MR協会について


これまでに公開されているアドバイス
(クリックするとその年の講評へジャンプします)
平成29年8月11日MRC認定試験におけるアドバイザー講評
平成29年4月8・9日MRC認定試験における主任試験員講評
平成27年12月12・13日MRC認定試験における主任試験員講評
平成26年12月13・14日MRC認定試験における主任試験員講評
平成26年2月16日,3月30・31日MR認定試験におけるアドバイザー講評
平成25年2月16日MR認定試験におけるアドバイザー講評
平成22年11月20日 MR認定試験における認定員アドバイス
平成25年度以前は、現行と異なる要領で試験を実施しておりました。そのため、アドバイスの内容が現在の試験にそわないこともあります。予めご了承の上、お読みください。

今回の試験について下園MRSI(アドバイザー)より講評をいただきました。
皆さんの今後の参考になさってください。 
                                  29.8.12 認定部


29年8月11日、4名の方が挑戦していただきました。
それぞれの方が本当に努力して短所を克服し、いろいろな準備して臨んで頂いたことがわかる試験でした。中には、過去受験に失敗した経験をばねにして、非常に高いパフォーマンスを発揮してくださった方もおり、試験員も感激しておりました。
皆さん、確実に進歩しています。ただ、残念ながらまだ修正しきれていない部分もありました。以下、共通的に気を付けていただきたい部分をお伝えします

1 共通

 MRC試験は、基礎知識の筆記、支援目的調整面接、情報提供の3課目です。このうち基礎知識は、出来て当然なので、特にコメントはありません。あとの二つの課目に、共通することを記載します。

(1)事例が足りない

 これまで何度もお伝えしていますが、事例での説明が不十分です。
事例で説明しないと、理屈での説明になります。理屈(論理)での説明は、受け取り方にばらつきが大きく、また上手に説明すればするほど、講義調になり冷たい感じがしてきます。
現場で一番説得力のあるのは、事例です。しつこいようですが、そのことをすべての受験者はもう一度認識し直していただきたいと思います。
例えば、今回はファーストショックを説明した受験者が多かったのですが、「無力感対策7つのステップ」で解説しているように、まず伝えなければならないのは、「みんなそうだよ」ということです。その次に「理由があるよ」の順番です。
ですが、ASRの症状を紹介したのち、すぐ原始人の説明に入ると、心理学の講義になってしまうのです。症状を紹介したら、次は事例で「みんなそうだよ」Mを出すべきです。他の事故でもこんなことがありました、と具体的に話すと、「私と一緒だ」と思ってもらいやすくなります。そのうえで、時間があれば、原始人の比喩でフォローしてもいい(「理由があるよ」M)。あくまでも、原始人の比喩より、事例の方が優先されるものだということを再意識してください。

(2) 過去の講評を十分理解する

 受験者は、同じようなところで悩むものです。過去の講評を見れば、ヒントが書いてあります。ぜひ受験の際は、過去の講評を熟読し、理解して対策を考えてきてください。
要すれば、自分が受験する認定試験以外の講評にも目を通すといいでしょう。
どのレベルでも、本質は同じだからです。

(3) MCをさらに鍛える

 それぞれにMCを鍛えて試験に臨んで頂きました。うなづき、相槌、声の大きさ、はよくできていると思います。
ただ、個人ごとに苦手な分野があるようです。
例えばある受験者は、お悔やみの言葉を伝えるときに、間合いなく伝えており、業務上の言葉のような印象がありました。
ある受験者は、要約がほとんどなく、話をするときも口癖が修正しきれずにいるので、話が伝わりにくいという面がありました。
ある受験者は、表情が硬く、盛った要約も少なく、質問が続いたので、冷たい印象を与えていました。
いずれの受験者も、このようにMCが不十分な場面では、クライアントが話しにくそうにしています。
MCは、なかなか一人では修正できません。ぜひ複数で練習するか、VTRなどを効果的に活用して練習してください。

(4) ファーストショックとASRの関係を正しく理解する(テストについても)

 惨事反応として、ASRだけが念頭にある方がいらっしゃいます。
ファーストショックは、ASRプラスうつです。惨事にあった方は、当初から自責の念や自信の低下、不眠、食欲不振などがあるのです。
そのことは、なんとなくは理解しているのですが、説明の時はASRだけになってしまうことが多いようです。
また、試験の中で、IES-Rの説明をするとき、「例えば、惨事後の反応として食欲不振があります」と発言したのに、IES-Rには食欲の項目はありません。IES-Rは、ASRだけのテストなのです。テストの内容や使い方についても、現場での素朴な質問に対応できるように、しっかり復習しておきましょう。

2 支援目的調整面接

(1) 細部を聞くか調整を進めるか

出来事の細部を聞くか、必要な説明や調整に時間を取るか、ケースバイケースで難しいところです。もちろん相手の態度によって変えなければなりませんが、一応の目安を知っておくといいでしょう。
今回のように調整相手が、惨事現場にかかわっている場合は、まずその人に詳しい現場の状況を聞くのがセオリーです。その現場の悲惨さを知ることは、単にその人物のカウンセリングになるだけでなく、事故全体を知る一番の近道だからです。
さらに、そのカウンセラーとしての態度が、調整者の信頼を得ることになり、結局、いちいちツールなどを説明して理解してもらうより、支援全体がうまくいきやすくなります。

(2) 情報→目的→ツールの選定→使い方の思考を理解する

 上にも関連するのですが、結局調整相手の話を十分聞かないと、ニーズを掘り起こせません。
支援目的調整面接の前に、白紙的な支援戦略は持っていても、それはあくまでたたき台にすぎません。
現場に来ると、思っていた状況と違うことがあるのはよくありますし、調整相手の意向もあります。柔軟に対応しなければなりません。
調整相手から得た情報をもとに、目的(ニーズ)が変わると、当然、準備していたツールを変えることもありますし、同じツールでも違う使い方をすることがあります。
例えば、支援時間がないので、記名のIES-Rアンケートでファーストショックのハイリスク群を選別して、個別カウンセリングをするという計画だったとしましょう。ところが、目的調整面接で調整者が、最近の過労状態を気にしており、全員を面接してくれという意向を持っていたとします。その場合、同じアンケートでも目的が「選別」ではなく、「全員面接をより効率的にする」ために変わります。そのためより書きやすくするため無記名にしてもらい、カウセリング時に持ってきてもらうように変更します。また、疲労の状態を確認するためK-10を加えます。
このあたりの一貫した思考ができていない方がいらっしゃいました。

(3) 対象を十分に認識する

 講座や勉強会で練習した方法をアレンジしないと、支援対象に合わない支援、情報提供をすることになってしまいます。
例えば、今回のケースであれば、事件現場にいたのは数名。その他の方は、それほど事件そのものには触れていないという状況です。現場を避けるとか、においに敏感、などの症状はそれほど多くないと思われます。また自殺でもないので、自責というより、不安の方が強いでしょう。
これに対して、パッケージの回避、侵入、過覚醒の説明をすると、「私たちには関係ない。私たちのことをよくわかっていない」という印象を与えてしまいます。
しっかり、対象者の心情を想像することが大切です。

2 情報提供

 原始人の説明をするとき、通常は「自分を守るために」という言い方をします。ところが今回合格した方は、「自分と仲間を守るために」という文脈で説明しました。
惨事の時は、自責が働きます。自分のために反応した、ということに抵抗を感じる方もいるのです。自分のためだけでなく、他人のために、イライラや現場を避ける反応があるのだという解釈は、自責が強い方にも受け入れられやすい、素晴らしい配慮だと思います。
ぜひ、試験だけでなく、実際の支援の現場でも活用したい説明方法だと思いました。

今回の試験について下園主任試験員より講評をいただきました。
皆さんの今後の参考になさってください。 
                                  29.4.9 認定部


29年4月9日、13名の方がMRC試験に挑戦していただきました。毎年受験者のレベルが向上しているのを感じます。頼もしい限りです。全般的に気付いた点をいくつかアドバイスしておきます。

1 支援目的調整面接

(1) メッセージコントロールについて

基本的には、皆さん非常に上手になっています。ただ、CPSと違い、必死に思考を働かせ、こちらの伝えたい事も考えながら、相手に対応しなければなりません。このとき、男性は、自分の思考の方に集中してしまうと、どうしても自分の表情への配慮が薄くなりがちです。すると相手(特に女性)にとっては、「冷たい」「わかってもらっていない」というメッセージとして受け止められてしまうのです。たとえ支援目的調整面接の戦略的な組み立てが論理的にしっかりできていても、結局、人が人に提案し、受け入れてもらう作業です。レベルが上がるごとに、常にMCに対する意識も新たにして欲しいと思います。

