MR協会について


これまでに公開されているアドバイス
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平成28年12月17-18日MRI認定試験における主任試験員講評
平成28年06月19日MRI認定試験における主任試験員講評
平成27年11月15日MRI認定試験における主任試験員講評
平成26年10月4日・5日MRL認定試験における主任試験員講評
平成26年5月24日MRL認定試験における主任試験員講評
平成25年10月5日・6日MRL認定試験における主任試験員講評
平成24年07月21日MRL認定試験における主任試験員講評
※メンタルレスキューインストラクター(MRI)は、平成26年度までは「メンタルレスキューリーダー(MRL)」の呼称を使用していました。
※平成24年度以前は、現行と異なる要領で試験を実施しておりました。そのため、アドバイスの内容が現在の試験にそわないこともあります。予めご了承の上、お読みください。

今回の試験について下園主任試験員より講評をいただきました。
皆さんの今後の参考になさってください。 
                                  2016.12.25 認定委員会

今回は、4名の方が挑戦していただきました。皆さんよく準備し、実力を上げて試験に臨んでくださいました。「試験で実力アップ」という協会の目的を十分に達成していただいていると思いました。
今後さらなる成長のために、主任試験員として気が付いたことをお伝えします。
                                   MRSI 下園壮太

1.介入目的調整面接

(ア)状況の特性をしっかり把握しよう

 全員、基本となるMC、自分の意図や考えをできるだけ表現しながら話を進めること、目標を設定し、ツールを説明することなどは、押さえていました。
 ただ、そのような項目を理解し、それを「たどる」ことは、MRCレベルでもできることです。
 MRIに求められるのは、現場に応じて、パターンをアレンジしていく力です。
そのためには、介入に影響しそうな要素をもれなく考察し、しっかり意識しておかなければなりません(個人上級で伝えている「バリア病E預金ミカタ」の項目が役に立ちます)。
 今回のケースでは、開店というイベントが、介入日の翌日に設定されていること、という大きな特性があります。これを理解すると「開店のために離職を予防しなきゃ」「店員は事故のことが気になっているだろうな」という介入目標につながる方向性も浮き出てきますし、「店長をはじめ、みんな忙しいだろうな」「直前に心を乱すことは避けたいな」と考えると「今回はできるだけコンパクトな支援をしよう」と、どう介入するかの方向性も想像できてきます。

(イ)白紙の調整案を準備しよう

 このように、特徴のある事故の場合、介入目的調整面接で、「何を」調整するべきかを、ある程度、心の中でリストアップしておく必要があります。
 例えば、事故の原因は?その後の安全対策は?けがをした人の様子は?その人に対する会社の支援態度は?などを知らなければなりません。
 また、そのような店員が今一番知りたいことを、店長に話してほしい、ということを依頼するチャンスでもあります。
 さらに、そのような支援をどのタイミングで、いつ、だれに対して、どこで行うかの実務的な調整もしなければなりません。
 1時間という貴重な時間を、有効に使うための準備を、もう少し丁寧にする必要があると感じました。

(ウ)ぜひ実際の介入に参加を

 受験者の中でも、比較的しっかり介入目的調整面接ができた方は、実際に協会の介入に何度か参加している方でした。
 勉強することも必要ですが、やはり、現場の空気を吸い、勘を磨くということは重要です。
協会の介入がある場合、ぜひ都合をつけて、参加して実力を上げてほしいと思います。

2.基礎講座講師

(ア)内容をもう少し深く理解しよう

 皆さん、練習の成果が伝わる良い講義でした。ただ、どの受験者も、苦手なスライドがあるようです。ご自分の苦手感は、すぐに受講者に伝わります。そして、そこを質問され、慌ててしまうという場面が何度か見られました。
 ぜひ、先輩方を活用し、徹底的にスライドを自分のものにしましょう。
 また、実技指導者、クライアント役などの場を活用して、基礎講座の内容をさらに復習しましょう。その時は、必ず受け身でなく「自分が教えなければならない」「こんな質問を受けたら、どう答える?」という意識をもって、聴講してください。

