うまく使っていますが、「驚き」、「疑問・保留」、「納得・了解」はまだまだ練習が必要です。「興味津々」と「共感」を繰り返すだけでは、単調になり、クライエントさんの気持ちに寄り添うことはむずかしくなります。今回のシナリオで言えば、「あわてて駆けつけてみるとB君が血を流していた...」では「驚き」を、「頭が真っ白になって救急車を呼ぶ指示をしただけで、結局なにもできなかった...」では「疑問・保留」を表情で伝えられるようになるとカウンセリングのリズムや流れを作ることができるようになります。「徹子の部屋」や「サワコ(阿川佐和子)の朝」などインタビュー番組を録画して練習してみるのもよいかもしれません。
  • 相づちは、重ねすぎると別のメッセージになることは、講座でお伝えしたことです。 今回の試験で気になったのは、相づちをクライエントさんの話の内容やペースに合わせるためというよりも自身のタイミングを合わせるために使っているように見えたところです。まわっている大繩に入るタイミングを窺いながら、いくぞいくぞという感じで待ち構えている、カウンセラーの意気込みが前面に出すぎている感じでしょうか。ここは皆さんご自身でふり返ってみてください。

 2.「伝わってきます」だけでは、伝え返せていない

  • カウンセラーの初期のトレーニングでしっかり訓練されたためでしょうか。「おつらいお気持ちが伝わってきます」と返すこと、これに準じる応答をされていたことも気になるところです。伝わってきことをカウンセラーがどう受けとめたのか、これを伝え返してください。自分が話したことがカウンセラーにどう受け取られたのか不安なクライエントさんに余計な想像をさせないためです。

「おつらい気持ちを抱えながら、それでもご自分のお立場や役割を考えてお仕事を続けていらっしゃった...苦しい中で、今日までがんばってこられたんですね」

  • という応答はいかがでしょうか。

 3.投網(とあみ)の言葉は使わないようにする

  • カウンセラーが抽象的な言葉を使うことも気になりました。基礎講座の実技指導でもお伝えしたことがあるので、覚えている方もいらっしゃるかもしれません。「困惑しているのですね」は投網(とあみ)の言葉で、微妙で繊細な感情を一網打尽に括ってしまう言葉です。カウンセラーからこのように言われたときに、クライエントさんは、はずれてはいないけれど、なにかしっくりこないものを感じながらも「はい」と言うしかなくなります。これを避けるためには、まず、漢字二文字の言葉はひらがな言葉に変換してください。そのあとで、感情や気持ちを表す言葉に状態を形容する言葉を加えてみてください。たとえば、「困惑しているのですね」ではなく、「どうしていいかわからないほど困ってるのですね」などです。ニュアンスがちがっていればクライエントさんに訂正してもらってください。クライエントさんの気持ちがさらに具体的になります。

 4.体験を聴くということ

  • 試験では、クライエント役から話し始めて、それを受ける形でそれまで話されたことを要約しながら応答するところから始まります。ここで、唐突に事実の確認に入るのではなく、事実の確認が必要な理由をクライエントさんに伝えることが必要です。

「このような時は(ショックな出来事を経験した時は)、いろいろな思いや感情が湧き起こって、なにが起きて、なにができたかを整理できていないことがあります。こうなると、できなかった/やってしまったことばかりに目がいってしまって、必要以上にご自身を責めてしまうことがあります。私も○○さんの苦しさをもっと具体的に知りたいので、その時何が起こってどうしたのか、どう感じたかを一緒に振り返ってみたいと思います。事故が起こった時から今日までに起こったこと、感じてきたことを確認したいのですが、□□が起こった時のことから詳しく聞かせていただけますか?」

  • 少しくどいかもしれませんが、このようにして事実の確認に入っていくのはいかがでしょうか。考え方の基本は、「要約してから質問する」と同じです。事実を確認する意図をはっきりさせることがたいせつです。
  • 試験時間は20分間なので、事実を詳細に聞くのは難しいかもしれませんが、実際のカウンセリングでは、その時のクライエントさんのたいへんさや苦しさを感じられるように、事故当時の場面を具体的にイメージできるまで図に描きながら聴いてください。

 5.まず、症状が出ていることの不安に応える

  • 試験の中でも、クライエント役が症状とそれが続くことの不安を訴えたと思います。これにすぐに応えることも、事実の確認を進めることもできますが、まず、クライエントさんの要望に応えることです。すぐに応えて後で事実の確認に戻るつもりならば、このようにお話しすることができるかもしれません。

「ご自身に起こっていることに不安なお気持ちが強いようですので、いままで伺ってきたお話しから、○○さんに起こっている反応や症状と対処方法についてお話しさせていただきますね...、他にも症状が出ていることがあるので、そのあとでまた続きのお話しを聞かせてください」。

  • 原始人の喩え、ボールが飛んでくるお話しなど、人間にもともと組み込まれている反応としてお話しされる方が多かったと思います。講座でお伝えしたことはしっかり理解されていることがわかりました。自分が言われてしっくりくる喩えを自分の言葉で考えてみてください。ここでも気になったのは、唐突に説明に入るところです。いきなり喩え話を始めるのではなく、

「いま○○さんに起こっている反応や症状は、もともと人間に組み込まれているものなので、意志の力ではコントロールできないのです。どういうことか説明させていただだいてよろしいですか」

  • と確認してから、説明に入ったらどうでしょうか。
  • ここの考え方の基本も、「要約してから質問する」と同じです。これから何を説明しようとしているのか予告して、クライエントさんが説明を受け入れる準備をするための間をとってみてください。

 6.対処方法は押しつけない

  • 反応や症状が落ち着いていく曲線を示して、観察することを勧めていたことからも、講座でお伝えしたことを理解されているのがわかります。観察する内容は具体的にして、 事故が起こってからいままでの変化の様子を丁寧に確認しながら、少しずつ落ち着いてきていることを実感してもらってください。たとえば「眠れない」についてです。同じ「眠れない」にしても、少しずつでも長く眠れるようになっていること、中途覚醒の回数などを確認することがたいせつです。これは、これから先もしばらく観察を続けてもらう時に、なにを観察したらよいのかをはっきりさせることにもなります。
  • うつの症状に焦点をあてながら、「休養」、「受診」、「環境調整」を提案される方もいらっしゃいました。これもよい視点と提案ではありますが、クライエントさんが言葉や表情で抵抗を示したら、無理に押しつけることなく、抵抗する理由を伺いながら、「たしかに、そのようなご心配があれば、いまはこの(提案した)方法には無理がありますね」のように返してください。クライエントさんは負担感を感じているのですから、無理強いされることはないと安心してもらうことがたいせつです。
  • また、お酒の量が増えた話に、すぐに飲酒のデメリットを説明された方もいらっしゃいましたが、いまの苦しさを少しでも楽にしたいと思うクライエントさんが、もがきながらも自分なりになんとかしようとしてやっていることです。いきなりデメリットを説明するのではなく、まず、その切羽詰まった気持ちをしっかり受けとめてください。飲酒のデメリットは、良質な睡眠と合せてカウンセリングの後半でお話ししてもよいことですね。

試験を通して感じたことを書かせていただきました。私ならこのようにお話しするということで書いたところもあります。ここに書いた言葉をコピーして使うのではなく、ご自身の言葉に置き換えて、何度も声に出すことで、ご自分のものにしてみてください。
少しでも皆さんのステップアップの参考にしていただければと思います。


CPS試験を受験された皆さん、酷暑の中の受験、お疲れさまでした。
今回は8名が受験されました。残念ながら不合格の方もおられますが、僅かな点での取りこぼしが合否に影響した印象です。あともう少しのところですので、ここで諦めずに是非次回チャレンジしてください。
以下に主任試験員として気づいたことをコメントします。

                      MRインストラクター 戸上尚子

メッセージコントロール

すべての受験者が「CLの味方になる」ということの重要性をしっかり理解されていると感じました。しかしながら、5ステップ、メッセージの階段、要約・質問を「何のために」使うのか、の点については、もう少し頭を整理して理解を深めて欲しいと思います。以下を参考にしてください。
 1.味方になるということ

  • 味方になるということ
  • 今回のシナリオの事例は「警備会社のリーダー社員と入社間もない部下が、勤務先の地下駐車場で危険ドラッグを使用していた男と遭遇し、部下が刃物で斬り付けられて怪我をした」という事件でした。カウンセリングは3週間後、対象はリーダー社員です。
  • 試験の事例のCLはショックな出来事と、その後の心理的・肉体的負担(加えて、実はこの出来事の前からエネルギーが低下する他の要因もあったのですが...)により「4つの痛いところ」が過剰になり、惨事の症状もずっと強いままで、ガチガチの防衛モードになっています。こういった状態のCLは、警戒心が高く、敵か味方かよくわからない相手のことは「敵」と誤解しがちです。つまり、些細なことも裏メッセージに取りやすくなっているのです。
  • しかし、このような非常に苦しい状態のときに、孤独な自分を支えてくれる「味方」が出来れば、防衛がゆるみ、不安が軽減され、自分のことを客観視してとらえ直す余裕がでてきます。さらには具体的対策にも手が出るようになるのです。したがって、ピンチのCLには、曖昧さを避け、味方であることを積極的に分かりやすく表現する必要があります。今回の試験の中では「敵」と誤解されてしまう関わりがいくつか見られました。

 2.表情、相づちが単調

  • 表情の表出が得意な方、相づちのバリエーションや抑揚が豊かな方、など、それぞれ自分の得意・不得意があるようです。得意なパターンのメッセージばかり使っていると、ワンパターン化し、CLの気持ちに沿わないメッセージとなる可能性があります。
  • 特にCLが自分を過剰に責め、「私が刺されるべきだった」的な発言をしたときに「保留」せずに「うん、うん」と「納得・了解」してしまう方がかなりいました。「その苦しい気持ち、わかるよ」を意図した返しだとは思いますが、CLにはそのように伝わっていない可能性があります。「保留・疑問」をしっかり身につけておいてください。

 3.促しでリズムをつける
CLに安心して話してもらうためには、余計な心配や不安を与えないような関わりが重要です。例えば

CO「事件当日のことをお聞きしていいですか?」
CL「あ、はい。大丈夫です…」(不安そうな声のトーン、表情)
CO「・・・」(CLが当日のことを話し始めるのを待っている)
CL「・・・」(戸惑ったような表情。心の中は「えっと、何を話せばいいのだろう?」)

上記のようなやりとりが、数名の受験者に見られました。この場合であれば、COは、CLが話始めるのを待つというよりは、話しやすい「促し」をしていく必要があります。例えば「事件当日は、何時から勤務開始だったのですか?」などと、CLが「何を話せばいいのか」がすぐにわかるように、話し始めは優しくリードすべきでしょう。
また、こんなシーンもありました。

(体験や事柄を聞いている時)
CO「振り返ったら部下とその男がもみ合っていたのですね」
CL「はい、そうなんです・・・」
CO「・・・」(心の中:この後どうなったのかな?)
CL「・・・」