(2) 自責の念の取り扱い方について

 以前にも触れた(28年12月のUCPC試験講評)のですが、まだ自責についての対応が不十分な方が多いように感じました。自責の発言があったら、すぐに、自分を責める必要はないという視点でアドバイスしたり、自責は症状なので、じきに落ち着くという説明をしてしまうのです。クライアントのつらい思いを何とかしてあげたいという温かい配慮はわかるのですが、MC的には、「変われM」となってしまいます。まずは、「そうか、そうなると自分を責めてしまうんですね。それはつらいですよね」と、自責の苦しさにしっかり共感してください。まだ面接が開始されて20分も経っていません。まだ味方になる段階。いきなり「変われM」のところに飛んではいけません。この段階では、「つらいですね」という共感のみで、「止める」のです。アドバイスや説明などせず、しっかり要約して、つらいですね」というだけです。その雰囲気を共有できたら、関連のほかの話題を振って、自責の念から気持ちをそらしてあげましょう。

(3) 感情を返すときの要約

 自責の念に対して上のように「つらいですね」とコメントする際にも、必ずその前に、クライアントが発言した内容を要約することを忘れないでください。「つらいですね」と単独の言葉だけの方がいらっしゃいます。要約・質問(あるいはコメント)は、MC講座で非常に重視してお伝えしている重要スキルです。ぜひ、繰り返し練習し、自然に要約できるようにしてください。

(4) 常識的な対応

 専門家は案外常識がないと言われがちです。学んだことにより視野が狭くなってしまうからです。
支援に入るときには「常識的配慮」が重要になります。例えば今回であれば、まずは意識が戻らない重態であるAさんに対する配慮、お見舞いの意識が欠かせません。しかし、何名かの受験者には、そのような配慮が見受けられませんでした。
 ぜひ、「自分が支援を受ける人の立場だったら…」と深刻に考えてみましょう。

2 情報提供

(1) 言葉の選択

情報提供という言葉は、講座の中で使っている言葉です。現場ではそれが相手にどのように受け止められるかを考えなければなりません。例えば、今回のケースで情報提供をしますアナウンスされると、支援を受ける皆さんは、事故について新たな証言があったのか、会社の方針が出たのか、Aさんの容態についての新しい情報か…などと期待します。そこで今回の情報提供なら、「メンタルヘルスに関する簡単な講習」などと表現するといいでしょう。
また、MR(エムアール)という言葉も、一般の方には内容が想像つかない言葉です。メンタルレスキュー協会と紹介するほうが、よりわかりやすいと思われます。

(2) 事例と比喩の使い方について

 昨年度の上級組織講座では、説明に際し事例を使うことを何度も練習してきました。試験では、その成果を発揮していただき、ほとんどの方が事例を使って上手に説明することができました。素晴らしいことだと思います。
 ただ、事例はMCと同じように、強力なツールだけに、使い方を間違えると逆効果にもなってしまいます。事例を使うことができるようになったら、次はより効果的な事例の使い方を練習していただきたいと思います。
 例えば、今回は交通事故で瀕死の重傷というケースです。できれば、同じような深刻さ、構造の事例を選択したいものです。また、紹介した事例と実際の今回の事故との関連性(類似点、相違点)を丁寧に説明していくことも必要です。それがないと、違和感のみが強調されてしまいます。 

(3) 目的とテーマの選定(合格した方へのアドバイス)

 全体的に、ASRの説明をテーマにした方が多かったように思います。MRCレベルではそれで十分だと思いますが、MRIを目指す場合には、もう少し目標との関連をしっかり考察することが必要です。
例えば、もし支店長の関心が離職の防止であるとすれば、社員が離職したいと思う理由を考察します。支店長の日ごろのリーダーシップかもしれません。事故の時に支店長が動けなかったからかもしれません、事故の原因の一つが支店長のAさんに調べ物を命じたからだといううわさを聞いたからかもしれません、あるいは、事故の後に支店長があまりにもクールに日常を送っているからかもしれません。
このように様々ケースを考察し、退職希望者が特定できない今、そんな気持ちを持っている人に、だれが、いつどんな情報を提供すれば、離職を思いとどませることができるかを考えます。
例えば私なら、支援が1日しかない今回の状況の中で、まず支店長の今の状況を皆さんに代弁します。例えば、当日、Aさんに仕事を依頼した細部の状況、事故の現場での判断、動けなかったことに対する自責、その後のAさんへの思いなどを、伝え、同時にそれが惨事後の反応として仕方のないことであったことを、私たち専門家の視点として、他の事例を交えながら説明します。
また、その後この様な同僚の事故の場合、退職したいという思いや、仲間間のトラブルが発生しやすいことを、これまた事例を使い説明し、専門家のアドバイスとして、このように精神的に動揺している時期には、退職などの大きな判断は保留するべきということを伝えます。
その様な情報提供をしたのちに、個別の面談の中で、個人の悩みを聞いていく手順で、全体のサポートを構成します。

支援する際は、必ず目標を立てて、それに応じたメニューを作らなければなりません。前回これだったからとか、これがやりやすいから、慣れているからというスタンスでは、本当に有効な支援になりにくいのです。MRCに合格した方は、これからは、パターンを捨てて、状況をよく把握し、しっかり考察しながら、支援するスキルを身に着けていきましょう。
UCPC、惨事後ミーテングファシリテーター、MRI試験が、そのような戦略的な支援を身に着けるための次のチャレンジ目標になります。
 また、今回めでたく合格した方には、ぜひ協会の基礎講座等のクライアント役や実技指導者役になっていただきたいと思います。というのも、クライアントが何を感じ、何を伝えたいのかを察知する感覚や、自分が伝えたいことを、言葉と表情を一致させ、かつ受け取り手としての相手(クライアント)の気持ちを想像しながら、MCコミュニケーションを進めるスキルは、トレーニングして磨くしかないのです。理屈で学ぶのにはどうしても限界がある。もちろんカウンセリングの場があれば、それが一番のトレーニングになるかもしれませんが、それでも指導してくれ、お手本を見せてくれる人がいるわけではありません。そう考えると、現実的には基礎講座等の実技指導者やクライアント役の場が、まさにこのMCコミュニケーションスキルをみがく絶好の場となるのです。
 実技指導者やクライアント役になるためには、実技指導者勉強会に参加しなければなりません。次回の勉強会は、6月18日です。
 またMRC以上は、MC普及講師としても活躍できます。そのためには、普及講師養成講座を修了しておく必要があります。これは、5月20日です。

今回の試験について下園主任試験員より講評をいただきました。
皆さんの今後の参考になさってください。 
                                  27.12.16 認定委員会


今回は、自殺があった約20名の職場への介入というシナリオでの試験でした。
受験者の皆さんは、大変よく準備して臨まれていました。上級講座や事前の勉強会などで指摘されていたそれぞれの悪い癖もかなり修正されていました。皆さんが大変努力してきたことがよく伝わってきました。
今後さらなる成長のために、主任試験員として気が付いたことをお伝えします。

1. 介入目的調整面接

(ア) 味方になること

惨事現場の長は、通常大変警戒心が強くなっています。
まずは味方にならなければ、ケアも説明も調整もうまく進みません。
ほとんどの方は、メッセージコントロールと体験を聞くプロセスで、味方になれていたと思いますが、何人かは味方になることが不十分だったようです。次のようなケースがありました。

① 相手の心情に十分に対応していない
相手の心情の想像が不十分であること、自分の言いたいことが先行して相手に関心が向いていないこと、相手の表情をしっかり観察していないことなど、がその理由です。
「課長」は次のような心情(「痛いところ」、関心)を持っていました。

  •  自殺してしまったAへの自責、悲しさ
  •  なぜ自殺してしまったのかの疑問、人が信じられなくなっている
  •  顔を見たことのショック、忘れられないことへの第2の無力感
  •  部下にどのように思われているのか
  •  退職者を出したくない、特にB
  •  システム変更の忙しさを乗り切れるか
  •  自分も壊れてしまうのではないか
  •  部外者(MR協会)に自分の非を暴かれるのではないか

白紙的にある程度相手の心情を予測しておけば、相手が表現するキー(表情、質問など)を正しく受け取り、適切に説明、ケアができるようになります。
例えば、今回は「課長」は、アセスメント、情報収集、グループミーティング、うつ、薬などについての関心を示していました。これらがキーです。

② 味方になるためのメッセージコントロール
メッセージコントロールは、かなりレベルが高かったのですが、まだ全般的に要約が少ないようです。自分が困ったり緊張すると「笑顔」が出てしまう方がいらっしゃいました。メッセージを込めた要約がほとんど出ていない人がいました。

(イ) 目標設定について

今回の介入は、「自殺である(今のところ原因不明、会社のせい、忙しさのせいという憶測)、会社が現場ではない、口止めがされている、ただでさえ業務が忙しいのにさらに2名マイナス、退職希望者がいる、幽霊のうわさ」という特性があることが事前にわかっています。
受験者の中には(20分の受験時間の中で目標についてはまだ触れていない方がほとんどでしたが)、疲労のコントロールを介入の全体目標に設定しようとしていた方がいらっしゃいました。方向性はよいと思います。
20分の試験時間内では無理ですが、介入目的調整面接では、全体目標設定だけではなく、それぞれのメニューで何を目指すかを合意する必要もあります。
一例を紹介しますので、介入目的調整面接のイメージを膨らませておいてください。