(イ)事例と比喩

 事例が上手な方もいましたが、なかなか説得力のある事例や比喩で説明できない方もいらっしゃいました。2つのポイントがあります。
 パターンの事例を使う場合(例えばクマに合う原始人や、川を渡る家族の事例)でも、受講者の興味をひくような、「語り方」を練習することです。間合い、強弱、声質の変化。例えば、ラジオ劇や、絵本の読み聞かせなどが、参考になると思います。
 もう一つは、事例の選定方法です。
 何も自分の事例でなくても、小説や映画の話、新聞で見た記事の話、他の人から聞いた話などを、伝えたい内容の方向でアレンジして伝えればいいのです。
 事例には、事例の持つ力があるので、あまりにもインパクトが強い事例だと、「伝えたいこと」が逆にぼけてしまうこともあります。
 事例も比喩も、伝えたい思いではなく、「どう伝わるか、伝わったのか」の方が重要です。MCと同じですね。どう伝わるのかを確認するには、先輩や同僚に話して、フィードバックをもらう必要があります。ここでも、ぜひ先輩方を活用してください。先輩方も、同様に支援してもらって合格しているのですから。

今回の試験について下園MRシニアインストラクターより講評をいただきました。
皆さんの今後の参考になさってください。 

                    2016.06.21 認定委員会

平成28年6月19日に実施したMRI試験には、3名の方に挑戦していただきました。
いずれの方も、十分に準備して実力を上げてくださっており、大変高いレベルの試験になりました。
 とくに基礎講座の課目講師については、3名ともご自分の経験や個性を生かした講義を実施していただき、すぐに協会の基礎講座の課目講師ができるレベルであることが確認されました。
 その一方で、介入目的調整面接では、いくつかの改善すべき点が見られましたので、お伝えしたいと思います。

(1)クライアントの一番のニーズに応じた面接の進め方をするべき

 介入目的調整面接の目的は、支援を効果的にするために、

  1. 専門家として、支援先の主要な方の信頼を得て、安心感を持ってもらう
  2. 支援先のニーズを把握し、介入目的を合意し、最適な支援メニューを決定する

ことです。
 今回は、テレビ局内の死亡事故に際し、ショックを受けて職場に出てこられない女性アシスタントの復活を最も重視しているプロデューサーと、自分のデザイン・指示のせいで事故が起こったと思っている技術デザイナーが、面接対象でした。
 受験者の中には、一般的にはこのような事故後には有効なケアとなる惨事後ミーティングや、全体の活力低下を測るアセスメントを勧めた方がいらっしゃいましたが、今回のクライアントの場合、まずは、女性アシスタントの復活のための方法論を提示し、アドバイスすることの中で、共通の目的意識を確立し、信頼を得ていくべきでした。
 今回の試験では、どうしても、受検者自身のこれまでの価値観(例えば人事の経験、医療現場での経験、これまでの介入や訓練の経験)で、無意識のうちに「こうあるべき」と感じている方法論を提示してしまったようです。
 受験者は、無意識のうちにのこのようなバイアスが自分の中に発生することにも気が付いておくべきです。

(2)クライアントの心理状態をもっと想像、察知する必要がある

MRIには、自分が正しいと思うことを、上手に説得力を持って説明する力が求められます。
 そのようなパワーのある説明は、事例、比喩、単純理論を使うことがポイントとなりますが、その点は、まだどの受験者も改善の余地がありました。
また、提案した支援メニューにクライアントが難色を示した時、

  1. さらに説得力のある説明をすることによってクライアントの考えを変え、専門家としてのクライアントの信頼を得るか もしくは、
  2. クライアントの意見を尊重して(変わらなくていいよM)メニューを変えるか