こういう風にお見合い状態になってしまう時も、COの言葉の最後に「それからどうされたのですか?」などの促し質問を入れて、その先を更に話してもらうよう、やりとりにテンポを持たせると良いでしょう。

体験を聴くということ

今回はほとんどの方が、CLの事件当日の体験を図なども活用しながら丁寧に聴こうとされていました。体験を聴くことは、慣れないとなかなかスムーズにいきませんが、何のために体験を聴くのか?についても、いま一度確認し
ておいてください。

 1.私的体験として聴く

  • CLの体験(出来事)の中に、無力感や自責感などの「痛いところ」が隠れているというのは、既に皆さんよく理解されていると思います。また、惨事であれば、当日のことを思いだし語ることで、記憶の整理ができたり、事実認識の修正が起こりうるというということも講座でお伝えしました。
  • では、この体験をどう聴いたらいいのでしょうか?
  • 体験を聴くというのは、CLが遭遇した出来事をただ聴くのではありません。その出来事に対してCLが「どう関わった」か、CLの行動に「どのような理由」があって、その出来事を通して「どのようなことを思い、何を感じたか」という「私的体験」を聴くのです。「私的体験」として聴かせてもらうには、CO側の理解がずれていないか要約して確認し、分からないところは質問&納得・了解しながら丁寧に聴きすすめる必要があります。この手順をおろそかにしてしまい「CLの体験をわかったつもり」になっているパターンが多いようです。この「わかったつもり体験」に基づくCOの共感やねぎらいの言葉が、CLの心情とはズレているために、CLには裏メッセージと受け取られ、味方感が薄れてしまう(=がけ崩れが起こる)方がおられました。

 2.がけ崩れを避けるには

  • 人は皆、他人から「自分を大切なオンリーワンとして扱って欲しい」という欲求をもっています。
  • この「大切に扱われている感じ」は、「自分の個人的な状況や思いや行動を、よーーーく分かってくれていると実感できるCOの言葉や態度」によって生まれるものなのです。
  • COが出来事の概要をさらっと聞いただけで発する言葉は、CLの体験、生き方、思いを反映していないので、嘘っぽい感じがしてしまうのです。COとしては、概要を聴いただけでも十分その辛さが想像出来るし、CLの苦しみに共感して、その頑張りにも寄り添いたいと思っているにも関わらず、そこがCLに誤解されてしまうのはとても勿体ないことと思います。
  • 是非「私的体験として聴き、CLの体験、生き方、思いを反映した応答」を意識してみてください。

症状の説明と対処について

話の途中でCLから「この自分の症状(地下の巡回にいけない等)は、一体いつまで続くのでしょう?」との訴えがあった時、今回の試験では、ここをスルーした人はどなたもいませんでしたが、説明が不安情報になってしまったり、説得気味になってしまった方が多かったようです。説明に納得感がないまま、ごり押ししてしまうと「変われ」メッセージになってしまいます。

今回のCLは事件後3週間たっても、症状の治まりをほとんど実感できないということを訴えていました。第2の無力感の「自分が壊れた」感が強くなっていると見て取れます。
無力感の7つのステップを参考に、症状の落ち方が遅れている理由を、事例や比喩などを使って、分かりやすく説明してあげてください。特に男性の場合には「あなたは壊れていないよ(=まだまだ立派に戦えるよ)」の根拠となる「理由があるよ」の部分はしっかり伝えた方がいいでしょう。その際には事例や比喩を活用したり「体験を聴く」の段階で聴いたCLの「私的体験」から、症状説明に使える情報を引用しながら理由を伝えると効果的です。伝え方も工夫してみてください。

対処については「休む」「病院へつなげる」の提案が多かったようですが、CLのニーズと合っていない印象でした。まずは、最善と思える対処を提示してみて、それがCLのニーズと異なる(抵抗を示された)場合には、対処のゴールを柔軟に修正していきましょう。CLの味方になって「変わらなくていいよ」メッセージをだしながら、今のCLを無理に変えずに出来ることは何か?を一緒に探してみましょう。


平成26年度のCPS認定試験を終えて

CPS認定試験の受験、おつかれさまでした。
 回を重ねるごとに受験者のレベルが上がっていることを肌で感じます。認定試験を運営しながら、このような刺激を受けると、講座の実技指導に入るときはしっかり準備をしなくてはと、鉢巻きを締め直すことができます。
 メンタルレスキュー協会が重視しているのは知識だけではなく「実践力」です。実践力は使わないと身に着かず、失われてしまいます。やってみてうまくいかなかったところをどうするか考えて、もらったフィードバックと合わせて次のロールプレイで修正してやってみる。やってみて、考えて、またやってみる。このサイクルをまわし続けることです。
 認定試験もまた、このサイクルの中のひとつの場です。合否の結果にかかわらず、基礎講座の再受講、協会主催の勉強会への参加、受講仲間や協会スタッフを巻き込んでの自主勉強会などで刺激しあいながらトレーニングを続けていただければと思います。

                      文責:認定委員長 塩坪純

今回は、30名の方々が受験され、63パーセントの方々が合格されました。
アドバイザーとして次のような点に気が付きましたのでご紹介します。

                      MRシニアインストラクター 下園壮太

1 痛いところにうまく対応できていない

カウンセラーとして、クライアントの「痛いところ」に上手に対応できるかどうかは極めて重要な能力です。「対応の能力」は2つの部分に分け考えることができます。一つは「痛いところ」を正しくつかめるかです。もう一つは、痛いところに気がついたときに、「どのように反応するか」です。
 1.痛いところを察知する

  • ガス事故に対応したクライアントのケースで説明します。事故現場の詳細を聞き、遺体に関わった辛さに共感する受験者は多かったのですが、クライアントがその場で気を失いその後3日間入院したこと、つまりクライアント自身が死の恐怖を感じたことについて、スルーした方が多かったようです。これまで講座などで練習してきたケースでは、事故現場についての回避や、そのイメージの侵入、眠れない、イライラなどの過覚醒、それらに伴う無力感や自責の念を扱ってきました。今回は、惨事に触れる体験だけでなく、直接自分自身に危険が降りかかったケースです。その場合、ファーストショックに恐怖や不安が加わります。今回のクライアントの一番の「痛いところ」は(自責に加え)その恐怖です。単に一般的な回避症状として「原始人」の比喩で説明されても、その痛さを認識していない場合、相手の心に響いてくる説明にはなりません。より現実的なケースだったので、救済者としての感性が問われることになったかもしれません。これらの感性を磨くには、講座でも紹介した通り、より多くの事例に触れることです。映画、小説、ドキュメンタリーなど、その気になれば教材はどこにでもあります。3・11から4年目の春。今、テレビなどが多くの人々のケースを紹介してくれています。ぜひ、ご覧になって、メンタルレスキュー(心の支援者)としての感性を磨いておきましょう。


2.メッセージコントロールで正しく対応する

  • 痛いところを正しく察知しても、それをスルーしたり、逆にがけ崩れを起こすような対応しかできなければ、元も子もありません。痛いところへの反応手段としては表情、要約(感情を盛った要約)筆記、その細部ついてのさらなる質問などがあります。つまりメッセージコントロールです。
  • すべての受験者はメッセージコントロールを意識してカウンセリングをしてくださいました。しかし、残念ながら不合格だった方は、痛いところに対して、クライアントに十分なメッセージが伝わっていない人が多かったのです。
  • メッセージコントロールの重要性はほとんどの受験者が認識し、かなり意識して「5ステップ」や「感情を盛った中要約」などを試みてくださいました。受験後の諮問でも「メッセージコントロールは意識して、自分なりにはよくできたと思います」と振り返ってくださる方も多かったのです。しかし残念ながら、そのような方のなかにもメッセージコントロールが不十分という事で、不合格になってしまった方がいらっしゃいました。メッセージコントロールの難しさは、「自分の意識」がそのまま、現実に相手に伝わるものではないという事です。自分では「しっかり表現した」と思っていても、客観的に相手に伝わっていなければ、パワーがないのです。
  • 私は講座でのみなさんの姿を見ています。不合格だった方でも、講座の時よりはかなりレベルアップしている方が多く皆さんの努力を感じることができました。しかし、それがカウンセリング現場(特にクライシス現場)で相手にしっかり通じるようなメッセージコントロールに至っていないと評価された場合、残念ですが、不合格と判定されました。
  • ただ、不合格になったからと言って、すべてを投げ捨てないでください。皆さんの成長のための「変化の方向性」は間違えないのです。ただ、トレーニングが足りなかっただけなのです。
  • メッセージコントロールは、ご自分だけでトレーニングするのが難しい技術です。まずは鏡やビデオで自分の姿を「見る」のは必須の訓練ですが、それだけでは自分の感性だけでのチェックになってしまいます。自分の姿が「他人に」どう見られるかという視点からも訓練しなければなりません。ぜひ仲間を集って、勉強会などでお互いのメッセージコントロールをフィードバックしながら練習してみてください。

2 体験の聞き方が不十分(体験を聞く意味)

 試験員から「体験を聞く意味」を質問された方が多かったと思います。
 多くの方は、「事実をしっかり聞いて、共感するため(味方になるため)」と答えてくれました。正しい答えです。惨事の場合、感情より事実に共感できるポイントが隠れています。
 ただ、体験を聞くのはそれだけではありません。講座でも下のスライドで説明した通り、「ゆがんだ事実認識を修正するチャンスを提供する」という目的があります。
例えば、ガス事故のケースでは、「自分が換気をしろと強制しなかったから事故が起こった」という強い自責があります。
この場合、

  • 換気扇の件は、どう知った。
  • どう伝えた?
  • 相手はどう反応した?その時どう考えた。
  • 事故が起こる前での間、クライアントは何をしていた?