今回のケースなら、例えば、
全体の目標は、「退職を避けたい」→3か月後の評価で判断する。
そのためには、セカンドショック予防をケアの主体とする。
その際、

  • 休ませるレベル(会社全体、個人ごと?どれぐらいの期間)
  • 休むことに関し、どんな内容を従業員にアドバイスするか

を調整しなければなりません。
全体の目標が決まれば、それに応じて各ツールの細部目標と方法を決めます。例えば、情報提供なら、誰に対して、どれぐらいの説明をするかを考えなければなりません。

  • 個人ごとの情報提供なのか、リーダクラスのなのか
  • 休養に関し個人にどのようなアドバイスを進めるのか。業務との関係を考慮

情報提供の一例としては、
セカンドショックについて従業員全員に説明。脅しにならないよう対策を提案。対策は、忙しく疲れている人でもできるような具体的かつ、容易なこと。
個人でできることとしては、体を緩める、ストレッチ、呼吸法、睡眠の確保法、2時間前の入浴(「疲れているならつかるだけでも」と提案してくれた受験者もいました。具体的でよいと思います。)、アルコールを控える、水分を取る、睡眠前のスマホを控える…、などから自分のできること(やりやすいこと)を一つでも、二つでも。
過労をコントロールする必要性については、「喪に服す」もしくは、セカンドショックで説明(どちらがこの職場でより受け入れやすいかは調整)。
会社にもセカンドショックについて理解してもらい、会社として過労対策に取り組んでもらうことも付け加える
情報提供以外にツールごとの目標を調整しておくべきテーマとしては、例えば、カウンセリングや惨事後ミーティングを提案したり、「話をすること」を情報提供で奨励したりするなら、今回のケースでは部長が口止めをしていることに対し、部長と事前に調整しておく必要があります。話すことの必要性をどの程度説明するのか、(部長の提案した)「話さないこと」とのバランスをどのようにとるのかを決めなければなりません。当然のことならが、部長の顔をつぶさないような説明が必須です。
また、幽霊については、症状として説明するより「お祓い」で対処するのがいい場合があるのですが、これも情報提供の場でみなさんにアナウンスするなら、事前に調整が必要です。

(ウ) ツールの説明

ツールの説明は、まだまだ説得力のある説明をしてくださる受験者が少なかったようです。
それは、ツールを単に目的や方法だけで説明しているからです。それだけだと初めての人には、わかりにくい。例えば惨事後ミーティングは必要性と方法を述べても、イメージしにくいものです。そのようなときは、例えば「お通夜」などの比喩を使うこともできますが、一番効果的なのは、事例です。今回、お一人が事例を使って見事に惨事後ミーティングを説明してくれました。本人は、ご自身の経験談ではなく、本で読んだものと言っていましたが、それでいいのです。とにかく相手に理解してもらうには、具体的な事例を提示できるように準備しておきましょう。
また、介入メニューは手書きでもよいので資料を準備するとよいでしょう。レストランに行って、店員さんからメニューを口だけで説明されるのと、メニュー表を見ながら説明を受けるのでは、理解に大きな差が出るのと同じです。

(エ) もっと課長に聞くべき

味方になる、目標を設定する、ツールを説明する、どの場面でも、もっと課長にしっかりお話をしていただくことが必要だと思います。
例えば、なぜ社員が休んでいるのか、どう言っているのか、なぜ辞めたいといっているのか、会社は、どれぐらい忙しいのか、それに対しどのような対応をしてくれているのか…など、事前情報で聞いていても、現場の状況は違っている、またこの数日で変わっているかもしれないのです。それが、現場で介入目的調整面接をする意義でもあります。

2. 情報提供

(ア) メッセージコントロール

今回は、講師としてのメッセージコントロールはどの方もとてもよかったと思います。よくトレーニングされており、専門家としての信頼感、誠実性が表れていました。

(イ) 何を取り上げるか

15分の説明時間で、何のために何を説明するかはとても重要です。
ほとんどの方が、惨事後のクライシスの反応について説明してくださいましたが、今回は、本当に悲惨な現場を見たのは、2名だけです。また、自殺は会社ではありません。さらに出来事から2週間たっています。
このようなことを配慮すると、むしろ自殺や「うつ」のほうが受講者の関心を引くテーマになるのではないでしょうか。
例えば、どうして人は自殺するのか、自分も自殺するのか、それを予防する手段はないのか…などに関する心理教育です。
また、ファーストショックについての説明も、当初の症状(パニック、茫然自失、感情のマヒ)を説明した人が多かったのですが、そこにいる受講者の関心があるテーマかどうかをよく考えてみる必要があります。当初のショックは、(現場でない限り)自殺の場合それほど大きくありません。むしろ、疑問と自責が大きいものです。また、今は会社を辞めようとか、会社に対する不信感(イライラ)、対人不信、疲労感、不安感などが関心事項です。
それらの、受講者の関心事項に応じた症状を説明していく必要があります。
今回のケースでは、「倉庫に近寄れない」が回避の症状です。これは、理由があるよ、みんなそうだよを説明し、対策として、夜の電気をつける。倉庫に行くときは複数で行く。などの提案をするといいと思います。この時、理由があるよは原始人の比喩を使っても結構ですが、「みんなそうだよ」はぜひ事例で説明してください。言葉で「みんなそうですよ」と言うだけではどうしても説得力がありません。
また退職を避けたいという、課長の意向には、何名かの方が「この時期に人生の重大な決断をするのは避けたほうが良い」という適切なアドバイスをしていました。介入目的に合致した情報提供です。ただ、残念ながら「どうしてそうなのか」という説得力がありませんでした。
この時期は、惨事後の症状として感情的になっていること(単純理論)、この時期に勢いで退職して後悔している人をたくさん見てきたこと(事例)、いわゆる喪の時期には人生の大切な行事を控えるという先人の知恵があること(比喩的事例)などをうまく使うといいでしょう。

(ウ) 比喩・事例の使い方

比喩は事態の深刻度に合わせたものを使用するべきです。今回は同僚の自殺ですので、例えば「鼻水が出る」「声をかけられてびっくりする」などの比喩は、少し「軽く見られている」という印象を与えかねません。
比喩より事例のほうがいいのですが、もちろん事例も軽すぎる事例は、印象が良くないので、注意してください。
事例では、ご自分の「上司からのハラスメント」体験を紹介してくださった方がいましたが、何も知らない人は、メンタルレスキュー協会でハラスメントがあったと勘違いするかもしれません。聴講者の立場から想像して、どう受け止められるかを十分予測しておく必要があると思います。

(エ) 時間計画

内容と関連するのですが、時間内に終われなかった方が数名いらっしゃいました。
ご自分でリハーサルをしたときは、時間内に収まっていても、現場では、聴講者への配慮などもあり、時間がかかりがちだということを覚えておいてください。
そのような方のほとんどは、振り返りの中で指摘したように、伝える内容が多すぎたのだと思います。
私たちが伝えたいこと、伝えやすいことではなく、相手が聞きたいこと、聞きやすいこと(わかりやすいこと)を話すという意識をしっかり持って、できるだけシンプル、わかりやすい講義を目指しましょう。

今回の試験について小野田主任試験員より講評をいただきました。
皆さんの今後の参考になさってください。 
                                 2014.12.27 認定委員会

MRC認定試験、お疲れ様でした。皆さんが11月、12月頭を抱えながらも、試験さながらにトレーニングしてきた様子を垣間見てきました。今年は、特に先にMRCになった方が積極的に協力してくださっていて、トレーニング用のシナリオを作成しそのシナリオを使って、受験する方々が情報提供や介入目的調整面接の練習をし、MRCがそれを指導するという連携で試験対策を進めてきた方もいらっしゃることも伺っています。きっとそれ以外にも個別にトレーニングを実施してきていた方もいらっしゃるでしょう。その結果、質の高い試験になったと思います。

このような会員同士の交流や切磋琢磨は、MR協会としても一つの目標の形であり、とても素晴らしいことだと皆さんのご協力に感謝しております。一方、残念ではありますが、トレーニングしたにも関わらず不合格になってしまった方もいると思います。
結果にはショックを受けるだろうなと試験員も心が痛いところではありますが、現場のことを考えると、どうしてもレベルを下げることはできません。皆さんが成長している途中経過だと感じています。是非、再度チャレンジしてほしいなと心より思っています。それでは、主任試験員として気が付いた点を記載したいと思います。
                                   MRI 小野田奈美

1.支援に入る際に重要になる2つのポイント

(1)(支援の前に)情報を収集し、かつ想像(思考)を働かせる

〜彼を知り己を知れば百戦殆うからず~ 
孫子の兵法に上記の言葉があります。意味は、敵についても味方についても情勢をしっかり把握していれば、幾度戦っても敗れることはないということ。
介入は決して戦いではないのですが、先方のことを把握し、自分たちのことも把握しないと、良いサポートができないことになります。
そこでまず、状況把握の仕方をおさらいしましょう。
努めて情報を収集することが望ましいのですが、先方も事故対応に追われていたり、先方でさえ客観的な情報を持っていないことも多いものです。その際は、情報収集にこだわらず、今ある情報を元に、自分で現場、特に相手のニーズや心理状態を想像しておくことが必要です。