のどちらに進むかは、重要な選択となります。
1で説明したMRIの「こうあるべき」という価値観が強い場合、どうしても1の方向で説明を続けてしまい、MRIの思惑とは逆に、信頼を失ってしまうことになりかねません。
 そうならないためにも、自分の説明だけに意識を集中せずに、クライアントの心理状態を全力で想像しつつ、相手の発言や表情を正しく読み取る練習をもっと積むべきです。

 メッセージコントロールは、5ステップ、要約質問のスキルから学びます。CPS,MRCレベルでは、このような表面的なメッセージコントロールのスキルに意識が向くでしょう。しかし、MRI以上は、今相手との交流の流れの中で、相手のメッセージを読み(理解し)、どのようなメッセージの交流をすればいいのかを考えながら、自分の反応すべてをコントロールしていかなければなりません。しかも、今回のように相手が二人以上の場合、複数の方の心理状態に配慮しなければならないのです。
 メッセージコントロールは、このように奥が深いスキルです。日常のコミュニケーションの中で、このことを意識し、常にスキルアップを図っていただきたいと思います。

(3)資料を効果的に使う

 介入目的調整面接では、クライアントに様々なことを説明し、理解してもらわなければなりません。それは、ある意味クライアントに負担を強いることでもあります。
 そのプレッシャーを少しでも軽くするためには、相手が簡単に理解できるような説明をすることを心がけるべきです。
 今回は、とてもよい資料を準備した受験者がいましたが、この点はほかの今後の受験者も参考にするといいでしょう。
 ただ、その資料の情報量が多い場合、口頭での説明を聞くことと、資料を読むことの2つの作業を同時にクライアントに強いることになるため、それもまた違う負担を強いることになります。
 口頭説明と資料をどう組み合わせれば、より効果的な支援になるかを考え、さらに研鑽練習していただきたいと思います。

(4)カウンセリング能力を磨く

 基礎講座の課目講師については、協会が提供する様々な機会、例えば実技指導者、クライアント役、基礎講座体験会などで研鑽を積むことができます。
 今回の受験者も、これらの機会に積極的に参加してくださっており、その成果は十分に発揮されていると感じました。
 その一方で、介入目的調整面接は、なかなかトレーニングの場を見つけることが難しいのです。
 MRIは、難易度の高い状況での単独でのカウンセリングや、介入ディレクターとして介入目的調整面接の実施役を任されることになりますます。
 受験者の皆さんには、ぜひそのことを自覚していただき、介入目的調整面接のトレーニングや、カウンセリング自体の能力の研鑽を積極的に積んでいってほしいと思います。(例えば上級講座(個人Ⅲ)を活用したり、勉強会を自ら主宰することも有効だと考えます。)

今回の試験について下園MRシニアインストラクターより講評をいただきました。
皆さんの今後の参考になさってください。 

                    2015.11.23 認定委員会

1 介入目的調整面接
 メッセージコントロール、特にファイブステップや盛った要約などにより、短時間に味方になることはできていました。受験者が日ごろから鍛えているカウンセリング力の高さを感じることができました。
またツールの説明や目的調整に必要な内容についての理解は十分だと感じました。
ただ2点、注意していただきたいことがありました。

(1)誰を中心に話を進めるか

 一つ目は、誰を中心に話を進めるかです。
 今回は、事件に直接かかわっていた現場担当者と、その上の部長の2名に対する介入目的調整面接でした。
この場面で、どうしても現場担当者に関心が向きすぎたように思います。面接の冒頭から現場担当者に対する配慮をし、その体験を細部まで聞く手順に進んでしまいました。
 もし、相手が現場担当者一人なら、その手順で問題ありません。
 ところが今回は、さらにその上司の部長がおり、実質的な調整相手は部長のほうです。
現場担当者に事件の細部を聞いていくと、その間どうしても部長がないがしろにされているような感じを受けますし、体験を聞くことの意味を知らない上司にしてみれば、部下が事情聴取されている(部下に苦しい思いをさせている)ような感覚に陥っても仕方がありません。