など、細かく事実認識を聞いていく必要があります。
すると、細部を思い出す段階で、「そういえば、あの日は前日のクレームの処理が急がされていて、事務の方に集中しなければならなかった」とか「注意したとき、一人が窓の方に向かっていったので、窓を開けると思った」など、その時のクライアントの細部の思考を思い出すことができたりするのです。
人は、その場その場で結構適切に考えながら行動をしているものです。ところが、惨事が生じてしまうと、「自分が悪かった」という偏った思考でしか過去を見ることができません。惨事カウンセリングで、過去を詳細に聞いて差し上げることで、クライアントが、「その時な行動にはその時なりの理由があったこと」を思い出すきっかけになるのです。

3 「構造化」と「話の流れ」

2で説明したように、体験は詳しく聞く必要があります。ただ、何を、どのレベルまで詳しく聞くのか、というのは、難しい問題です。
 例えば、ガス事故の場合、パートの方の時給を聞いてもあまり意味はありません。ところが、パートの方の経験年数を聞くのは、意味があるかもしれません。このあたりは、カウンセリングできる時間との関係もありますが、大きくは、概要を聞き、その中で漏れ出してきた「痛さ」をとらえ、痛さ(自責、無力感、恐怖、怒り…)等が潜んでいそうな部分の体験を、更に細かく聞いて行くという流れになると思います。
 こう聞くと、「あれ、講座ではまず体験を重視して、感情はその次に聞き、症状や説明はその後、と教わったけど」と感じる方も多いと思います。

 講座では、一つのパターンとして構造化(面接の手順)をお伝えしました。しかし、すべてのカウンセリングには、個性(流れ)があります。惨事の特性、クライアントの特性(関心、不安)、カウンセリングで利用できる時間、話の進み方などで、変わってくるし、変えていかなければならないのです。
 体験の聞き方に話を戻すと、簡単な出来事なら、まず体験を集中的に聞き、その次に感情、その次に症状というステップを踏めます。
 また例えば震災の場合など、体験と言っても、あまりにもたくさんありすぎて、どれか一つを聞いていると、それだけでカウンセリングの時が過ぎてしまいます。継続できる場合なら、もちろんそのような聞き方でも問題ありません。しかし、1度しか支援の機会が取れないという難しい場面もあるのです。メンタルレスキュー協会では、そのような難しい場面でも、少しでも有効な支援ができるように、まずは体験を「大まかにでも全体像を聞く」ということに、時間を割く手順を構造化面接手順として、提示しているのです。

 今回のガス事故のような場合、簡単な出来事と震災のような長期的惨事の中間に位置づけられる惨事です。このような場合、まず全体を把握し、次に細部を聞いていくという方法が良いでしょう。
 さて、もしクライアントが体験を話しているうちに、今悩んでいる症状について質問してきた場合どうすればいいでしょうか。カウンセラーは、構造化を進めたい。クライアントは、もっと現実的にカウンセラーの意見やアドバイスを聞きたい。

 このような場合、クライアントが「事実を細かく聞かれるカウンセリングの進め方」に疑問を持っていると感じる必要があります。少しだけ「がけ崩れ」と考えてください。
 このような場合、味方に戻る。つまりクライアントの意向を尊重し、クライアントの質問に答えることを優先するべきでしょう。例えばカウンセラーとしては、“まだ事実は聞いていないし、感情も分からないし、症状も聞いていないから、説明できない!”と感じていても、「今、私がお聞きした範囲ですが、眠れない症状や厨房に入れないという症状は、○○さんが今回経験したような大きな出来事の後、多くの人が訴える症状で、実は、それだけならそれほど心配する必要はないのです。例えば…」と事例を話します(残念ながら、今回の試験で「事例」を使って説明した方は一人もいらっしゃらなかったのです。事例は非常に強い説得力を持ちます。ぜひ、説明に使える事例を準備してください)。 このように今の時点での、カウンセラーの考え(見立て)を説明するのです。
その上で、「ただ、例えば“厨房に入れない”という症状には、もしかしたら私がまだ分かっていない違う意味合いが隠れているかもしれないので、もう少し具体的に事件のことをお聞きしたいと思うのですが、」と体験に戻ればいいでしょう。

今回の試験に際し、受験者それぞれの体調やライフイベント、あるいは緊張もあり、必ずしも受験者の実力を反映できなかった方も多いと想像します。メンタルレスキュー協会での試験は、その方を絶対的に評価するものではなく、トレーニングの目標としていただくものです。合格、不合格に関わらず、ぜひ更なる実力向上のモチベーションにして欲しいと思います。

なお、メンタルレスキュー協会は、27年度からの新講座として、「危機介入カウンセリング上級講座」を開始します。特に上級(個人)Ⅱでは、クライシスカウンセリングの戦略的進め方を勉強します。今回の試験のような少し複雑なケースをどう考え、どう情報収集し、どのようなゴールをイメージしながらカウンセリングをマネジメントしていくかを考える講座です。
上級(個人)講座は、CPSの合格は受講の条件ではありません。知識として、どんどん先に勉強を進めていただきたいからです。ただし、実際のカウンセリングでは、上級講座で勉強することより、基礎講座での知識やスキルの方が大きな意味を持ちます。ですから、上級講座で勉強すればそれでいいというものではなく、基礎講座のスキルは、ぜひ今後も継続してトレーニングしていってほしいと思います。

1 メッセージコントロール

メッセージコントロールの重要性については、ほとんどの受験生のみなさんが意識しており、ある程度のトレーニングはできていると感じました。ただ、次のような所に更に気を付けていただきたいと思います。

  • 笑顔のコントロールが不十分
    • どうしても女性の方は、特に話をする時に笑顔ベースに戻ってしまう方がいらっしゃるようです。
  • 声が小さい
    • 相手の気持ちに合わせすぎて声が小さくなると、逆にCLは聞くのにエネルギーを使ってしまいます。もちろん大きすぎてはいけませんが、ある程度は「声を張る」つもりでカウンセリングした方が良いと思います。
  • フランクすぎる言葉づかい
    • CLとの距離を詰めるために、フランクな言葉遣いをするCOもいると思いますが、いきなりフランクに入ると、対人恐怖的なCLの場合、それだけで心を閉ざしてしまう可能性もあります。カウンセリングのはじめのほうは、やはり敬語ベースでやり取りするのが無難でしょう。
  • 一つの要素だけでメッセージコントロールができると考えない
    • 相手に与える印象、つまりメッセージは、例えば「優しい声で言えばいい」と言うものではありません。トータルなものです。例えば声と表情がでない、要約なしで質問を続ける(直Q)、頷きと相槌が単調である、カウンセラーの価値観が前面に出てきてしまう、などの要素からにじみ出てしまう総合的なものです。

2 練習の必要性

という事は、何か1つを意識しても十分ではない場合が多いのです。しかも、COが何を意識したかではなく、(結果的に、総合的に)相手にどう伝わっているかが重要です。
つまり、メッセージコントロールの訓練は、独学では限界があると言うことです。ぜひ仲間と一緒に勉強するか、どうしても仲間を見つけられない場合は、ビデオツールなどを使って客観的に自分のパフォーマンスを確認していただく必要があると思います。

また、実際に現場を持ち、ある程度の実績を持っていらっしゃる方、基礎講座などの練習の場面では上手にできていた方で、試験の場では、本来の実力を発揮できなかった方がいらっしゃいます。
スポーツの場合も同じで、試合ではなかなか練習の実力が出にくいものです。それを前提に、「7割の力しか出なくても勝てるように練習しろ」と、ある高校野球の監督が言っています。
我々も同じだと思います。カウンセリングの現場、特にクライシス場面では、COは大変緊張するものです。そのような現場や試験の場でも、ある程度のコンスタントなパフォーマンスが発揮できるには、練習を繰り返して体で覚えるしかないのではないでしょうか。

3 自分自身の価値観を見直す

メッセージコントロールの所でも触れましたが、COの価値観はどうしてもメッセージとして表れてしまいます。
本人がそれに気づいていない場合が多いのですが、たとえ気付いていても、本気でそれを変えなければならないと思わない限り、なかなか価値観は修正できないものです。
カウンセリングがうまくいきにくい価値観としては、

  • CLに自己決定させなければならない(指示してはならない)
  • 歪んだ認識(認知)を変えてあげなければならない。気付かせてあげなければならない。
  • 私の力で少しでも楽にしてあげなければならない
  • 自責を私の一言で緩めなければならない
  • 私の一言で自信を回復させてあげなければならない
  • 必ず医療になげなければならない

このような価値観が強いと、どうしても裏メッセージに取られがちになります。このような価値観も、仲間との訓練のなかで、お互い指摘し合って、気づけるようにしていきましょう。

4 相手をよく観察する

COは、できるだけ裏メッセージに取られないように注意しなければなりませんが、相手によっては、思わぬ方向で裏メッセージに取られることもあります。それは仕方がないことですが、カウンセリングを行う場合はそのこと(裏メッセージに取られている事)にいち早く「気がついて」、がけ崩れ対策を行わなければなりません。
その為には、相手をよく観察しなければならないのです。
特に、相手の表情、体の動き、否定的な言葉(「でも」、同じことを繰り返すなど)に注意すると良いでしょう。
講座でもお伝えしましたが、崖崩れが発生しやすい場所があります。

  • カウンセリングの導入部分(クライアントの不安が大きい)
  • 体験を聴く部分で尋問調になっている場合
  • 説明をする時(無理もないよメッセージが基礎メッセージを否定する)
  • 対処法を説明する時(こうすればいいよメッセージが、すべての下位メッセージを否定する)

このような場面では、裏メッセージを意識して、注意深くCLを観察するようにしてみてください。

5 体験の聞き方

今回の試験では、体験の聞き方で「尋問調」になる方が目立ちました。
体験の聞き方のコツは、初心者には、「細部まで聞くこと」を伝えています。今回は、ここまではほとんどの方ができていらっしゃいました。次のコツは、「尋問調にならないように聴く」ことです。
細部まで聞く、の目的は細部を聞くことによって相手の体験した異常の世界を効果的に「共感」できるからです。しかしながら細部まで聞こうとして尋問調になると、結局冷たい感じや、調べられているような雰囲気が強くなって、共感(味方感)が薄れてしまいます。また、冷静で中立的な聞き方もクライエント側にすると、味方になってもらえている感じが持ちづらいものです。

尋問調にならないためのコツは

  • 体験を聴く理由を説明する。
  • その部分を聴く理由を説明する。(背景説明)
  • 感情が含まれている部分では、ファイブステップを駆使して共感を示しつつ、メッセージを載せて要約する。
  • ノートに書くタイミング、話に集中するタイミングを使い分ける。

また、受験者の中には「大変な出来事を詳しく聞いたら傷つけてしまうのではないか」という恐れや迷いをもって聞いているような印象も受けました。
悲惨な話を聞く時、たとえクライエントに否があろうとも「徹底的に味方になって聞く」ことで、悲惨な出来事を細かく聞いても、クライエントは「傷つけられた」「取り調べを受けた」と感じるよりも「この人は自分の苦しみを本当に分ってくれている(さすが専門家)」の印象の方が大きくなるはずです。

繰り返しになりますが、体験を細部まで聞く目的は「カウンセラーが事実を正確に知る」ことではなく「クライエントのお話のどこの部分に自責や無力感など(=とても苦しくて痛い症状)が隠れているかを理解するため」です。カウンセラーは自責や無力感が隠れていそうなところを想像しながら聞くのです。そこを意識しながら聞きすすめると、中要約は事実をまとめる要約ではなく、必然的にねぎらいだったり健闘をたたえるメッセージを込めたものになってくるはずです。

また、カウンセラーからのねぎらいや健闘のメッセージをクライエントが素直に受け取れなかったとしても「そういう風にしか今は思えない」というその状態の味方になる「相手の状態に合わせた押し引き」が必要です。
クライエントがどんな状態であっても、その状態の味方になる(=変わらなくていい)ということを忘れないようにしてください。

6 構造を進めるか、CLの不安に応えるか

 構造で進めることは初心者にとっては重要なコツですが、もし途中でクライアントがあることを聞いてきたり、一つのテーマにこだわったりする場合は、クライアントの不安にある程度答える必要があるでしょう。

 たとえ体験の段階の途中でも、強引に構造を進めようとしても、クライアントが置いてきぼりにされた感じがして、結果的に味方感を失います。
体験の段階の途中で、感情や症状説明に入らざるを得ない場合は、クライアントがそのテーマを話してから、あるいはこちらの説明にある程度納得してから、構造に戻るようにします。構造を進めることが目的ではありません。あくまでもコツです。