  • ① 先方のこと
    • どういう組織(会社概要等チェック)か? そのショックな出来事は、いつ・どこで・どのように起こったのか・何人ぐらいの方がどのような関わりをしたのか・どのぐらいの期間が経っているのか、(5W+1H)、その時その人たちにどんな反応があり苦しさがあるのか・今はどんな反応・苦しさがあっても仕方ないのか、そして会社は何をしてほしいのか等について、できるだけ先方の立場にたって想像を巡らせ、おおよそのことをイメージしておきます。
  • ② 私たち(MR協会)のこと
    • MR協会・チーム・・・いつ・だれが・どのように支援するのか。例えば、介入場所・介入時期・日程・時間・メンバー・スケジュール・ツール等、今回の支援の状況や制約事項をできるだけ具体的にイメージします。特に、個人(メンバー)については、良く把握する必要があります。自分を含めて、それぞれのメンバーが基礎講座・上級講座で勉強した知識・技術をどの程度修得し、使いこなせることができるようになっているかによって、チーム内で期待されるご自分の役割が変わってくるからです。

<参考>
チーム編成や支援メニューの概要は、MR協会事務局が支援ディレクター(MRSI,MRI)と調整し決定しますが、MRCがカウンセリングを担当する際も支援全体を理解していなければなりません。ですから支援前から上の2つのことは意識して情報を収集し、イメージを持っておいてください。

そして今回のように本来は支援ディレクターが実施すべき介入目的調整面接に、MRCが臨まなければならないような事態も現実に生じ得ます。その場合は…

  • 今回の目的調整面接は、(先方の)誰が出席してくださるのか?その方はどのようなお立場の方か(当日決定権をお持ちなのか・本社は別にあるのか)、その方の苦しさは何だろう?
  • どのような職場なのだろう。今回の出来事によりどのようなトラブルが生じているのだろう?
  • どんな苦しい方がいるか? 
    • このショックな出来事で過敏に反応する方はいるだろうか(今回の出来事関 連で会社側が特に心配している方、うつの復職直後や現在も投薬治療を行っ ている方、精神科既往歴のある方、同じようなショックな出来事を以前経験 している方、残業が毎月多い方、プライベートでショックな出来事が起こっ たばかりの方等)その時同時にその人達にはどのような反応が起こっている だろうな~

などの情報を収集するとともに、できるだけ具体的に想像します。

(2)味方になる(MCを十分活用する)

 介入目的調整面接でお会いする方は、通常あなたが一番先にお会いするクライアントです。と同時相手にしてみればあなたは、一番先に会うMR協会の代表です。

味方になるためには、目の前の方がどういう出来事に遭遇したかという「体験」と、その時、現在の「気持ち」を同時にに伺っていきます。体験を聞くという事は、表面的な事柄を聞くということではありません。体験した話の裏にある「気持ち」も一緒に聴くという事が重要なのです。ですからクライエントが発言した感情の言葉は決してスルーせず、あなたがそのことを理解したことを必ず5ステップ(表情)か要約・質問(言葉)で表現してください。
また目的調整面接の中において、情報提供(心理教育)する場合もあると思いますが、その場面は相手が「この人(組織)に相談できるのかな?」という判断をするための重要な材料になります。ですから、心理教育と言っても、上から目線ではなく、「弱っている方シフト」でシンプルで、わかりやすい教育を目指しましょう。説明はどうしても一方的になりがちです。相手の表情を観察し、丁寧ながけ崩れ対策を行いながら、常に味方であり続けることが一番重要なポイントとなります。

2.各試験で注意すべき事項

試験のシナリオに沿って、想像力を働かせる→介入目的調整面接に臨む→情報提供に臨む、の順番で、要点を整理、説明してみます。

(1)(支援の前に)情報を収集し、かつ想像(思考)を働かせる

皆さんが、試験のシナリオをもらった時に把握、もしくは考えるべき事項です。

  • ① 先方のこと
    • 事件前の事に関して
    • 学習塾である。皆さんの勤務時間(コアタイム)は何時から何時なのか、校長ほか職員・講師・受講生(中学・高校(浪人生含む)+保護者)が関わっている組織。来年の3月には閉校が決まっている、人員削減が必要か? 受験が近い、ピリピリ・苛々している、保護者・受講生からは高い月謝に応じた効果を求められる、担任制なのか? 講師は職員ではない? 3月に閉校になることが決定している講師・受講生ともに辞めたいと思っている人はいるだろう・・・・
    • 事件後については、
    • 被害者・加害者は顔見知りだったのだろうか? それぞれの受講生を担当している講師はいるのだろうか? 保護者会は開いたのだろうか? 開いたときの保護者の反応は、受験生・保護者は早く切り替えて受験に向かわせてあげたい、環境を整えてあげてあげたい、子供たちの心理状態を平常心にもどしたいと思っているのではないか、その反面そのことが頭から離れない受講生・講師・職員がいるのではないか、事件の現場はどこか そこに係わっていたのはどのような人たちか、校長先生が窓口対応なのか、本社とのやり取りはだれがやっているのか、・・・等 
    • そして、更にその後のことについては
    • 保護者からの安全面での問い合わせ、解約依頼、校長のマスコミ対応に対するクレームと、それへの対応、更にその対応への反応。職員の中にも、「学生が怖い」「夜、校舎を閉めるのが怖い」などと話すものがいるかも。「早めに辞めたい」と退職の意志を申し出た講師が15名いるの、真意は?例えば、「辞めたい講師」は、この事件の前からなのか、この事件後に気持ちが一気に大きくなったのか、会社側は本当に辞めて欲しくないのか・・・
    • 会社のニーズについて
    • 会社は何をしてほしいか? 誰に対しどのようなケアをイメージしているのか。ケアを必要としている人数はどのぐらいか?

介入目的調整面接をするにあたり、このように先方のことを想像し、にいかに事前にQ(疑問)を立てられるかが鍵となります。

  • ② 私たち(MR協会)のこと
    • 介入は、○月○日・○日(介入日は事故から約2週間後の2日間)。
    • メンバーはMRIを支援ディレクターとしMRC × 2名(合計3名)
    • 今回のツールは、何を使用するか。
    • また、当日の朝、支援ディレクターから連絡が、介入目的調整面接の当日1時間前、「自分ともう一人のMRCは、電車の事故で2時間ほど遅れる。介入目的調整面接は君が一人でやって」→私は最低限何をしておくべきか。

(2)介入目的調整面接

  • ① 全般(味方になる)
    • 単に打ち合わせをしているわけでも、コンサルティングをしているのではありません。
    • 私たちは、クライシスの人々の心理状態に応じた適切なコミュニケーションを駆使し、相手の負担が少しでも軽くなるよう、受け取りやすく理解しやすい情報を伝えながら、調整やコンサルティングをすることができる専門家なのです。
    • ですから、尋問調に質問を続けたり、相手の事前情報若しくは自分の伝えたいことが書いてあるノートばかりに目が行き、目の前の方の表情や動きをよく観察せずに話を進めていくことがあってはいけません。そのような受験者が何人かいらっしゃいました。
    • ある方は、校長の体験を伺っているとき、自責が強かった校長先生の行動を肯定的に認めてあげようとするあまり、「校長先生はそんな中よく頑張りましたね」「普通じゃできないことですよ」と何回も伝えていらっしゃいました。講座でもお伝えしたように、何回も言う事で違うメッセージが伝わってしまいます。それは「他人事メッセージ」や「頑張ったから、問題はない、気にする必要はない(大したことはない)」という裏メッセージになります。ここでは、1回だけ「校長の立場で良く動かれましたね」あるいは「校長先生がうまく指示を出されたのでみなさんが迅速に対応できたのですね」等と伝える程度にとどめておいたほうが、校長先生の(自分は大変な仕事をしているという)プライドを傷つけないと思います。
    • また、「マスコミの前で笑顔になってしまいクレームにも・・・」と校長が言った時に、何も対応せずスルーしてしまった方がいらっしゃいましたが、例えば、「原始人的には、ピンチが起こった直後は、ここはもう危なくないんだよ。という事をリーダーが伝えなくてはいけません。そうしないとメンバーはいつまでもその場所に戻れません。また、通常は他人への配慮という点からは出来る限り明朗な雰囲気を心がけることはマナーです。それが笑顔という形で出てしまったのではないでしょうか。リーダーの役割として当然なことだと思いますが、ただ、周りの方はピンチの渦中にはいないので、それは不謹慎だと受け取ってしまうのです。それを私たちは「苦しみの微笑」と言っています。」等、比喩やその現象に名前を付けてあげることで、「良くあることだよ(普通だよ)」、「仕方がなかったよ(無理もなかったよ)」というメッセージを伝えることができます。
    • また今回の面接場面では、そのことを校長先生が打ち明けてくれたタイミングは、惨事後ミーティングの説明につなげるチャンスでもありました。例えば、「この苦しみの微笑のような表現は、こういう時に出てきやすい態度や表情なのです。ショックな出来事の後の反応なのです。ほかの方にも例えば、自習室に行けない、学生が怖い、校舎の鍵を閉めるのが怖い・・・等の反応が出ていることが予想されます。更にこれの反応が「自分にだけに起きている」と勘違いして、余計に落ち込む方もいらっしゃいます。このことをグループで話すことによって、自分一人だけではなかったんだ、と安心してもらえます。併せて、校長先生の「苦しみの微笑」についても、皆に理解してもらい、グループ全体の雰囲気を変えることが可能になるのです。このような場になり得るのが惨事後ミーティングです」と説明することもできます。そして続けて「私たちは有効なツールだと思っておりますが、校長先生としてはいかがでしょうか?今回のケアに取り入れれた方がいいでしょうか?」と、相手の感触を確かめます。というのも、校長先生としては、惨事後ミーティングでご自分への非難が集中するのではないかという事を恐れていらっしゃる場合も予想されるからです。もしそうなら、惨事後ミーティングを強行するべきではありません。
    • これは一例です。その場の流れの中で、皆さんがご自分の言いやすい方法を工夫すればいいのです。しかし、いずれにしても、自分が何をすべきかが頭の中で整理されていなければ(事前の想像力です)、このような展開につなげることが難しくなります。
  • ② ツールの説明
    • 惨事後ミーティングとは?と質問があった場合、惨事後ミーティングのメリット・デメリットを説明することは、もちろんとても重要ですが、まず、惨事後ミーティングの形式(机をロの字に並べて参加者はそこに座っていただく、進行役はMR協会がし、そこに来る方はどんな方が対象で何名ぐらい。時間は約60分、また、式次第は何か、今回実施する目的はこう等)を具体的に説明して、実施するときのメリット・デメリットをお伝えすると良いでしょう。
  • ③ 目標設定
    • 今回の支援の目標がどこにするのかというのは、先方としっかりすり合わせておく必要があります。というのも、メンタルヘルスケアはすぐに具体的な結果が出ないことが多いからです。支援を受けて(ケアをしてもらって)て本当に良かったのかを実感していただくためには、例えば校長先生が、学校本部に報告しやすいようなアウトプットが出るように目標を定めるような視点をもつと良いでしょう。