 現場担当者への対応が主になってしまったのは、知らず知らずのうちに惨事の個人カウンセリングのパターンを進めてしまったのだと思います。受験者が、実際にカウンセリング現場を持っている方ばかりだったので、どうしてもクライアント的な相手への配慮が無意識のうちに優先されたのかもしれません。
 私なら、軽く現場担当者への配慮を示したのちに、部長を中心に話を進めます。その中で、惨事の症状などを説明する際、現場担当者に「○○さんは、そのようなことはありませんでしたか」とお尋ねします。その中で必要なら最小限の事実認識の確認をします。
そのような聞き方をすれば、ケアの目的調整をしているという流れの中で、現場担当者の苦しさを部長にもわかってもらえる良い機会にもなります。

 その後のツールの説明の際も、目的は部長に、そのツールをやる場合の当事者の「痛さ」は現場担当者に確認しながら、介入メニューを決定していく手順をとるでしょう。
今回の状況のように、現場は練習や事前想定とは異なる状況が生起します。「練習」はとても重要なことですが、常に何を何のために練習しているのかを意識し、現場ではパターンに陥ることなく、柔軟に対応できるように努力していきましょう。

(2)時間の使い方

二点目は、時間の使い方です。
 目的調整面接を終了したら実際に介入に入ります。その為には、この面接で最低限何を合意しなければならないかを考えながら、面接を進めていく必要があります。
 あるテーマを調整するには、それなりの時間が必要です。例えば実施内容とタイムスケジュールを決定しようとするなら、

  • 全体への介入の説明(挨拶):誰が、いつ、どれぐらいの時間
  • 使える部屋の確認:全体挨拶、個人カウンセリング、惨事後M・ 情報提供用
  • 個人カウンセリング:人数、時間、選定方法、案内方法
  • 惨事後ミーティング:参加者の決定方法、根回し相手
  • 情報提供:対象者、時間、回数等
  • アンケート:実施の有無、どのテスト、記名無記名、回収方法、フィードバック方法

などを決めていかなければなりません。
このことを踏まえて、提示された面接時間を効果的に活用することを意識して面接を進めていってください。

2 基礎講座課目講師
 どの受験者も、とてもよく勉強されていました。中にはご自分なりのコツを上手に紹介してくれた受験者もいらっしゃり、自分理論になっている感じがしました。
 ただ、すべてのスライドの説明が完全というわけではありません。
 自分の不得意(まだ借り物理論レベル)なスライドの説明は、どうしてもあっさりしたり、声が小さくなってしまいます。
 大変なことですが、試験は自分の実力を高めるとてもいいチャンスです。妥協せずに、自分理論になるまで、先輩や上級資格者に質問し、理解を深めておいてください。

 また、自分の担当部分が終わったことにより、安堵してしまい集中力が切れ、その後の質問にうまく答えられなかった方がいらっしゃいました。講座では、質問に答えることは、とても重要な仕事です。
 水泳の北島康介選手は、ゴールして振り返って、時計を確認するまでが試合だと考えているそうです。ゴールした時点が終わりだと思っていると、無意識が最後に力を抜いてしまい、タイムが伸びないそうです。
 講師の場合、質問を受けるところまでが、私たちの大切な試合なのです。

今回の試験について下園MRインストラクターより講評をいただきました。
皆さんの今後の参考になさってください。 

                    2014.10.6 認定委員会

1 介入目的調整面接
今回は、ホテル内での殺人事件に際し、事件1週間後に1日だけ入るという危機介入の想定でした。目的調整面接は、1時間後から開始されるケアについて、しかも、これまで調整してきたホテルのオーナーではなく、その妻と調整するというシチュエーションです。

(1)MRLとして今回の惨事の後に起こりうる事象をどれだけ想像できるか

惨事後のケアを要請される場合、要請者は「とにかくケアをしてくれ、とにかく何とかしてくれ」と言うだけで、具体的なイメージは持っていない場合が多いものです。しかも、今回は、ホテルのオーナーと、奥様の関心事項が異なっています。
このように、人や状況によってケアに対する要求は異なってきますが、いずれにしても、ある惨事でどのようなトラブルが生じ得るかを、どれだけ具体的に予想できるかが、ポイントになります。
例えば、今回のケースであれば、