7 症状説明

今回の試験では、症状や対処法についての説明があまり上手ではなかったように思います。
ファーストショックなら、基本的には大事(おおごと)にせずに、観察しておく対処が鉄則ですが、今回の介入時期は3週間でした。「1ヵ月で収まります」という説明では、まだ症状が治まってきている実感がないCLは不安になりますし、「3ヶ月ほどは長引きます」では、負担感が強くなります。
言葉だけではなく、症状低下のグラフを描いて、直後からの苦しさの低下度を意識してもらうと良いでしょう。

また、原始人の比喩を使っての説明にトライした受験者もいましたが、説明がこなれておりませんでした。よく練習しておくと良いでしょう。相手を説得することが目的ではありません。現場ではシンプルな説明(論理)が必要になります。また理屈よりも事例の方がインパクトがあります。さらに、説明をしているときは、よくCLを観察して崖崩れになっていないか注意する必要があるのは、先に述べた通りです。

またこのようなCLの場合、「あの人はもう落ち着いているのに、どうして自分だけ症状が残っているのか」ということに第二の無力感を強く感じている場合があります。このような場合は、「あなたには特別の事情や心理メカニズムが働いているから、この症状が強く続いている、これをこうすればいい、これがこうなると治まってくる」という、その人オリジナルの説明をしてあげなければなりません。CPS試験ではそのような説明のうまさは採点にはあまり影響しませんが、実際現場では大変大きな要素になります。そのような説明のスキルは、来年度新設されるうつ・クライシス上級講座で取り扱いますので、関心のある方は受講してください。(CPS合格していなくても受講できます。)

3/1,2のCPS認定試験には30名の受験者の方が応募されました。
 前回の昨年8月のCPS認定試験同様に、結果の如何にかかわらず、受験されたみなさんのレベルの高さに驚かされています。
これは、基礎講座を通じて、受験者のみなさんがロールプレイのあとでのご自身のふり返りと実技指導者からのフィードバックを十分に活かして、改善されてきた成果だと思います。

 基礎3講座を連続して受けていただいた方は実感されているかもしれません。メッセージコントロール講座で実習したことの意味がわかっていただけるのは自殺企図対処講座での実習であり、自殺企図対処の講座でお伝えしたことの理解が進むのは惨事対処講座の実習です。惨事対処講座の実習が身についたことを少し実感できるようになるのは...CPS認定試験に向けてご自身で勉強されたり、勉強会に参加されて実習を積み重ねた時です。基礎講座の中でお話させていただいたとおり、認定試験は基礎講座の内容をご自身の中に定着させることに利用していただければと思います。

 昨年度より、基礎講座の再受講料金を設定しています。再受講、協会主催の勉強会や自主勉強会をとおしてさらに研鑽を積んでいただけますようお願いいたします。
2014.3.10 認定委員長 塩坪 純

今回の試験について下園MRインストラクターより講評をいただきました。
皆さんの今後の参考になさってください。   2014.3.7 認定委員会

①メッセージコントロール

裏メッセージになるような表情や態度は少ないのですが、相手に対して味方をよりアピールするような「驚き」や「共感」の表情が乏しい人が多かったように思われます。

特に惨事では、驚きの表情が重要となります。驚きについては、全体的に、もう少し大根役者を意識したほうが良いと感じました。

②まだ事実認識(体験)の聞き方が不十分

惨事後のカウンセリングの最大のポイントは、惨事の体験を詳しく聞き、そのことによって共感を深め、クライアントの味方となることです。

しかしやはりまだ、通りいっぺんの事だけ聞いて、「わかったつもり」になっている方がいるようです。

今回は、薬局に車が突っ込んでくるという事例でしたが、その事故の時に、飛び込んでくる車を見ていたのか、はねられる人を見たのか、その時自分はどのように反応したのか、事故の直後どのようなことをしたのか、事情聴取ではどのようなことを話したのか、そのまま帰宅したのか、家に帰って家族とどんな話をしたのか、翌日はどのような行動したのか…などをしっかり聞くことにより、初めてクライアントが遭遇した出来事(惨事体験)を共有することができるのです。

さらにこのように事実を丁寧に振り返ると、出来事の後にクライアントを苦しめることになった第二の出来事(例えば警察の事情聴取で再び傷つく等)が存在する場合、その話を聞きやすくなる(聞き逃さない)手順でもあります。
(ですから、あまり時間がない時でも「それから今までの間に、この事故に関してさらにショックを受けるようなことを言われたり、新たな情報が入ってそれから一層辛くなってしまうような事はありませんでしたか」などと聞いてみてください。)

また、このように事実を丹念に聞いていくと、罪悪感や無力感が強くなっているクライアントの主観的な記憶が、話してるうちに、より客観的なものに変化していくことがあるのです。例えば「案外自分はいろんなことをしていたんだ」と無力感が緩んだり、「自分だけのせいではなかったのかもしれない」と自責が軽くなることがあるのです。

講座でお伝えしている、事実認識(体験)を丹念に聞く意味を、もう一度整理していただくといいと思います。

③症状の確認について

症状の確認が十分でなかった人が多かったようです。症状を確認する意味についてもう一度考えてみましょう。

惨事対処の場合は、クライアントが圧倒されている症状を確認し、その症状に対して適切な説明をして、第二の無力感を緩めていくために症状を聞きます。
一方、自殺念慮対処(うつ対処)の場合は、症状の苦しさについて理解し、共感を深めるために症状を確認するのが主な目的です。

今回のクライアントは、出来事の前からの「2段階うつ」と、惨事後のファーストショックと セカンドショックの症状が、混在していました。

まず、惨事後のファーストショックについては、誰でもそうなることや理由があること、期間限定である、などの説明(無力感対策の7つのステップ)を、事例や比喩を使って上手に説明し、安心させてあげることが重要です。

また、クライアントの「人が死んでいるのに、悲しいとも感じずに淡々と事情聴取に答えている私は冷たい」という発言について、「回避症状(感情の麻痺)した状態を、これまた反応の1つである罪悪感の視点で見ている」と正しく理解してる人が少なかったように思います。

一方、うつの症状については、その苦しさを理解するために、「眠れない」という表面的な理解だけではなく、眠るためにどんな努力をしているのか、眠れない時間はどんなことを考えているのか、眠れない期間はどれくらい続いているのか、などを詳しく聞く必要があります。

④メモの使い方について

惨事対応として、事故現場をノートに描く人は多かったのですが、クライアントが話す惨事後特有の症状や、気持ちの変化などをメモする人が少なかったように思います。

ファーストショックに対する「普通だよ」や「理由があるよ」という説明は、そのクライアントが今苦しんでいる症状について説明しなければなりません。しっかりメモしておかなければ、せっかくクライアントがいろいろ話をしてくれているのに、一般的な症状説明になってしまいがちです。メモをもっと効果的に活用してください。

⑤事例と比喩の活用

ほとんどの人はファーストショックについて、「みんなそうだよ」、「理由があるよ」と説明しているのですが、ただ「そんなものだ。だから心配しなくていい」などと言われるだけでは、むしろ「おおごとだよM」を否定する裏メッセージにとられてしまう可能性があります。いわゆるがけ崩れです。

普通だよMを出すときは、ぜひ事例で説明してほしいと思います。事例と言うと「自分が体験したこと、事実でなければならない」という認識があるかもしれませんが、ここでは、人物像を使った物語形式で伝えること、と理解してください。フィクションでいいのです。「例えばある人が交通事故に遭ったと思ってください。」と切り出して、「その人は現場にいたのに、その時はちっとも怖いと感じなかったんです。しかし家に帰った後にブルブルと体が震えてきて、次の日から車で出勤することができなくなってしまったんです。」などとできるだけ具体的なリアルな話し方で説明すれば、クライアントは「自分だけではないんだ」と実感しやすいのです。

比喩や事例は、その場で即興で創り出せるものではありません。日ごろから準備しておき、少しずつ使って洗練して行きましょう。

終わりに

今回の合格率は52パーセントでした。残念ながら合格しなかった皆さんも、ほとんどが合格ラインギリギリで、最終検討会の対象となる方ばかりでした。

不合格の方も、本当にあと1歩なので、これであきらめず、ぜひもう一度訓練して、次回の試験にチャレンジしていただきたいと思います。

今回の試験について下園MRインストラクターより講評をいただきました。
皆さんの今後の参考になさってください。 
                    2013.8.7 認定委員会

1.メモ、メッセージコントロールについて

 クライシスカウンセリングにおいては、体験を共有化することや、症状などの説明をすることがとても重要になるため、メモを上手く活用しなければなりません。

 この時注意しなければならないのは、メモは、表情と同じレベルでメッセージを強く発するということです(つまり要約・質問よりも強いメッセージ)。
 例えば、驚きや納得のタイミングでキーワードをメモすると、表情や要約質問でメッセージを返した時より、さらに相手は、「とてもよく分かってくれた」と思うでしょう。
 一方メモが出すメッセージが大きいことは、悪い印象のほうも伝わりやすくなるということでもあります。
メモを取ることによって、会話のリズムが崩れたり、「カウンセラー自身のためにメモを取っている」という印象を与えることもあるでしょう。

 メモのメッセージコントロールのマイナスを補う具体的な方法としては、

  • メモに書く字を大きくして、相手にも見えるようにする。(共同作業のためのツールであるという認識を作る)
  • すべてをメモするのではなく、図で表した方が共通の理解を得られやすい内容やテーマを書く。
  • メモを取るリズムができている場合は、メモをとらないことによる裏メッセージが出てしまうので、相手にとって重要だと思われることは必ず書く(重要なポイントの要約と同じことである)。
  • 相手の話のリズムを崩さないために、メモしながら、要約したり質問する。
  • メモを取るべきか、相手を見て表情でメッセージをコントロールすべきかのタイミングや場面をうまく見極める。
  • メモをしている最中であっても、相手の話や態度によって、メモを中断し、相手の方を見るなど柔軟に対応する。

などのことに気をつけると良いでしょう。
 メモのメッセージコントロール上でのマイナス点は、相手の顔を見ないことであると思うかもしれないが、そうではありません。ずっと見つめることが重要なのではなく、正しくメッセージが伝わるのが重要なのです。時折目線が会った時に、あるいはその他の手段で、しっかりメッセージを伝えることができれば、それで問題はありません。
 目線を外すことを気にしすぎて、相手を見つめながらメモを取る人もいますが、メモを取る時はメモに視線を移してもいいでしょう。そのほうが自然なメッセージが出ます(変なメッセージを出さなくてすむ)。

 ここではメモのメッセージコントロールについて説明してきましたが、メッセージコントロールは総合的なものです。
 メモが出すメッセージにマイナスがあるとすれば、それを要約質問、表情などで補えばよいのです。
 しかしながらその場合でも、表情、要約質問、メモなどが出す様々なメッセージが一致していること必要となります。メッセージの不一致は、わざとらしさを産んでしまうからです。
 例えば頷き、相づちがが良くても、表情が伴っていない場合は、スキルで(言葉だけで)誤魔化してるような印象になります。そのような印象がある人がメモをすると、メモのメッセージがより悪い方に取られる可能性も高くなります。