目標の具体例としては、講師の離職を予防したいという校長先生の意向があるので、今回は離職講師の数を目標にする方法方があると思います。しかし、「講師の離職を0にする」というのは理想かもしれませんが、3月閉校と決まっているところもありますので、現実的ではありません。ここはしっかり、以前から辞めたいと言っている人が何人いたのか? 学校側は本当に辞めて欲しくないのか?等をすり合わせて、人数目標を設定したほうが良いでしょう。
あるいは、「受験も近いので、講師職員の方に今起きている反応を理解してもらい平常の教室運営に戻し、3月まで今回の事故で引きおこりうる不調者を事前に予防すること」などという状態を現実的な目標にすることも1つの手だと思います。

目標の定義のひとつでSMARTというのがあります。
具体的(Specific)、測定可能(Measurable)、達成可能(Attainable/Achievable)、現実的(Realistic)、期限がある(Timebound)。参考にしてみてください。

(3) 情報提供

この聴衆の中のターゲットは誰かを考えるべきです。私たちは常に、多くの元気な人に対してではなく「弱っている方シフト」で伝えていきます。そして今回の弱っている方はだれなのか、ターゲットを具体的にイメージして伝えていく必要があります。
回避・侵入・過覚醒という言葉で説明する方が多かったようですが、ここもメッセージコントロールの視点を意識しなければなりません。漢字ばかりの文字が続くと私たちが伝えたいと思っている方々(ショックで集中力が低下している人)の頭には入っていかないことが多いでのす。

「あなたの反応は正常」・「壊れていない」というメッセージは、ぜひ伝えていきたい安心情報です。しかし、中には反応が少ないかもしくは全くない方、あるいはマヒしている方もいらっしゃいます。「ショックな出来事の後には必ず反応が現れる、これは専門家には周知の事実なのです」というメッセージは、そのような人にとって、「自分はそんな反応がない、センサーが鈍いのか、あるいは人として冷たいのではないか」と逆に自信を失ったり自分を責めるような心配情報になってしまいます。バランスがとても大切になります。「3~7バランス」を講座でもお伝えしました。再度、自分が実施した情報提供を、いろんな人の視点で振り返ってみてください。

タイムマネージメントは、支援現場ではとても大切です。支援を受ける人は、業務の手を止めているという事を忘れてはいけません。確かに私たちは、先方の要望に応じてケアに入りますが、先方も事件や事故の為に、業務が忙しくなっている場合がほとんどなのです。相手の業務に差しさわりのないようにケアを提供しなければなりません。かといって講師が、早口になってしまうと私たちが伝えたい方々には伝わりにくくなってしまいます。情報提供したい内容を精選するとともに、時間管理を含めたプレゼンテーション能力を日ごろから鍛えておく必要があります。

原稿(借り物理論は相手理論にはなりえない)〜原稿を用意した方も多かったようです。口述原稿のように綿密に書き過ぎいていては、「これは言ったかな、この言葉を使ったかな」と心配になり、目線が下ばかり向くことになります。そうすると、聴衆の体調の悪さ、表情のくもり等大切な情報を見逃してしまいがちです。また中には、試験前から準備した原稿を使ってしまったため、介入目的調整面接で伺った反応や校長が気になっていることを織り込めず、この介入に即していない情報提供になってしまっていた方もいらっしゃいました。

「わかっている」ことと、「伝えられる」ことは別である〜どんな分野でもそうですが、知っていることと伝えられることの間には大きな差があります。十分自分に落とし込めていない内容は、なかなか相手には伝わりにくいものです。ご自分でしゃべっている間にもつじつまが合わなくなってきてしまい、不安な表情が出てしまうと、それは相手にもすぐに伝わり、この研修は何だったのだろうか?とただでさえ惨事でイライラしている聴衆には、その後の支援全体に不信感さえ持たれてしまいかねません。ぜひ単に「わかっている」と過信せず、必ず人の前で話してみるというトレーニング(リハーサル)をするようにしてみてください。

3.おわりに

 MRC認定試験に合格すると、(徐々に研鑽や経験を積みながら)基礎講座の実技指導者や介入現場での個別カウンセリングが任されるようになります。よって試験でもその視点で評価されます。
実技指導者としての視点は、前回の下園MRSIの講評の「おわりに」を参考にして下さい。

介入現場での個別カウンセリングを経験するということは、その前に介入のメンバーに選定されるという事でもあります。介入メンバーは緊張するアウェーな場所で、他のメンバーとともに協力して活動しなければいけません。つまりバランスや協調性が問われます。さらに現場での一人ひとりの発言・表現・行動は、MR協会全体の印象を決めてしまいます。受験者の皆さんが、協会の看板を背負っているという意識を持っているかも問われています。
また介入現場でのカウンセリングは、クライエント力の低いクライエントに、1回きりの支援であることが多いのです。MCが十分にできており、早く味方になる。クライエントの特性がわかっており、比喩や事例を使って相手が理解できるように伝えていく。つまり「クライエントセンタード・アプローチ」ができていなければなりません。「カウンセラーセンタード」の技術にならないように気を付けください。このカウンセリング力は、MRCの認定試験では、介入目的調整面接で評価しています。

MRCを受験する方は、積極的に、基礎講座の実技指導者補助として講座に参加したり、現場がない方は、ロールプレイ講座を受講し自己研鑽することをお勧めします。
また、今回無事に合格された方は、平成27年3月28日29日(土日)の 「うつ・クライシスカウンセリング支援戦略講座:パイロット版」を受講するとUCPC(うつ・クライシス専門カウンセラー)の認定が付与されます。
合格された方、不合格であった方、これから受験する方は、平成27年度から実施される上級(個人)を是非受講しUCPC(うつ・クライシス専門カウンセラー)の認定試験を目指しても良いでしょう。カウンセリング力を保つ、あるいは向上するための一つの貴重な勉強の場となるはずです。是非トライしてみてください。

今回の試験について下園MRインストラクターより講評をいただきました。
皆さんの今後の参考になさってください。 
                     2014.4.1 認定委員会
年々、MR受験者のレベルが上がっているように感じます。うれしい限りです。
特に複数回受験の人は、前回の受験の時よりもかなり実力が向上しているに見受けられました。MR協会のスキルの習得はスポーツの場合と同じです。これまでの熱意と努力がそのまま現れているような気がします。試験で不合格になるのは誰でもとても大きいショックですが、ぜひこれをバネにして、一段と大きく飛躍していただきたいと思います。
以下、アドバイザーとして気が付いた点を解説します。
                          MRI 下園壮太

介入目的調整について

介入目的調整面接の目的を正しく理解する

介入目的調整面接の目的を十分に理解していない人がいました。
介入目的調整面接は、依頼側のニーズに合致したサービスを提供するためのものです。これを行わずに介入すると、介入側の勝手な理想や思い込みを押し付ける支援になりがちです。また、支援側は十分なサービスを提供したと考えていても、相手は全く違う次元の効果を求めているかもしれません。サービス提供側が「どんなことができ、何ができないか」を明確に伝え、依頼側と共通の認識を持つことが、介入成功の要件となるのです。