  • 職員が、ホテル、特に事件があった部屋に近づけなくなる
  • 職員からうわさが広がる、あるいはインターネットなどで、風評被害が広がる
  • 一時的な感情で、仕事を辞めたくなる
  • 知らない間に関係者がイライラし、相互の信頼関係が崩れる
  • 罪悪感から、事件との関係を過剰に考えてしまう
  • 子供や女性が特に強く影響を受ける
  • 一般のお客さんに対しても、恐怖心を持つようになる
  • マスコミから狙われ続けると、何か悪いことをしているような感じがしてくる
  • マスコミに対応すると、インターネットなどで不必要に叩かれることがある。

等を予測できます。これらの予想を介入を要請した方の関心に合わせて提示しながら、介入目的や介入要領を確定していきます。

(2)展開力を発揮する

 1時間後にケアが始まるという状況の中で、「味方になる」と、「必要な調整する」を両立しなければなりません。当然味方になることから始めますが、ずっと話を聞いているだけでは、結局何も調整しないままケアに入ってしまい、ケアが終わってから「予想していたケアと違った。もっとほかのことをしてほしかった」などと言う結果に終わってしまいがちです。

 味方になるための話題で話を聞きながらも、自然な流れで必要な調整に入れるような展開力を磨く必要があります。具体的には、話題を調整に関わる「質問」につなげるのですが、当然、流れが変わるので、メッセージコントロール講座で学んだように、質問の前後に適切な「質問の背景説明」を加えることが必要です。

2 基礎講座課目講師

(1)時間配分

 今回は、時間配分が不十分だったように思います。受講者とのコミュニケーション、受講者が理解できるゆっくりした話し方に気を付けていたのはとても良いことですが、結果として、持ち時間の間に指定された内容を終了できなくなりました。
 与えられた範囲の中で軽重を適切に判断し、重要な内容は、事例や比喩で厚く説明し、軽微な内容は、思い切って軽く説明する勇気が必要です。

(2)話し方の適切な「変化」

 ゆっくり、はっきり話すのは良いのですが、良い話し方でも、それが続くとなんとなく飽きてきます。スピード、声の大小、事例やユーモア、間を入れる、受講者と交流する、質問形式にするなどの変化を持たせる練習をしてください。

(3)質問の受け方

 まず、質問者の質問を「要約」、つまり繰り返すといいでしょう。
質問の真意に的確に答えることができますし、他の受講者にも質問の意図が伝わるための配慮にもなります。
 質問へ対応する様子は、講師のカウンセリング力を想像させます。質問の内容に正確に答えることだけを考えず、メッセージコントロールを第1に意識してください。

(4)印象コントロール

 講師にはそれぞれ、いわゆる第一印象があります。MRLは協会の顔でもありますので、少々てきぱきすぎた印象や少し緊張している印象の場合、受講者がよりリラックスして講義に集中できるような、より柔らかい印象にする努力を続けていく必要があります。
 例えば、自然体の笑顔、自分の内面(ダメな部分、弱い部分など)を打ち明ける、ユーモアを交えるなど、自分なりの工夫を続けてください。

今回の試験について下園MRインストラクターより講評をいただきました。
皆さんの今後の参考になさってください。 

                    2014.5.28 認定委員会

■基礎講座(課目講師)について~講義における内容の強調法~

講義では多くの情報を伝えなければなりませんが、受け取る側のキャパシティを超える情報を提供しても、結局未消化となり、むしろ不全感を持たれてしまいます。
 講師としては、今回の講義では、「最低限ここだけは分かっていただきたい」という内容をある程度限定し、そこをしっかり伝えていかなければなりません。しっかり伝えるためには“強調”することが必要ですが、ただ「ここが重要です!」と言うだけでは、強調したことにはなりません。
それには次のようなことに気を付けると良いでしょう。