 メッセージコントロールにまだ自信がない人の場合は、メモを限定的に使ったほうがいいのかもしれません。
 たとえば場所を確認するときとか、間柄を確認する時などはメモを活用したほうがよいでしょう。あるいは説明するときはメモを積極的に活用するべきです。
 それ以外の状況では、例えば最初の30分ほどは話聞くことに集中し、ある程度コミュニケーションがとれ味方が確立した以降にでも活用し始めるのが良いのかもしれません。

 また今回残念ながら不合格になった方に共通するのは、「顔の表情でのメッセージコントロールが不十分である」というのが、試験委員の共通した認識でした。

2 要約・質問について

 要約・質問については、ある程度できていました。しかしながら要約の部分が「薄い」ために、メッセージを乗せきれていなかったり、表面的な応答に感じられる人がいました。
 頭の回転の速いカウンセラーの場合、相手の発言を自分なりに解釈し、要約というより感想だけを述べて、質問を加えるという応答になりがちです。会話は流れていくが、なんとなくうわべだけの共感である印象を与えてしまいます。
 よりクライアントに寄りそった感覚を演出するには、相手が言ったことをしっかり繰り「伝え返す」ような要約を練習する方が良いでしょう。


CL:疲れて家に帰ると、夫がテレビで見ていたようで、「どうだった」なんてしつこく聞いてくるんです。なんかすごく他人事の様で、腹が立っちゃって、つい大きな声を出しちゃったんです。

CO(薄い要約の例):家に帰ると、ご主人が他人事のようにいろいろ聞いてきたんですね。どんなことを聞かれたんですか?

CO(しっかり伝え返す要約の例):そんな長い一日を終えて疲れて家に帰ったら、ご主人がテレビでそのことを知っていた。それでいろいろ質問されちゃったんですね。それがとても他人事の様で、あなたは腹が立っちゃった。そうですか。そりゃつい、大きな声も出ちゃいますよね。ご主人は結構しつこく聞いてきたんですか?

 このように薄い感じのする要約になりがちな人の場合、相手の発言の伝え返し、自分の感想(メッセージの付与) 、質問という3段階で予約・質問を構成すると良いでしょう。

3 事実認識(体験)の聞き方

 感情をよりよく理解するためにはまず事柄をしっかり聞かなければならない、ということは、ほぼ全員が理解していたように思われます。しかしながら事実認識という概念を誤解してる人がいました。
 今回はゴンドラからの落下による事故のケースであったが、クライアント自身はゴンドラが落ちたその瞬間は見ていません。
 だからゴンドラがどのように落ちて、どのように死人が出たのかについての事実関係を深く掘り下げてもあまり意味がありません。
 必要なのは、クライアント自身がどのような体験をしたかということです。自分はその日、事故に遭遇するまでどういう行動をしていたのか、どういう位置にいたのか、どんな音を聞いたのか、自分はどんな発言や行動をとったのか、どんな映像を見たのか、自分の周りには誰がいたのか、周囲はのような反応したのか、どれぐらいの時間が経過したのか…このような情報をクライアント目線で詳しく聞いていけば、それに伴う感情を理解し共感しやすくなります。
 事故の話を聞くときは、どうしてもその事故そのものに関心を持ってしまいがちですが、関心はクライアントの個人の「体験」に向けるべきであるということを忘れてはなりません。
 また、講座では、体験を聞く段階でクライアントが感情面を話し始めたら、表情や要約で味方メッセージを軽く出して、また体験に戻ることを勧めています。というのも、感情面に入りすぎると、限られた時間の中で、クライアントが遭遇した体験の全体像を聞くことができなくなる恐れがあるからです。惨事の話は、ある部分の感情より、事実そのもののを共有するほうが、味方になる、つまりより深い共感をすることができるのです。
 ところが、今回の受験者の中には、この講座での教えを極端に守りすぎた方がいらっしゃいました。クライアントが語る事実をあまりにも淡々と要約し、次にどんどん進んでしまうのです。
 クライアントがつらい場面を話したら、「体験を聞く」段階であっても、「それはびっくりしましたよね」「こわかったでしょう」等というメッセージを表情や要約で入れてから、体験に戻るべきです。
 要はバランスです。感情に深く入りすぎてもいけないし、感情を全くスルーしてもいけない。そして、もちろんこのバランスは、カウンセリングの進みぐらい(体験を聞く段階か感情を聞く段階か)でも変えていかなければならないし、がけ崩れ対策をするときも変えていかなければなりません。MR協会の試験では、実践で必要になるこのようなバランス感覚が、チェックされているのです。

4 第二の無力感対策(無理もないよメッセージの出し方)

今回のクライアントは、事件後1ヶ月たっても症状が治まらないという第二の無力感に苦しんでいました。その方に症状説明をするとき、ASRの症状だから誰にでも起こること、 1ヶ月くらい経ったら次第におさまる事、のみを説明している人がいました。

 しかしながら、これでは「私だけ1ヶ月たっても症状が残っているのはなぜ?」という疑問に答えていません。むしろ「他の人は1ヶ月で収まるのに、私だけ残っているのは、私は壊れているからなんだ」という裏メッセージに取られかねません。
 このようなケースの場合、あなただけ違うのは、あなただけの特別な理由があるから(その理由がなければみんなと同じだよ)という特異性を説明してあげることがポイントとなります。

 このクライアントの場合は、2人の子供、特に乳飲み子を育てていること、職場のリーダーになったていること、自分の一言で事故が起こってしまったのだと強く悔やんでいること、なかなか夫の理解を得られないことなどがあって症状が長引いているという説明をするべきです。症状説明は、決してパターン化することなく、このように、相手の痛いところを緩めてあげるような説明を模索しなけばなりません。

認定委員長コメント

今回は、受験された方のほとんどの試験に立ち会うことができました。合否の判定結果に関わらず、受験された方ご自身の受験に対する動機付けの強さ、ふり返りと改善が、基礎講座修了~試験の間での大きな実力アップにつながっていることを感じました。複数回受験されている方は、自主勉強会への参加等を通じて惨事のカウンセリングのポイントの理解を深めながら、クライエントの状態に合わせたカウンセリングを意識して改善されてきた努力を感じることができました。受験された皆さんの努力にあたまが下がります。
 審議、判定は難しいものとなりましたが、認定試験に関わる協会スタッフとしては嬉しい悲鳴です。レベルの高い認定試験となりましたことを感謝いたしますとともに、さらに高いレベルを目指して研鑽を継続していただけるものと確信しております。

今回の試験について下園MRインストラクターより講評をいただきました。
皆さんの今後の参考になさってください。 
                    2013.3.17 認定委員会

 昨年度から、自殺企図対処講座と惨事対応講座からメッセージコントロール部分がMC講座として独立し、基礎講座は3講座に増えました。
 トレーニングする機会が増えたことが大きい要素だと思いますが、受験者の全体的な技術、特にメッセージコントロールのスキル上がっていると思います。
以下、多くの受験者に共通する改善点を記載します。

カウンセリングを行う前の環境を整える

 服装や装飾品がTPOにそぐわない方がいらっしゃいました。ラフすぎる服装ばかりでなく、派手な装飾品、派手な色の服装等もクライアントの意識がそちらの方に向きがちです。特に手元は目立ちます。腕時計、腕輪等に注意してください。
 また、机の活用や椅子の配置なども自由にできる設定でしたが、自分なりにアレンジする人はあまりいませんでした。クライアントとの距離や、位置関係は非常に重要です。ロールプレイする際も日ごろから意識しておいてください。

メモは上手に活用するべき

 惨事のクライアントの話を聞くときや、説明するときなど、紙やホワイトボードなどを活用すると効果的にカウンセリングを進められます。ところが、メモを取るタイミング(例:クライアントにとって重要な内容を書かない)が、ずれていたり、メモの字が小さかったり、読めなかったりして、クライアントを不安にしてしまう方がいらっしゃいました。メモを取る意味をもう一度整理しておくといいでしょう。

自責の念などの苦しさを0にさせる必要はない。

 自責は要約し共感して、次の話題に進めば良いのです。どうしても、何らかの対策や自責でない考え方を示してあげたいという気持ちが大き過ぎる人が多かったようです。むしろそのように簡単にコメントされると、「他人事」のような印象を与えてしまいます。本当につらい自責は、言わせてあげるだけ(ざんげ効果)で良いのです。言葉はいりません。

 自責だけでなく、惨事の時にはいくつかの複数の相反する気持ちを持つことが少なくありません。そのようなアンビバレントな気持ちに対して、カウンセラーの方が、どちらかの気持ちを強く取り上げて要約してしまう傾向があったようです。勝手に強弱をつけないで、二つの気持ちがあることをそのまま表現すればいいでしょう。

 クライシスでは、2つのメッセージの中のバランスを取りながらカウンセリングを進めることが非常に重要になります。例えば、君のせいではないよ、というメッセージを出しすぎると、苦しかったというメッセージを否定することになります。症状は普通だよ、というメッセージも、たいしたことないというメッセージに取られがちです。要約するときの表情、回数、表現などのバリエーションを上手に使って、 2つのメッセージのバランスをとりながら進めることを練習して欲しいと思います。

④体験を聞くとき尋問調になりがち

 体験はただ単に細かく聞けば良いというものではありません。例えば、その日、何時に家を出たのですか?買い物は何をしたのですか?などという質問は、クライアントに「どうしてカウンセラーはそんな質問をするのか。どう答えればいいのか」という不安を与え、クライアントは、カウンセラーを無意識に敵と感じてしまいます。 (尋問調)
 尋問調にとられないような体験の聞き方のコツは、質問が「この流れであれば誰もがそう考えるような素朴な疑問」であること(自然質問) 、もう一つは、ある程度体験を聞いたら、その人の味方だよという「メッセージを込めた中要約」をすることです。

症状の聞き方が漠然としている人が多い

 何か症状ありますかと漠然と聞かれると、クライアントは何を応えていいか不安になります。こちらから具体的に、「こんなショックな出来事があると体と心にいろんな反応が出て苦しくなることがあります。例えば…」とASRや4つの痛いところなどの症状を具体的に聞いてみると良いでしょう。

症状の説明が表面的

惨事の症状を説明するのに、原始人の比喩を使う人が多かったのですが、十分に説明できていなかったように思います。原始人の比喩にこだわる必要はありません。カウンセリングの流れ(時間的余裕)や、惨事の反応で低下しがちな相手の理解力に合わせて、例えば「防衛本能」であるとか、「身近な事例」などで説明するとよいでしょう。