例えば、一般的には「個人個人の苦しさを早く除去し、仕事に集中できる状態に戻すこと」が介入の目的である場合が多いと思います。
ところが例えば3月の試験では「4月前の決算期で消費税前の売り上げセールの中で、社員、特に正社員に辞めてもらっては困る。あるいはアルバイトが一斉にやめていくのは困る」という事が、店長の一番のニーズでした。また、見知らぬ人の落下事故で、すでに2週間が経っており、事故の目撃や対応によって大きなショックを受けている人は、あまりいないという状況でした。

このような状況の場合なら、介入の目的は、「離職者を予防する」ことになります。それを受けて、メニューも変化します。例えば、1日の介入の中で個人面接を正社員のみに集中することが考えられます。また、情報提供も、ファーストショックの一般的な説明にとどまらず、「惨事の後には、(イライラや不安で)組織や上司に対し疑心暗鬼になり(あるいは回避の為、職場や仕事が怖くなり)、辞めたくなることがある。これは一つの反応として起こりうるので、このようなときには重大な決心は先送り(例えば3ヶ月後)にするべきである」という内容を強調するでしょう。このような流れを調整するのが介入目的調整面接なのです。

介入目的調整面接でリーダーの信頼を十分に得る

介入目的調整面接は、通常依頼側の責任者と行うことになります。
この面接において、責任者の信頼を得ておくことは、事後のケアを効果的、効率的に進めるためにも重要なことです。
責任者の信頼を得るには、

  • ①通常自分自身も惨事の被害者である責任者にカウンセリング的に接し、クライシスサポートの効果を実感してもらう。
  • ②過去の介入の経験などを紹介し、支援のプロであることを理解してもらう。
  • ③クライシスの心理や介入の手段を事例や比喩を交えて、わかりやすく説明し、適切なアドバイスを行う

事が必要です。
特に、②③の説明が不十分な人が多かったようです。
クライシスの心理状態やアンケートの効果や手順、惨事後ミーティングの意義、目的の説明が不十分でした。
一応説明はしているのですが、表面的です。言うことと「伝わる」ことは別です。ここでは、皆さんの経験値を問われていると思ってください。作ってでも事例で説明すべきです。事例は「自分の経験したこと」ではありません。学会ではないのです。相手に理解しやすいように「物語形式で説明する」これが現場でいう、事例で説明する、という事だと理解してください。
また、用意したツール全部を説明する必要はありません。今回、資料をあらかじめ準備するでもなく講座内のスライドを使用し、責任者に説明をしている受験者の方が数名いました。説得力に欠け、これが本番であれば信用がなくなってしまいます。相手が興味を持つツールを、いくつか、事例を使って説明し、今回のケースに適応できるように具体化してみせる過程で、説明者の経験値や深い洞察を提示できれば、責任者はあなたのことを信頼し、あとの説明は要らなくなります。

介入目的調整面接の相手(リーダー)のケアのコツ

受験者の中には、上の①の目的を意識して、基礎講座で練習した惨事後の個人対応カウンセリングの手順で、相手(責任者)の話を聞こうとした人が多かったように思います。
確かに、体験を詳しく聞くのは、共感の為の近道です。しかし、例えばいきなり体験を聞かれても、何のためにそれを聞かれるのか、相手(責任者)にはわからないでしょう。強引に進めると信頼を損ねます。構造化面接の手順は協会で勉強した会員には、当たり前のことでも、相手(責任者)はまったく知らない事なのです。そのことを十分に意識する必要があります。
体験を聞きたいなら、どうしてそれを聞くのか、相手に納得できるような説明をしてから、聞く必要があります。
この場合も、正しい説明であることより、相手が納得できる説明であることが重要です。

例えば支店長(店長)に「あなたの味方になるために(あるいは惨事後の心のケアをするために)体験を聞かせて下さい」と(正しく)説明しても、「私の事は良いので、社員をケアしてください」と答える人が多いかもしれません。そのような場合、裏(本当の)の目的ではなく、建前の目的を説明すると良いのです。

例えば、「今回事故の状況に応じたサポートをしていきたいと思いますので、当日の状況を支店長さんがご存知の範囲で結構ですので、まず少し詳しく教えていただけませんか」と切り出して、後は臨場感あふれるような聞き方で、支店長個人の体験や感情を聞くといいしょう。
話の展開の中で、特に、責任者の自責の念を、一生懸命に否定しようとしている人が多かったように思います。
気持ちはわかりますが、相手の立場になってみると、今日会ったばかりの第三者に、「事故後の対応が良かった。十分やった」「あなたは正しかった、あなたは悪くない」と言われても、むしろ、「よそ者くせに、わかってないくせに」と、裏メッセージに取られ、がけ崩れをおこしてしまいがちです。

基礎メッセージを正しく理解しましょう。
6つの味方だよメッセージのうち、基礎メッセージは、聞いているよ、大ごとだね、変わらなくていいよ、責めないよ、ですが(さて、あと2つは何だったでしょう)、自責の念については、「(私は貴方を)責めないよ。(責めているあなたは)変わらなくていいよ」と理解してください。責めないよ、を表面的に理解しているだけだと、責めているあなたは変わらなければならない、と「変われメッセージ」になってしまいやすいのです。

また、<責任者自身のケア>=<責任者の個人面接>と考えている人が多かったように思います。
例えば、支店長へのケアは、個人的な話を聞くだけでなく、従業員の皆さんの状態を正しく伝えること、今後の組織運営について現実的なアドバイスをすること、上級組織に意見具申をすることなど、様々な方法があることを理解して下さい。むしろ、話を聞くことより、「情報でケアする」という意識を持つといいでしょう。

メッセージコントロール上で注意すること

今回は、早口の方が何名かいらっしゃいました。
早口は、ただでさえ緊張して不安になっている相手を、更に急かせてしまいます。
たとえ正しいことを伝えていても、どうしてもその人に頼りたいとは思いにくくなります。
早口の方は、頭のいい方が多いようです。しかし、自分が話したいことや、自分の頭の理解に集中してしまい、相手の反応に気がついていない感じがします。
クライシス介入において、早口はぜひとも修正していただきたいと思います。
早口は癖なので、自分でしっかり意識して修正してください。
また、早口と同じように、うなずきや相槌のタイミングが早すぎる人も何人かいらっしゃいました。特に、「あ」「え」など短い相槌の場合、焦らせるような感じが顕著になります。
相手の話をしっかり聞いて、それを理解し、落ち着いてリアクションする練習をしましょう。
直接質問が多い人、表情の少ない人は裏に取られやすい傾向があります。
声が小さいのは早口と同じぐらい致命的です。クライシスのクライアントは、ただでさえエネルギー不足なのです。そのような人に「聞きづらい」話をするのは、サービス精神が足りないと心得てください。

情報提供について

情報提供で何を伝えるか

「情報提供」という言葉は、上級講座のタイトルです。教育という上から目線の言葉を避けたかったので、情報提供というタイトルにしました。
しかし、それ(情報提供)を惨事の現場で、そのまま使うと、「事件に関わる情報提供」という違う意味に取られがちです。情報提供という言葉より、「ショックな出来事の後のメンタルヘルス講習」などと、言い換えて表現するといいでしょう。

内容は、皆さんが選定したように、ファーストショック、セカンドショックについての説明が主体となります。しかし、それだけでなく、介入全体におけるこのプレゼンの地位と役割を考えなければなりません。
例えば、メンタルレスキュー協会の紹介、介入の目的や日程、介入メンバーの紹介などを入れる必要があります。また、全員に面接を予定している場合、面接の効果的な活用法などを説明すると、事後のカウンセリングをより効率的、効果的にすることができます。

ファーストショックについての説明が表面的

情報提供の時にファーストショックの説明をする人は多かったのですが、説明側としては当然のことでも、相手は「なぜ、いま、この説明をされるのか」よくわからないことが多いと思います。
ファーストショックのことを知らないと、いわゆる第2の無力感が大きくなります。表現としては「自分の症状に驚いて自信を失ってしまい、それが悪循環となってショックから立ち直れない人がいます。それを避けるために直後のことを、もう一度客観的に整理し、これから起こりうる反応を、事前知識として学んでおきましょう」などと前置きして、ファーストショックの説明を始めればよいでしょう。

ファーストショックについて反応を並べた後、症状の説明をせずに、「普通のことです」「正常な反応です」とだけ繰り返す人がいました。
反応を紹介するときは、一般的な反応ではなく、その現場特有の反応で説明する必要があります。例えば、ある場所や行為を避ける、ではなく、駐車場のゴミ捨て場所に行けなくなった、携帯電話が使えなくなった、車が運転できなくなったなど、受講者が現実に困っていて、関心の高い症状を取り上げると効果的でしょう。
反応を紹介した後は、無力感対策7つのステップでも強調している通り、普通だよ、理由があるよ、という事を、必ず説明するべきです。