  • 強調したい内容には、事例、比喩をつける。
  • クイズ形式、短い討議にするなど、受講者に問題意識と緊張感を持ってもらう。
  • 時間をおいて何度か触れる。
  • その部分をまとめたペーパ―等を渡す。
  • メッセージコントロールで、それ以外の部分との差を印象付ける(目線の配り方、声の大小、話し方のスピード、間、表情、要約・質問などの変化など。特に事例を話す時は、テンポの良い語り口、例えば体言止めの多用などを練習すると、臨場感が増します。)

 MRLを目指す人にはまず、①の事例・比喩を使い、⑤のそれまでと違う話し方をする練習を積んでもらいたいと思います。ラジオドラマやナレーター、落語家などの話し方は参考になります。

今回の試験について下園MRインストラクターより講評をいただきました。
皆さんの今後の参考になさってください。 

                    2013.10.15 認定委員会

今回からMRL試験は、介入目的調整面接と基礎講座(課目講師)の2課題になりました。

1 介入目的調整面接

介入目的調整面接は、介入チームと要請した組織との共通の目標や、具体的な介入(支援)内容を決めるための面接です。
介入を要請した組織は、惨事の特性や介入についての基本的な知識を持ってない場合が多いので、MRLが主体的に情報提供しながら進めなければなりません。
しかしながら一方で、この面接の相手は、通常自分自身も惨事で参っている人である場合が多いのです。
つまり、イライラし、対人恐怖を持ち、不安が強く、焦っており、理解力も低下しています。
そのような人に対し、カウンセリングのスキルを活用しながら上手に情報提供をすることが求められます。

介入目的を調整する時の手順は、まず自分の中にある程度の目標値や具体的ツールのイメージを持ってことです。
例えば事前情報から、女性の多い職場であること、支店長も女性であること、現場が支店の目の前であり事故に関する情景や音を直接聞いた人が多いこと、Aさんが未だにICUに入ってることなどから、 ファーストショックが大きいことが予想されます。またその後たまたま営業のピークを迎え、業務が逼迫していることから、セカンドショックに対しても注意が必要であることが想像できます。

さらに支店長に対するイライラ感が募っていることから、情報提供の不足や、疲労のコントロールが不十分であることなども予想されます。
これらの状況の特質から、介入メニューを一応考察しておき、その白紙的なメニューが正しいかどうか、どう修正していくかを支店長との面接の中で1つずつ明らかにしていくのです。そして面接を通じて、介入に対する期待値(目標) についての共通認識が持てるようにしていきます。
ただこのような作業をするときの一番のコツは、 CPSの試験と同じように「味方になる」ことです。
極論すれば、支店長に対するカウンセリングが成功すれば(味方になりさえすれば)、「この人に任せても大丈夫だろう」という印象を持ってもらい、提案するメニューも受け入れもらいやすくなります。当然その後の介入自体も容易になります。
しかしながら今回の試験では全般的に上手に味方になりきれていないように見受けられました。
次のような点に気をつければいいでしょう。