 症状の説明では「期間限定だよ」というメッセージを出し、第2の無力感対策をすることが重要です。この場面で「自然と良くなります。なんとなく良くなって行くので大丈夫です。だんだん眠れるようになっていきますから心配しないでください。」という漠然とした表現しかできていない人が多かったように思います。ASRからPTSRに移行する時期だとは、気が付いているので、その分「本当に大丈夫なのか…」とカウンセラーの方が不安になってしまったのでしょう。そのような態度や説明は、クライアントを一層不安にしてしまいます。
 こんなときは、少々自信がなくても「3か月ぐらい経てば、ほとんどの人が、元の状態に戻れるよ」とある程度の時期を示してあげた方が、クライアントは安心します。いったん安心してもらったうえで、「でもね、これだけちょっと気を付けておいて」と、疲労が蓄積しやすいことを追加説明し、調子が悪くなったら我慢せずに、休んだり相談したりすることをアドバイスしてあげればいいでしょう。

 また、今回のクライアントは惨事が起こってから1(~2)か月後のクライアントで、かつうつの症状があるという設定だったのですが、そのようなクライアントであれば、例えば、「眠れない」という症状をASRで説明することも、うつ状態として説明することもできます。しかし、特にうつが重篤でなければ、まだASRで説明してあげたほうが無力感対策(第2の無力感)になります。

具体的対策の提案が不十分

クライアントに希死念慮を表明されたり、どうしたら良いでしょうかなどと言われると、すぐに対処法の説明に入ってしまう受験者が多かったようです。しかしながらクライアントの事実関係や、感情、症状等を十分聞かないうちに対処法を提案しても、結果的にそれはクライアントにとって受け入れ難い提案にしかならないことが多いのです。

 そのような場合、例えば、「なるほど…(メッセージを込めた要約)…なんですね。確かにそれは困った問題ですよね。いくつか方法はあると思うのですが、もう少し詳しく聞かせてもらってから、アドバイスさせてもらっていいですか。ところで眠れないのはいつごろからですか…」など、もう一度、まだ十分に聞けていない事実や感情や症状を聞くべきです。

 また、うつ状態へ対応の時も惨事の時でも、できるだけ具体的に実行できる対処を説明してやるといいでしょう。例えば、うつの対処として、受診、休養、環境調整という3つの項目は出るのですが、具体的な提案まで進める人は多くなかったように思います。また、惨事のクライアントのケースなら、無力感対策の7ステップは、項目としては理解していても、具体的に、例えば日記をつけてみる、深呼吸する、軽い運動をするなどを提案できる人は少なかったようです。
 また、講座の中で無力感対策の7ステップの一つとして「観察すればいいよ」という対処法を紹介していますが、これは、何もできないという無力感に覆われている人に、エネルギーがかからない方法で、かつ前向きの対策としての「観察」を提示しているだけです。クライアントが、自分の状態を良く認識しているからと言って、「よく観察していますね。大丈夫です」というのは、あまり無力感対策になりません。


 24年8月4・5日にCPSの試験がありました。1ヶ月前に娘さんが交通事故に遭い、その後、なぜか家庭でも職場でもうまく行かないというクライアントへの対応です。皆さんの今後の参考になさってください。

                           下園壮太MRI

自責感の聞き方

 メッセージコントロールで、基礎メッセージとして「責めないよ」があります。そのことを意識するあまり、クライアントが自責の念を話したときに、カウンセラーがすぐにこの責めないよメッセージ(以下M)を、「そのまま」出している人が多いようです。

 たとえば、「娘さんが亡くなったのは、運転手のせいで、お母さんのせいではないですよ。」とか、「例え、お父さんが新幹線で行くように話したとしても、新幹線でも事故は起こるじゃないですか。だから、事前に注意しなかったお父さんのせいではないと思いますよ」などと、自責でない新たな考え方(新解釈)を提示してしまうのです。

 これは、確かに責めないよではありますが、同時に「あなたは自責感情を持つ必要はない、だから、変わりなさい」という、変われMになってしまう恐れがあります。

 自責への対処は、共感、事実認識(体験)を聞きなおす、新解釈の3つの手順で考えるといいでしょう。新解釈をするのは、かなり味方になり、かなり事柄を詳しく聞いてしっかり共有した後で、しかも、ほんの少しだけ新しい視点をにおわすだけ、というバランス感覚の中で初めて効果的になります。

ステップ1:まず共感

 まず、共感です。苦しい思い、つまりここでは自分を責める気持ちを、しっかり受け取ることです。
「事前に注意しなかった自分を責めていらっしゃるんですね」という、平板な返しでは、共感を伝えられません。「関越の事故のこともあったし、この時期高速が込んでいることは、お父さんはよく知っていた。だから、前日にバスで行くことを知ったとき、危険を感じていた。でも、わざわざ注意して娘の楽しい気持ちを壊してしまうのも気が引けて、結局注意できなかった。それを思い返すと、自分が腹立たしいやら、情けないやらたまらない思いがこみ上げてくるんですね。」という、メッセージのこもった中要約(メッセージコントロール講座で勉強しましたね)をするのです。

 このとき、もうひとつコツがあります。先に触れた、責めないよと、変わらなくていいよの2つの基礎メッセージのバランスです。

 「お父さんの自分を責める気持ちは、分かります(苦しいねM)。ただ、娘さんを楽しく旅行に行かせてあげたい、今からでは変更は難しい、と冷静に考えて、そのことを伝えなかったんですよね。だから、私から見れば、お父さんはそのことでここまでご自分を責める必要はないとは感じるんですが…(責めないよM)、でも、やっぱり、娘さんのことを考えると、どうしてもあのときの後悔が湧き上がって、ご自分を責めてしまうんですよね(苦しいねM)」

 このように、苦しかったねMと責めないよMを同時に表現するといいでしょう。ただ、責めないよMを表現するのは、1回だけです。これを続けると、2回目以降は、「変われM」になってしまいます。

ステップ2:自責を感じる背景認識(体験)を聞く

 自責は、他人に言われるより、自分で気づいて緩めるものです。

 そのために、どうしてそんなに自分を責めてしまうのかという背景事実認識、つまり体験を聞く必要があります。(このことは、同時に前項のカウンセラーの共感を深める作業にもなります。)
たとえば、先ほどの例では、次のように続きます。

「お父さんが、そこまで自分を責めていらっしゃるのは、やはり、一番大きいのは、前日に、バス旅行を止めなかった、ことですか?」
「そうです。」
「そのことを、もう少し詳しく聞いてもいいでしょうか」
と、細部を、(再度)聞いていきます。

 すると、関越の事故のあと、旅行好きの娘さんに、バスは危ないからやめておけとよく話していたこと、お父さんの友人にバス会社で勤めていた若者がいて、そのずさんな経営について話を聞いていたこと、だから、それを伝えたかったが、1週間前に娘さんとはけんかをしており、言いにくかったこと。奥さんから、夜間バスではないから大丈夫ではないかといわれて、そう思ったことなど、体験が語られます。

 この体験をしっかり共有して、初めて、お父さんの苦しさが理解でき、味方になれるのです。

ステップ3:味方になってはじめて、感想(新解釈)

 ここまでしっかり聞いて、体験を共有し、共感し味方になれたら、味方からのアドバイス、つまり自責でない新解釈を提示してもいいのです。

 「(しっかり中要約して)、お父さんとしては、娘さんを大人として尊重して、自己責任でやらせてあげたところがあるんですね。」
「そうですか。実は、私にも同じぐらいの年の娘がいて、これが鉄砲玉で、何を言っても聞きません。ふらっと一人でカンボジアに行って数ヶ月も連絡も取れないとか、どこそのこの山登りに出かけるとか、親に心配かけてばかりです。今では、それが大人になっていくということではないかと、あきらめているんです。(間)今、お父さんの話しを聞いていると、私がお父さんの立場でも、前日に旅行をキャンセルさせるのは難しかったと思いますよ」

 新解釈や体験談は、「こうすれば(こう考えれば)いいよM」です。がけ崩れの可能性を秘めていますので、クライアントの反応をよく見て、その後の対応をしてください。例えば、上の例でも、新解釈を提示するのは、一階だけ、しかも長くてもこれぐらいの会話量です。もし、クライアントがそのことに関心をもち質問してきたら、話を続けてもいいでしょう。しかしそれ以外は、もうこれ以上、変われMを出してはいけません。

事故後1か月の話の聞き進め方

 1か月経つと、多くの人のASRはかなり減っていることがあります。ところがこの時期に苦しさが逆に募ってくる人もいるのです。基礎講座でもお伝えしているように、2つのケースを想定してください。

 ひとつは、以前にも類似の出来事により傷ついた体験を持っており、普通の人より大きな衝撃を受けてしまい、そのことが頭からはなれないために、消耗し、うつ状態になりつつあるケース。
 もうひとつは、出来事の前、あるいは出来事の後に、業務や私的な心労・多忙が続き、エネルギーを使いすぎて、うつ状態になっているケース。

 このときには、カウンセラーは、ASRとうつの両方を頭に入れながら、表面的な話題としては、クライアントの頭の中で、「私は、今このことで悩んでいる」と意識されているテーマから聞いていきます。
 たとえば、事故のことが頭に残っている人には、事故の体験を詳しく聞きます。
一通り、惨事対応の聞き方をした後に、途中で確認したうつ状態の苦しさを再度テーマにして、うつ対処を重ねればいいでしょう。

 家庭のトラブルで悩んでいる、と考えている人には、家庭のことを詳しく聞いて、体の症状を確認するのが自然です。その中で、たとえば、「娘が事故に合ったという電話を受ける悪夢を毎日見て目が覚める」というエピソードが出たなら、思いのほか惨事の影響が大きいのだと判断し、症状確認が終わった時点で「先ほど悪夢の話をされたのですが、やはり、事故のことはかなり大きかったんじゃないかと思うんですが、その事故のことをもっと詳しく聞いてもいいでしょうか」と、惨事対応に移るのが自然な流れです。

 以前CPSの試験は、惨事対応と自殺企図対処に分かれていましたが、現在は、このように両方の可能性のあるクライアントへの対応で試験されています。わずか20分の面接なので、惨事と自殺企図対処をすべて見せようとする必要はありません。頭の中で、上に紹介した内容が理解できており、「今、何を目的に話を聞いており、次はどう展開しようとしているか」という整理ができていればいいのです。

メッセージコントロールについて

 24年度から、MC講座が基礎講座に加わったためか、メッセージコントロールは、大変上手になっている印象を受けました。
 ただ、

  •  女性の「笑顔ベース」(悲惨な話も、笑顔で聞いてしまう癖)
  •  大きなうなずきを意識するあまり、納得のMが出すぎて、「分かりすぎ」の印象を与えてしまう。
  •  緊張のためか、興味津々のうなずきのリズムが早すぎ、「あせらせる」感じのカウンセリングになっている。

 などが見受けられました。引き続き、VTRなどでご自分のカウンセリングを確認して、修正するといいでしょう。

事実認識(体験)の確認について

 自責の聞き方の項目でも触れましたが、惨事対応における体験(事実認識)を聞くことの重要性は、講座でも繰り返し強調しているところです。
 しかし、受験者の応答を見ると、まだまだ十分とはいえません。傾聴訓練で、感情に焦点を当てる練習をしてきているので、なかなか事柄を詳しく聞けないようです。