  • ①まず「普通だよ」を、その言葉ではなく事例で説明します。
  • ②普通だよを説明できる事例が思い当たらない場合は、原始人などの比喩や、簡単な理屈(理論)で「理由があるよ」を説明します。

期間限定だよという説明をするとき、ASRのピークを2から3日とか、2から3週間と理解している人が何名かいらっしゃいました。講座でそのような説明があったかもしれませんが、それは、特殊なケースで、一般的にはASRの症状は出来事1日目がピークで数日でがくんと減っていきます。

情報提供の際セカンドショックについて情報提供するかどうかは、バランス感覚が必要です。すでに2段階の人が多い場合を除いて、惨事後1か月未満の介入であれば、セカンドショックには触れない方が余計な不安を引き起こさなくて済むと思います。
また、セカンドショックについて触れる場合も、責任者クラスには、仕事を減らす努力をお願いしても、一般の社員に「休んでください」とだけお願いするのは、「無理なお願い」になりがちです。結局は、休ませてくれない上司に怒りが向くことにもなりかねません。
仕事は仕方がないこととして、できるだけ余計なエネルギーを使わない工夫として、脱力の方法や、こまめに休息を入れる意識、日曜などの過ごし方、ハシャギ系やアルコールを控えることなどを具体的に紹介するといいでしょう。

興味を喚起する

情報提供の時のメッセージコントロールは、比較的上手だったと思います。
ただ、ここでも早口の方は、その癖が出ていました。
また、話し方が単調になる方もいらっしゃいました。
話し方のペースを変えるか、事例や比喩を使うか、質問形式(実際に質問はしない方がいい場合が多いが)の構成にするなどの工夫が必要です。
パワーポイントやホワイトボードの活用の仕方にも差が出たように思います。
ホワイトボードは、介入目的調整での変更をすぐに反映できるという利点があります。
ただ、多くの要素を書くことはできないので、そのような場合は、配布資料を準備するといいでしょう。ホワイトボードには、重要な要素だけを、わかりやすく、見やすく、太い線で描きましょう。丁寧に書く態度は、その人の人柄を表します。練習するといいでしょう。
フリップを使用する人もいましたが、現場特有の反応(例えば、携帯電話が使えない、ゴミ捨て場に行けない等)を確認できた場合は、付け足して、ホワイトボードに書くなどの臨機応変な対応が必要となります。
比喩や提案は、現場の雰囲気とあうようなものを選定すべきです。2月の事例では、同僚が危篤状態という緊張した状態でした。その中で、対処の方法の一つとして呼吸法などを提示すると、「そんな簡単なことで…」と裏メッセージに取られがちです。呼吸法がどれぐらい効果的か、どんな時に効果的かなど、それなりの理由を具体的に説明する必要があります。
事例や比喩が適当かどうかは、自分の感性だけで判断してはいけません。必ず他の会員や友人などに紹介して、適切かどうかを事前にチェックしてください。

どこまで準備するか

情報提供(講習)を口述原稿レベルまで準備している人がいらっしゃいました。
確かにそこまで準備しておくと安心して本番に臨めるとは思いますが、現実には、介入目的調整面接で介入の焦点が変わる、現場特有の症状に合わせた症状説明や、事例、比喩を使う必要がある、などの理由から、本当に効果的なプレゼンをするためには、現場でかなりアレンジしなければなりません。
あまりにも準備し過ぎると、準備以外のことをする「怖さ」が生じ、相手の知りたいことを言うのではなく、「こちらが準備したことを正しく言おうとする課題」になってしまいます。

これを避けるためにも、準備は、ある程度の筋に止め、むしろ(単体で練習した)事例集や比喩集を心のポケットに入れておければ、いいのではないかと思います。
口述原稿を準備していくと、どうしてもメモを見る回数が多くなり、自信のなさのようにうけとられがちです。

おわりに

MR試験に合格すると基礎講座の実技指導者になれます。つまり、試験では基礎講座の実技指導者として独立できるかという視点でも評価されます。実技指導者は、正しいことを教えるだけでなく、相手のモチベーションやレベルを考えて、相手にとって最適のアドバイスを与えなければなりません。

例えば、講座ではリアルなクライアント役を演じるのは良いか、それによってカウンセラー役の相手を傷つけたり、モチベーションを下げてしまうような実技指導者(クライアント役)は良い指導者とは言えません。
つまり、自分の事だけでなく相手のことを考えられる全体的な余裕がなくてはならないのです。当然、そのことは、介入目的調整面接や、情報提供でも必要です。そのバランス感覚を持っているかがチェックされているのです。

MRを受験する人は、この態度や視点を訓練するために、積極的に基礎講座や勉強会に参加して、クライアント役や実技指導者補助として、フィードバックについても練習することをお勧めします。



今回の試験について下園MRインストラクターより講評をいただきました。
皆さんの今後の参考になさってください。 
                    2013.2.23 認定委員会
注:平成25年当時のMRC試験は、現在と受験内容が異なり、惨事後ミーティングが実施されていました。ご注意ください。

情報提供

全体として、良く勉強されており、非常に真摯に課題に取り組んでいる姿勢にMR協会のメンバーとしての信頼感を感じました。
次のようなことをさらに学習してほしいと思います。

何を話すか

試験では10分間の情報提供の場面が与えられましたが、その10分でどのような情報を提供するかを明確に意識してできていない人が多かったように思います。
主要なターゲットを誰にするかをイメージしないと、提供する内容が決まりません。そのターゲットがどのような情報を知りたいか、MRとしてどのような情報を与える(提供したい)か、受講者にそれらの情報を受け入れる余裕(感情的、集中力)がどれぐらいあるかを考えます。

また情報提供とはいえ、今回の介入の最初の挨拶にもなります。
我々のサービスをより活用してもらうために、今回の介入メニューの紹介や活用する際のコツなどを、お知らせしておく必要もあります。
これらのことを総合的に考えて与えられた10分間を最大限に有効に使う必要があります。

今回の場合なら、集められたメンバーがマラソンに関係している方々なので、必要以上に無力感を感じないための情報提供、つまり惨事後のファーストショックの具体的な症状と、安心情報として、症状の理由説明や継続期間、対処法などを説明すること、及びこれから始まるMR協会介入チームの介入メニューや活用法についての紹介などを主体とするべきでしょう。10分間の使い方の一例としては、

  • MR協会・個人の簡単な紹介(1分)
  • この10分間の情報提供の目的と説明項目(30秒)の紹介
  • 惨事後に起こりうる症状(ファーストショックのみ)(3分)
  • 安心情報として誰にもでも起こりうるという事例(2分)
  • 時間限定であるという事例(1分)
  • 今の苦しさをさらに楽にするためのMRの介入メニューとMR協会加入チームの協会の活用法(2分)
  • 予備30秒

あるいは、個人でできる対処法をもう少し詳しく述べたい場合は、期間限定であることと誰にでも生ずることをさらっと述べた後、個人で出来る対処法について具体例をあげながら3 ~4分説明してもいいでしょう。
セカンドショック(うつ)のことを主体で話した人が多かったのですが、この時点では、まだその症状は表れておらず、ただ、不安にさせるだけの情報提供になってしまいます。

ファーストショックの症状(正常な反応)をよく理解し、自分の言葉で説明できるよう、復習して下さい。「侵入・回避・過覚醒」の話をすると(特に「侵入」)、その情報がかえってショックを与え、フラッシュバックなどにつながるのではないか、という不安も聞かれましたが、ご自分のその不安は必ず聞き手に伝わりますし、あえてその情報を与えることを「避けた」ことで「その症状はあたりまえだよ」と後でいくら言っても説得力がなくなってしまいます。

セカンドショックの情報を説明するとすれば、その後の観察や仕事の調整を行う上司、人事、健康管理スタッフなどに絞るべきでしょう。多くの人にセカンドショックの話をするのは、3か月後以降の時期になります。

どう話すか

情報提供の場はカウンセラーとしての人柄をアピールする絶好の場であるので、メッセージコントロールに特に気をつけるべきです。多くの人がゆっくりとした聞き取りやすい話し方をしているところは好感が持てました。
しかし説明が分かりにくかった人(事例や比喩がない)、与える情報とその表現が不安を煽るメッセージとなった人、やや多動になっている人、言葉の繰り返しが多い人などが見られました。緊張してのことと思いますが、実際の介入現場では、もっと緊張します。緊張の中でもパフォーマンスを上げなければなりません。

また、口述原稿を準備してきた人も何人かいましたが、原稿を読むと、やはり内容が伝わってこない気がします。内容自体は十分理解しているようなので、勇気をもって、自分の言葉で話す練習をしてみてください。相手の顔を見ながら話すことが、現場ではとても重要になります。
具体的な対策事項について、呼吸法やストレッチを提案した人もいましたが、十分な説明がないと、「自分たちの苦しさは、呼吸したぐらいで軽くなるものではない!」と、裏メッセージにとられる可能性が高くなると思います。
同じく、原始人や自分が経験した事故などの事例を出した人もいましたが(十分にその真意を伝えきっていないと)、今回のターゲットである間近で同僚を失った人々には、軽く扱われた印象になったかもしれません。
スライドのアニメーションや字体がかわいすぎると、これも軽く扱われた印象になります。