  • (1)単なる説明の押し付けにならない
    • 「どういうことをしてくれますか」と質問されると、自分が準備したメニューやその必要性を論理的に述べようとしてしまいます。しかしここでまず必要なのは相手のニーズを確認することです。そしてこちらのメニューを押し付けるのではなくメニューを「共同で作り上げる」と言う姿勢を強調します。相手に選択の負担感を与え過ぎてはいけませんが、かといって全てこちら側の思惑で進めるというのは、不安の強い相手には抵抗感を持たれてしまいます。「われわれはこういう経験値を持っています、だから概要を聞く限り今回のメンタル上の問題点はおそらくこういうことだと思います、あなたのお困りのポイントに対しては、こういうツールで支援することができます、さてどうしましょう」という流れで進めていくと良いと思います。
  • (2)説明より体験談(事例)を先に語る
    • 論理的な説明は、頭の回らず、不安の強い相手にはなかなか受け入れてもらえないことが多いと思います。
    • まず事例を語ることが重要です。例えば今回の試験のようなケースでは、「このような事故の後のリーダーは、やはり皆さんとても自分のことを責めてしまう傾向があります(あなただけではないですよM)、過去にお手伝いした組織のリーダーもこんなことがありました…。」自責を「症状」として説明するよりも、他の人でもそうだという情報を与えたほうが、本人はより安心します。さらに「そのようにいろんなケースをサポートしてきた人たちなんだな」という、介入チームに対する信頼を感じてもらうこともできます。
  • (3) カウンセリングと説明のバランスを適切にする
    • カウンセリングは重要だからといって、 惨事対応のようにあまりにも体験を詳しく聞きすぎると、本当に個人のカウンセリングになってしまいます。時間があり、相手が1人の場合は個別のカウンセリングになっても構わないのですが、相手が複数いる場合や時間に制限がある場合などは、介入目的の調整や提案の方にも時間を取らなければなりません。
    • そこで、事件の概要だけを聞き、後は介入目的挑戦面接をする段階、例えば情報提供や惨事後ミーティングというツールを説明する流れで、「先ほど支店長が、部下のみなさんが自分のことを信頼していないのではないか、とおっしゃってましたが、例えば、あの時、支店長さんがどんな思いをして、どんな狙いを持って、どういう行動をされたか(これまで聞いた具体的な内容を要約する)を、例えばこのミーティングで具体的に説明してあげると、皆さんの不信感もだいぶ緩むのではないでしょうか」などとケア的な要素を含めて説明をしていくのです。
  • (4) メッセージコントロールをさらに磨く
    • 説明もしなければならないという面接なので、どうしてもそのことに意識が向き過ぎ、これまで学習してきたメッセージコントロールが十分に表現できていない人が多かったようです。
    • 頷きのタイミング、要約・質問など基礎的なことをもう一度確認して、しっかり味方になれるようなメッセージコントロールスキルを身に付けましょう。説明はどうしても裏メッセージに取られやすくなるので、がけ崩れ対策も、こまめに、早めに実施できるように気をつけましょう。

2 基礎講座(課目講師)

かなりよく練習しており、内容についての理解もほぼ出来ているという印象を受けました。
ただ、講師が理解しているだけでは不十分で、いかに受講者に伝わるかが問題なのです。次のことに気をつけていただきたいと思います。

  • (1)リハーサルを実施すること
    • 理解するための勉強(インプット練習)はかなり進んでるようですが、アウトプットの練習が不十分なようです。例えば実習を伴う基礎講座では、実際に実習を回してみると、時間管理を筆頭に様々なところに工夫が必要になりますが、そのような実際の練習(リハーサル)ができていなかったように思います。
    • また事例や比喩を使うことは、とても有効な説明のためのツールなのですが、自分では理解していても、相手にどのようにその事例や比喩が伝わるかは、実際に何度か、いろんな人に試してみる必要があります。思わぬ理解をされることがあるからです。
  • (2) ここでもメッセージコントロール
    • 内容+印象が講師の実力だと思ってください。表情や態度、言葉づかいはとても重要です。
    • また、試験ではどうしても緊張してしまうでしょうが、実際の講座(本番)でも緊張するものです。自分で緊張を、ある程度コントロールできることも、講師としての重要なスキルです。

上半期のMRL試験に関して、受験者に共通するテーマについてアドバイスします。

基礎講座講師について

1 内容のより深い理解を

一生懸命説明しているのですが、どうも、受講者に内容が伝わってこないことがあります。大きく2つの理由があります。
ひとつは、内容を十分に理解していないため、いわゆる「借り物理論」にとどまっている場合です。自分でも、自信がないために、言葉に迫力もなく、事例や比ゆを使っても、説得力が伴いません。
実技指導、課目講師、勉強会などを通じて、積極的に主任講師等に質問をして、理解を深めてください。
せめて、自分自身が納得できる「自分理論」にまでは深めておかないと、人には伝わりにくいのです。
更に言えば、自分理論だけでは、自分には説得力が有っても多くの人に伝わりにくいことがあります。出来るだけ多くの人に伝わりやすい理論、つまり一般理論として説明することが必要です。
たとえば、原始人の比ゆなどは、自分にはピンと来なくても、惨事場面で多くの人に理解してもらいやすい一般理論なのです。ですから「私には苦手」とあきらめずに、必死で勉強して、納得できるところまで理解しておいてください。