 小野田MRLは、体験(事実認識)の聞き方のコツとして、「具体的な映像が見えるように」細かく聞くことを強調しています。
 たとえば、「お父さんに怒られた。怖くて家を出た。」というクライアントの言葉があったとしましょう。それで、カウンセラーが、納得してしまったら、それ以上聞けません。いつ、どこで、怒られた経緯、具体的な言葉、行為、他の登場人物、その後の行動など、映画を作るつもりで、しっかり聞いてください。

 するとたとえば、
 仕事を終わって11時に疲れてうちに帰ってくると、家から母が叫ぶ声がする。また父が暴力を振るっていると気づき、家に入ると、父が酒を飲んでいて、母は2階にいた。父に酒を飲んでいることを非難すると、掃除機を投げつけられた。殺されると思い、裸足で外に飛び出した。友人のうちに避難したが、母のことが心配で眠れなかった。
 という体験が語られます。
 このレベルで事実の共有が図られると、クライアントは、初めて「仲間を得た」感覚になれるのです。

 事柄、特に惨事の内容を聞くには、勇気が要ります。関心も必要です。
「もの分かりの良いカウンセラー」にならず、本当の友人が心配して根掘り葉掘り知りたがるように、詳しく聞く練習をしてください。

CPS実技試験が、7月17日及び18日の両日、広尾の「JICA地球ひろば」で行われました。合計35名が受験し、合格者は16名(合格率は45%)でした。
具体的アドバイス

1 面接手順へのこだわり

自殺企図対処、惨事対処ともに、面接の手順については良く覚えていただいているようです。ただ、講座でもお伝えしているとおり、手順はあくまでも手順にしか過ぎません。カウンセリングの流れ、クライアントの表情や発言によって、手順は柔軟に変えていかなければなりません。実技試験でも、そこが見られています。メッセージコントロールの階段を上り下りする(つまりがけ崩れ対策)のと同じように、手順も前後したり、あるいは飛ばしたりするのが、むしろ自然なのです。いわゆる常識的対応です。

2 説明が不十分

 惨事後や自殺企図を持つクライアントには、傾聴でしっかり「味方」になった後は、その立場を崩さないように配慮しながら、上手に症状の原因、意味、対処法を説明したり、クライアントができることを一緒に考えてあげるという支援が必要になります。
 大学や産業カウンセラー協会などで、質問や説明することを極端に「抑えた」トレーニングを積んでいる方は、どうしても、この説明が苦手なようです。
 いざ説明しようとなると、一方的に講義になってしまう人、たたみかけるように説明する人、説明がたどたどしく分かりにくい人が多かったように思います。
上手な説明をするには、次のようなことに気をつけて、練習してください。

相手の反応を確かめながら説明する。クライアントが「分からない」という表情をしたら、どこが分からないか確認する。表情が曇っていれば、裏メッセージに取られていないか自問しながら説明を進める。
頭の中で、「説明できる」と思っていても、口に出すと上手に言葉がつながらないことも多い。口に出して練習しておく。誰かを想定して、説明し、(仮想の)質問を受け、更に説明するなどのトレーニングが必要。
説明する内容を、自分自身でしっかり「納得」しておかないと、どうしても浮き足立った説明になる。うわべだけの理解でとどめておかない。分からなければ、協会講師等にしっかり質問する。
事例や比ゆなどを使用(準備)する。(今回も何人かの人が事例や比喩を使って上手に説明していました。ただ、今伝えようとする内容にそぐわない比ゆもあったので、事前に仲間に紹介してみて、内容をチェックしておくべきです。)  
受診などの説明が、「脅し」になっている人がいる。「不安」はうつ・惨事の「痛いところ」のひとつ。脅しは、この不安を刺激する。相手の痛いところは絶対に刺激してはならない。不安情報は、安心情報とセットで、という原則を忘れてはいけない。例 「あなたは、このまま医者に行かないと大変なことになりますよ…、PTSDになりますよ…」

3 メッセージコントロール

まだまだ全体的に表情が硬い人が多いようです。ぜひ、自分のカウンセリングしている姿を、VTRで見てみてください。特に、不合格だったは、VTR撮影トレーニングお勧めします。
また、「繰り返し」が裏メッセージに取られやすいことは、以前にも指摘していますが、症状などをクライアントが訴えたときの、カウンセラーの要約(…か?で終わる質問型要約)やパターン化された対応が、同じように裏メッセージに取られやすい人が何人かいらっしゃいました。

例:Cl「眠れないのです。自分が情けなくって‥」
  Co「眠れないのですか。自分が情けなくなっているんですか」
    →裏「あきれている?本当かどうか、疑っている?」

  Cl「自分が足を引っ張ってしまって‥」
  Co「足を引っ張っていると、感じているんですね‥」
    →裏「信じてもらえていない?私だけの感じだってこと?」

  Cl「病気なんでしょうか」
  Co「病気かどうかは、私は医者ではないので判断できません…」 
  →「う、やはり病気なんだ、この口ぶりだときっと重症なんだろう。しかも、医者に投げられた、ここではこれ以上話をするなということか…」

4 要約・質問をもっと磨く

要約・質問がまだ不十分な方が多いようです。
特に、味方メッセージを伝えようとするとき、いきなり言葉で、「それは大変ですね」とか「苦しかったですね」と返す人がいました。
必ず、要約をして、「私はしっかり聞きました。その上で、感想を持ちました」というメッセージを伝えてから、言葉で「大変ですね」と言うようにしてみてください。
質問するときも、突然質問する人がいました。
この場合も、要約を質問の前に入れることで、「私は、こう理解しています。その上で、疑問がわいたのですが…」というメッセージを与えてから、質問をしてください。これが質問の刺抜きの基本的方法です。

5 自殺企図対処についての注意点

自殺企図対処において、当事者の苦境や対処方法を、職場に説明してあげるという発想はありましたが、家族に説明する必要を指摘した人はいませんでした。家族が安心することは、当事者の今後の戦いにとって非常に大きな要素になります。
職場や家族への説明は、これまでの伝統的なカウンセリングでは、カウンセラーの仕事とは認識されていないかもしれません。しかし、現実には、ただ当事者の話を聞くだけでなく、周囲の人に上手にアプローチすることにより、結果的に当事者の戦いを支援できるのです。

6 惨事対処についての注意点

惨事対処においては、まだ多くの皆さんが「事実認識の聞き方」が甘いようです。15分のカウンリング時間なら、クライアントが特別の反応をしない限り、事実認識をしっかり聞いているうちに、試験が終わるぐらいでなければなりません。多くの人が、5分ぐらいで事実認識を終えてしまっていました。
一番大きな原因は、聞く勇気が無いことだと思います。「話したくないこともあるだろう」という配慮の気持ちなのですが、しかし実際、惨事での支援を経験すると、話したくない人はあまりいません。ほとんどの皆さんが、事実関係を詳しく話してくれます(こちらが関心を持って「聞けば」、です。このとき「驚き」の表情が特に重要ですが、試験ではこれができていない人が多かったように思います。)
事実認識を聞きながら、上手に味方メッセージを出していく。惨事のカウンセリングのもっとも効果のある過程で、かつもっとも難しいところです。ぜひ、もっともっと、ロールプレイをつんでみてください。
また、惨事のカウンセリングは、初対面の場合が多いので、自己紹介やカウンセリングの説明などをしっかり練習して、最初の3分で安心感を与えられるようにしてみてください。

7 不合格だった方へ

試験では、特別な環境のなかで緊張し、時間制限もあることから、なかなか日ごろの実力を発揮できなかったかもしれません。しかし、惨事や自殺企図を持つクライアントに接するときは、カウンセラーも緊張するのです。その緊張の中でも、最低限のパフォーマンスを発揮しなければなりません。
克服するには、練習しかありません。ぜひ、VTR撮影を活用した、ロールプレイを行ってください。
昨年、不合格だったのですが、今回見事合格された方がいらっしゃいます。非常に成長されていらっしゃいました。試験員共通の意見です。
確かに、試験は水物です。試験員の目も絶対ではありません。
しかし、この方の1年の成長を目の当たりにすると、「不合格」を緊張や試験員との相性のせいにせず、これを機会にもう一度しっかりトレーニングして、誰が見ても「合格」の実力を身につけるための、きっかけにして欲しいと思うのです。
それこそが、MR協会が認定制度を設けている本当の狙いなのですから。

8 実技認定試験における個人へのフィードバックについて

 今回は個人の試験終了直後に、クライアント役から、フィードバックをお伝えしたと思います。
MR協会としては、単純に合否だけを伝えるのではなく、実技認定試験を通じて少しでも成長していただきたいという思いから、このようなシステムを試みてみました。
ただ、クライアント役の会員は、カウンセリング場面でクライアントの気持ちになっていますので、客観的に受験者を見ることはできません。クライアントからのフィードバックは、あくまでも、MR協会の公式なものではなく、個人的なフィードバックと捕らえておいてください。

平成20年CPS(I)(C)認定試験、認定者アドバイス

以下のアドバイスは、CPS試験が「自殺企図対処」「惨事対処」と2つに分かれていた頃のものです。参考にされる際はご注意ください。

「苦しかったね」「がんばっているね」「よくやっているよ」メッセージについて

 講座でも強調したとおり、味方になるためには苦しかったね(1メッセージ)、がんばっているね(第2メッセージ)を、与えることが必要でした。ところがどうしても、このメッセージが“口だけ”である場合が多いようです。
 例えばまだ、十分に惨事の内容を聞いていない時に(事実認識を聞く段階が不十分なまま)、それはつらいですね、それは苦しかったですね、頑張ってますね、などと言われると、逆に「本当に分かってないくせに…」という反感を持たれます。
 十分に事実内容を聞くという“行為”、そしてその聞いている“表情”によって、苦しかったねメッセージを出せるように練習してください。一般的には、クライシスのクライアントに対して、0、1、2の順番でメッセージを重ねていことで、味方の関係をつくることができます。

ところが、惨事後の一つの特徴的な症状である“麻痺”が強い人は、つらさを実感していないことがあります。そんな人が、カウンセラーから何度も「辛いですね」と繰り返されると、「つらいと感じていない自分は、冷たい人間なのではないか」という裏メッセージを感じることがあります。
 これは、表面飾りが強いうつ状態のクライアントでも同じです。つらさを一生懸命に否定して、ようやく生きているのです。そのようなクライアントに対して、「つらいですね、がんばっていますね」と繰り返しても、味方になれず、逆に相手を苦しめます。というのは、このメッセージは0メッセージの「変わらなくていいよ」を否定してしまうからです。「あなたはつらくない、頑張っていないと思っているが、それはあなたの感じ方が間違えている。それを修正しなければならない」と言っているのと同じことになるからです。

 苦しかったね、頑張っているね、という第1第2メッセージはとても重要ではありますが、このメッセージでさえ裏にとられ、もっと根本の0メッセージを崩すことがあるということを覚えておいてください。
ちなみに復習です。0メッセージには四つあります。「聞いていますよ」、「それは大きな問題ですね」「変わらなくていいですよ」「私はあなたを責(攻)めませんよ」この0メッセージの中でさえ、裏メッセージが生じます。惨事の後には、クライアントの自責の念を少しでも緩めようと、「あなたの責任ではないですよ」というメッセージを言葉で何度も繰り返すカウンセラーがいました。