また、ホワイトボードに書く字やフィリップの字、グラフなどの図も、その人の印象を決めてしまいます。事前に予行し、自分で書いたものを受講者の位置から見て、印象を確認してください。線が細くぶれている図からは、安心メッセージが伝わりません。

惨事後ミーティング

どう回すか

参加者の発言を丁寧に聞こうとしていた姿勢が十分伝わってきました。ただ、多くの人が、どうしても1対1の対応になりすぎていたようです。

惨事後ミーティングは、個人の公開カウンセリングの連続ではなく、参加者全員の時間になるようにしなければなりません。一人の意見があれば、他の人にその意見に対する追加意見や追加情報を求めることが必要になります。
グループ全体で話題を進めている感じが薄かったように思います。
また症状の激しい人が現れた場合、その人のみに対応してしまいがちになったシーンもありました。個人対応を重視しすぎるとグループであることの意味が薄れます。個人対応は、その後の個人のケアに結び付け、そこでしっかり話を聞く体制をとりさえすればいいでしょう。

また、自責感や無力感、不安感などの重要な感情が表現された時、それに何の対応もせず、他の人や他の話題に振ってしまった(スルーする)場面も何回か見受けられました。たとえ事実認識の場面でも、少なくとも要約だけはするべきです。ファーストショックの症状を十分理解していないと、そのつもりがなくてもスルーしてしまうことにつながりかねないので、十分復習してほしいと思います。

どう進めるか

事実認識に使える時間を意識し、どこの部分に焦点を当てるかという意識が少なかったように思います。今回の場合、少なくとも事故の直前直後の各人の行動を焦点にするべきだったと思います。

例えば私なら、このメンバーと50~60分という時間で惨事後ミーティングをしなさいと言われたら、この時期にまつわる感情と身体反応の共有を図る時間を20分ほど確保し、事実認識の確認は40分ほどで済ませようと考えるでしょう。40分の中で、やはりまず事故が発生した場面を中心に話を聞きます。そこが最も情報などの混乱が生じやすいからです。その場面の話がある程度聞けたならば、らその前後に話を広げていくという手順を取ります。これが時間が限られる中でも効率よく事実認識の確認共有ができる手順でしょう。

もし事前の情報で話を聞く場面の焦点を絞りきれない場合(参加の経緯や、健康管理の問題や、事前の訓練管理の問題が一番大きなテーマなのか、あるいは現場で対処なのか、その後の会社での遺族に対する対応などが大きなテーマなのか等々)、まず最初に参加者全員に、今回の事故が個人にとってどのようなものでであったかを話してもらう場面を作ると良いかもしれません。何よりも柔軟さが大切です。

どう振り返るか

振り返りにおいては、暗かったという印象に左右されず、「惨事後ミーティングをやって、このグループに良かったこと」を明確に意識する(意識的に見出す)必要があります。

惨事後ミーティングは「やったことでかえって具合が悪くなる」ということだけは絶対に避けなければなりません。「こういう話が出て、こういうふうに流れて行ったから、その効果がこう出た」というふうに振り返ることができるようになりましょう。このミーティングをやらなければ、その後このグループがどうなっていったかを予測すれば、その視点で客観的に惨事後ミーティングを振り返ることができます。

またファッシリテーターは、事実認識や感情の確認段階の話を聞きながら、それぞれの参加者人がどのような事実あるいは感情によって苦しんでいるかを、しっかり把握できていることが必要です。そのような視点の振り返りは、実力を上げるうえで非常に重要な振り返りとなります。というのも、参加者の苦しみ(自責や不安や無力感や負担感)を具体的に把握することが、それをどのような対処によって低減させられるかを考える基礎となり、後半の展開や今後のケアに結び付けられるような戦略的な視点につながるからです。

惨事後ミーティングは、情報提供に比べ、一人で練習できないため、どうしても練習不足になります。今後協会も皆さんの練習の為の勉強会をもっと開催していかなければならないと認識しています。そのような機会があれば、ぜひ参加して実力を上げてください。

筆記試験

試験内容についてはほぼ皆さん理解されているようでした。
情報提供と同じ時間内の課題作業となりましたが、これは時間の使い方の練習にもなります。
実際に皆さんの作業を見ていたわけではありませんが、筆記試験の充実ぶりと情報提供のパフォーマンスを見ていると、作業に使える時間配分を誤っていたのではないかという危惧があります。
現場では、相手の集合時間等に合わせて、こちらの準備時間が限られることもあります。目の前の作業に没頭せず、相手の時間(ここでは情報提供の開始時間)に合わせて、自分の作業をコントロールすることも重要です。

追記
最後に、基礎講座の無力感対策のスライドを十分理解していない人が多かったように思います。もう一度良く理解し、覚えてください。



認定試験では、一つの惨事(ある企業における自殺)の事例にそって、組織に介入する際の「サポート戦略、組織に対する最初のブリーフィング、そして、グループに対するケアとして惨事後ミーティング」の3つの課題を実施していただきました。
 現場の雰囲気や対象者の反応は、サポートの経験がないとなかなかイメージアップしにくいので、このような課題に初めて接する皆さんにとっては、難しかったのではないでしょうか。
 しかしながら、本当にサポートに入るときはミスは許されません。
 その時に備え、今、できることをしっかりと身につけておくことは、「MR」にとって必要だと考えています。
 下に紹介するポイントは、合格、不合格にかかわらず受験者のほとんどの人が、まだ十分に実力がついていないと思われるテーマです。
 今後の活動のためにも、さらに学習、トレーニングを積んでいただきたいと思います。

サポート戦略

  •  惨事後に介入する目的を理解し、自分なりに目標を確立しましょう。
    • 組織は何を求めるのか、構成員は何を期待するのか、短いサポート期間で何ができるのか、サポート当日会社にいない人へどうフォローするのか(しないのか)、どの時期までフォローするのか、など幅広い視点で考えるようにしてください。
  •  ケア手段のそれぞれの利点、欠点を整理し、対象者にあう手段を選定しましょう。
    • 目的、目標の分析に基づき、いろんな手段を用いるのですが、その手段の特性(狙い、必要な時間、必要な人員、必要な手順、利点欠点)をよく理解しておきましょう。例えば、個別カウンセリングと惨事後ミーティングを特性に応じて、使い分けなければなりません。

ブリーフィング

  •  「同僚の自殺」という同じ体験をしていても、人はそれぞれ感じ方が異なることを意識しましょう。
    • 一気に多くの人に情報を発信するブリーフィングは、プラスも大きいのですが、裏メッセージにとられる可能性大きくなってしまいます。また、惨事後の時間経過によっても、どのような内容を提示するかは、刻々と変わってくるものです。もう一度、基礎講座で学んだ惨事後の反応を見直すとよいでしょう。
  •  ケアをする側の発言が、対象者にどのように受け取られるかにもっと配慮しましょう。
    • 基礎講座や上級講座でお伝えしている「メッセージコントロール」をさらに、意識しましょう。表情や態度、話すテーマ、話し方、言葉の選択など、メッセージコントロールの視点を常に忘れないようにしてみてください。また、表情や話し方などのトレーニングにも、一層努力していただくといいと思います。
  •  内容(伝えたいこと)を絞り込むこと。
    • 惨事後の方々は、本当に疲れ、頭がうまく働かない状態です。そのような人にどのような情報を提示するか、十分に内容を精査するべきです。パソコンを使った情報提供は、どうしても情報量が多くなりがちで、講座でお伝えした「項目教育」の弊害が出てしまいます。

惨事後ミーティング

  •  事実認識を話してもらう効果をよく理解してください。
    • 参加者にとって、どのような事実情報の共有が効果があるのかを、考えてみてください。この事例の場合、単に自殺現場の発見というショッキングな出来事ではなく、むしろその前後の情報(上司のいじめの有無、情報の隠ぺい疑惑、会社の対応、整備班の人の感じ方)などの方が重要になります。パターン化せず、常に柔軟に考える癖をつけましょう。基礎講座で勉強した内容も併せて復習するといいでしょう。
  • 全体と一人のバランスを取りながら、ミーティングを進めていく工夫を持ってください。
    • 一人の人が話をしている時、ほかの人の反応にも目を向ける工夫をしましょう。また、どうしてもカウンセラーと話す人の一対一の関係に終始しがちです。一人の発言を、ほかのメンバーに振るように練習してみてください。
  • 時間管理
    • 時間は、無限にあるわけではありません。個別でフォローすることも念頭に入れて、ミーティングを進めるような工夫をしましょう。
  •  対象者が聴きとりやすいような声
    • 惨事後は、どうしても参加者の声のトーンが低くなりがちです。カウンセラーまでそれにつられがちです。参加者はいつもより集中力がないので、ケアする側がしっかりと声を張って対象者に聴きとりやすいように話す必要があります。