 これも同じように、「自分の責任だと感じるのは間違えている、そんなあなたは変わらなければいけない」というメッセージとなり、相手を苦しめることがあるのです。そんなクライアントに対しては、「そうかぁ、私から見たらあなたの責任なんかじゃないと思うのだけど、あなた自身はどうしても自分のせいだと感じてしまって、それが苦しいんだよね。」などとバランスのとれた対応ができるように練習して下さい。基本メッセージだからといって、気を抜いてはいけません。相手の反応によって、自分のメッセージが逆に相手を苦しめていることがないかを常にチェックする感性が必要になります。

ワンパターンの繰り返し

 「上司が私の立場を理解せずに、仕事をおしつけてくるんです」
というクライアントの発言に対し、「あなたは、あなたの上司があなたの立場を理解せずに仕事をおしつけてくると思っているんですね」と、ワンパターン的に小要約する方が多いようです。
 この「あなたは、~~~~~~と思っているんですね」という形は、「あなたの言い分は聞いた。でもあなたが思っていることと現実とは違うかもしれないよ」というメッセージを含んでいます。
 クライアント力が高い普通のカウンセリングでは、自分の発言を客観的に見る良い機会になるかもしれません。ところがクライアント力の低いクライシスのクライアントにとっては、このワンパターンの小要約が繰り返されると、「私はあなたの発言を信じてはいない。あなたの感じ方が悪いのではないか」という裏メッセージにとられてしまう確率が非常に高くなります。
 要約や質問の返し方などは、常にクライアントや話題のやりとりの中で、柔軟に選択していくものなのです。ワンパターンの癖を持っている人は、注意してください。

症状確認について

 うつ状態の症状を、大変詳しく聞きすぎるカウンセラーが多いようです。
何時頃眠りますか。ベッドに入ってからはどれぐらい起きていますか。夜中に何回ぐらい起きますか。朝方早く目が覚めますか。二度寝ができますか。眠りは浅いですか。十分に眠った感じはありますか。昼間は眠くないですか。眠るためには酒などを飲んでいますか…。などと、睡眠にひとつについても聞こうと思えばいくらでも聞くことができます。ところが、私たちはお医者さんではありません。医師は睡眠パターンや質になどによって薬を選択するために深く問診する必要があります。

ところが、私たちは薬を出す訳ではありません。だからまず、私たちがそんなに深く聞く必要性がないのです。症状確認が詳しすぎるとむしろ、どうしても尋問調のリズムに陥りがちだという欠点の方が表れてきます。ここでもう一度、どうして私たちはカウンセラーとして症状を確認するのかを考えて見ましょう。最大の目的は、相手の苦しさに共感して、「苦しかったね」メッセージを出すためです。うつ状態の悩みを聞いていても、どうしても相手の苦境を理解しにくい場合が多い。
ところが、「眠れない状態が、もう二週間も続いています。毎日夜が怖いのです」と聞けば、その苦しさが誰だって理解できるはずです。

 悩みにターゲットを合わすのではなく、不眠や自責感・無力感・不安感などの「うつの苦しいところ」を聞くことで、共感でき、味方の立場を築くことができるのです。だから、「眠れているの、どれぐらいそんな苦しさが続いているの」という漠然とした質問で十分なのです。問題は、そのときの“表情”です。2週間眠れませんと聞いて、何のコメントも表情も無く、「食欲はどうですか」と質問を続けられると、どうしても冷たい感じが否めません。「そうですか~。二週間も眠れない状態が続いているのですか。それは苦しいですよね」と言いながら、相手の苦しさを反映した表情をする。これが、メッセージを与えることになるのです。その機会を作るために「症状確認」があると思ってください。
もちろん症状確認にはそのほかの目的もあります。表面飾りをするクライアントには、身体症状や疲れなどを聞くことにより、その人のうつ状態の深さを知るきっかけとなることがあります。

 また、希死念慮などはなかなか自発的に表現できるものではなく、質問によって表現しやすい場を与えることが大切です。
さらに希死念慮を確認することは、カウンセラーは自身の覚悟を決めることができるし、周囲の人に対処をお願いするときの重要な情報にもなります。

惨事後の症状とうつ状態の関係

 惨事後の症状(ASD)とうつ状態との関係やその対応が明確に理解できていない方が多いようです。
 ASDは、回避、侵入、過覚醒、麻痺などの症状が主体です。これは程度の差こそあれ、一般的な自然な反応なので、基本的には経過を観察するという対処で十分です。ただしもちろん不眠や自責、不安などの症状が苦しければ、自ら精神科を受診することを妨げる必要はりません。

 例えば、君はまだC2になってないから歯医者に行ってはいけない、などということはありませんよね。同じように精神的な症状についても、自分が気になり、精神科受診に抵抗がなければ、どの時点でも精神科を利用することに問題はありません。
 ただ、本人に精神科受診に対する若干の抵抗感があるとき(ほとんどの人がそうだと思いますが)、メンタルヘルスの専門家から精神科受診を勧められること、は別の意味を持ちます。それほど悪いのかという印象を与え、不安を掻き立てるからです。
 惨事後に必要なのは「この反応は普通の反応」というメッセージです。不用意に精神科の受診を進めるということは、このメッセージを否定してしまいます。決してクライアントの不安を不必要に増大させてはいけないのです。

ではどうすればいいのでしょう。
 まず今の症状が、ここ数日間で良くなっているのか悪くなっているのかを確認してみてください。多くの場合は、だんだん良くなっていることを実感できているはずです。その時には、症状の主体がASDであると理解し、普通だよメッセージを与え、症状が改善するまでの時間の見通しを与え、しばらくは自分の症状を観察するという方法を与えます。
 もし、仮に1週間後の介入であるとして、1週間たっても事件直後と何ら変わらない、もしくは症状が悪化しているという場合は次のようなことが想定されます。一番目は、事件後直後の麻痺が強い場合です。感じられないモードが強くて、それが改善したために、逆にさまざまな苦しさを感じている場合です。喧嘩した後、その時には感じなかった痛さが、うちに帰ってきてからひどくなるなどというパターンと同じだと説明してください。感じられないモードが終了しているということを意識させてあげると、自分の体がこの危機に対してうまく反応しているということを少しは実感できるはずです。

二番目のパターンは、今回の出来事が、クライアント個人にとって特別に大きなインパクト(意味)を持つ出来事であった場合です。例えば、過去に身内の自殺を経験した人は、同僚の自殺に対して大きく反応してしまうことがあります。「みんなは元気にしているのに、どうして自分だけこんな反応が続くのだろう」という不安(第2の無力感)に対して、その人の過去の経験などを聞くことにより「それなら無理もないよね」と自分で納得できるようなストーリー(解釈)を探してあげることが必要です。

 三つ目のパターンは、すでにうつ状態にある場合です。
 惨事をきっかけにうつ状態になる場合がありますが、惨事後のASDなどの症状を出しづけることで蓄積疲労によりうつ状態になります。これにはおそらく、一ヶ月ぐらいが必要でしょう。つまり、出来事の後1ヶ月ぐらいにうつ状態になっていくと思ってください。(ASDの症状とうつ状態が重なると、ASDの症状が固定的になってしまいます。これがPTSDだと思ってください。)これに対し、介入後1週間で表の症状が悪化しているということは、できごと以前にすでにうつ状態であった可能性があります。うつ状態を自覚していようがいまいが、衝撃は27倍モードで襲ってきます。普通の人なら耐えられるような出来事でも、大きな反応をしてしまいます。この場合は、事件前のことをよく聞く必要があります。事件前からのうつ状態の可能性を察知できたら、惨事後の対応から、自殺企図対応に、切り替えなければなりません。

 現在の症状についての説明は、うつ状態と惨事後の反応のメカニズムを説明し、改善の見込みについても、惨事後の極端な反応はある程度早く消滅するとしても、それによって刺激されたうつ状態の改善については月単位、年単位がかかることを告げましょう。(もちろんそこから、クライアントの「できること」を探していきます)

平成19年CPS(I)認定試験認定者アドバイス

症状確認が不十分

  • 自殺念慮を聞くことへのCRのためらいがあり、CL逆に表現できなくなる
  • 死にたい気持ちの変形、例えば「いなくなりたい」「居場所が無い」「仕事を辞めたい」「どうでも良くなった」「消えてしまいたい」「誰もいないところに行きたい」などに、気が付かない人がいた。
  • 「他にありますか」という聞き方では、CLは何を答えていいかわからない。具体的に症状をあげ、一つ一つ確認すべき。
  • うつの症状を数点しか確認しないうちに、対処の説得に入る人がいる。本人にも周囲にも納得してもらうには、充分な情報収集に基づいた「うつかもしれない」という判断が必要。

うつ状態の確認、対処の説明でCRの気持ちが優先されてしまう

「CLのうつを確認したい」という思いが強く、CLにうつであることを認識させようと迫ってしまう。結果として「苦しいでしょう。」「つらいでしょう」の押し売りになっている。
嫌な上司にうつだと言われてカウンセリングに来ているという設定の場合、無理やり「うつだ」という方向で納得させようとするカウンセラーは、CLにとって上司と同じ側に立つ「敵」になる。

うつの説明が不十分

うつ状態とうつ病を区別して説得しようとする場合、自分なりの区別が充分できていないので、相手に説明できない。
うつを疲労と説明した人が多いが、CLが「疲れている」と感じていない場合に、ただ「疲れているでしょう」の連発では、CLは納得しない。CLが納得できるような説明を準備する必要がある。例えば、ライフイベントからの説明。

対処の説明でCRの気持ちが優先されてしまう

正しい方向に導きたいと言う思いが強く、「休みましょう」と持ちかけるが、CLは、休めないと訴えることが多く、結果的にCLを苦しめる。「休む」とは、どのようなことかを具体的に説明しイメージアップさせる。それを一応の「目標方向」とした上で、CLができることを一緒に探していくと言う態度を持つ。

裏メッセージ

言葉遣い、表情の癖(笑い)、くりかえしなどで、裏メッセージをとられている人が多い。トレーニングによって、フィードバックしてもらい自分が出しているメッセージに気づく必要がある。VTRで、自分のカウンセリングを撮影することはいい訓練になる。

うつ状態のCLにあったカウンセリング

うつ状態のCLは、うつ的思考が強い。通常のカウンセリングでは、感情を聞いたり、考えさせたりすることでCL自身が良い方向の気づきに至る場合が多いが、うつの場合、気持ちを深く聞きすぎても、あまり上手く説明できないし、無力感や自責感を高めることが多い。また、依存的になってしまい。なかなか前向きな発想にならない。
一つ一つの問題や感情にとらわれるより、症状を確認し、受診や休養の対処をすることによって、うつてき思考を緩める方向で進めるべきである。そのためには、あまりCLに考えさせず、こちらが方向性を示し、リードしてあげる方が良い。
もちろん、その方向性にCLが抵抗を示したら、がけ崩れ対処でまた「味方」にもどる。