また、試験では1課目の実技だけですが、その後の試験員との質疑応答で、MC・惨事対応、自殺企図対応のすべての範囲で、重要と思われる要素がいくつか質問されます。準備した担当時間は何とかこなすことができても、それ以外の内容については、理解が極端に低いような気がします。MRLは、基礎講座の主任講師になれる資格です。全般に関して、深く広く理解しておいてください。
(実際には、試験に合格したからといって、すぐに主任講師をすることはありません。もう少し経験を積んで、慣れてから主任講師として活躍してもらうのが普通のケースです。)

2 前後のつながりや全体性を意識し、それを説明する

伝わりにくさのもう一つの原因は、今説明しているスライドの全体における位置づけを十分把握・説明していないことです。
自分で教育内容を決めてスライドにしたものなら、説明の流れや、前後のスライドの意味、つなぎの言葉などが、自分の中に自然に存在しているはずです。ところが、基礎講座では協会指定のスライドを使います。前後のスライドのつなぎ、今の説明は2日間の講座のどの部分で、次のどの説明・実習につながるのか、など、全体性を常に意識しておく必要があります。
また、ただでさえ短い時間に多くのことを伝えようとする基礎講座では、スライドの枚数がもともと多いのです。受講生もスライドそのものは理解できても、それが前後とどう関連するのかを見失いがちです。受講生の理解を容易にするには、スライドの一つ一つに、「今このことを説明しています、次にこれを説明します、この説明は、前のここと関連しています」などというように、全体の位置を繰り返し提示しながら解説を進めていくことが必要です。

3 事例・比ゆの使い方

事例や比ゆの使い方で、印象が大きく変わります。
事例や比ゆは数多く取り入れればいいというものではありません。事例や比ゆは、その素材が持つメッセージが強く出てしまい、本当に言いたいことが逆に薄れてしまうことがあります。「とても興味深い事例だったけど、何を言いたかったのだろう…」となってはいけません。
ぜひ、講義で使うまでにいろんな人に試してみて(予行)、自分の意図する方向の説明に使えるのかどうかを確かめておくといいでしょう。
また、事例は落語のようなものです。同じ落語でも、師匠が語るのと新人が語るのでは、面白さや臨場感が違う。事例を思いついたことだけで安心せず、事例を上手に(効果的に)語るためには、相当の練習が必要だということを肝に銘じてください。

4 受講者への配慮

上級講座(情報提供)でも強調しましたが、メンタルレスキュー協会がわざわざ情報提供をトレーニングするのは、クライシス場面(惨事、自殺企図)では、我々の情報提供が、それを受ける人を傷つけてしまう可能性があるからです。
つまり、この説明、この言い回し、この表現、この表情、この事例、この比喩、質問に対するこの反応が、受講生を傷つけないか…裏に取られやすくないか…、という視点を常に持っておかなければなりません。
ただ単に低姿勢で丁寧、あいまいに説明すればいいというものではありません。頼りがいのあるプロという印象も与えなければなりません。
試験を受ける前には、気の置けない仲間たちを相手に予行的に説明練習を行い、自分の説明がどのようなメッセージを与えがちなのか、苦しい人(惨事・うつ)の人にどのように受け取られやすいのかを、フランクにフィードバックしてもらうといいでしょう。
一般的なテーマでは上手な講師、楽しい講師と言われる内容でも、MRLの試験としては、評価が低い場合もあるのです。

惨事後ミーティングについて
惨事後ミーティングは、現在の試験では、1時間の実技試験になっています。理屈だけの勉強では、ごまかしが利かなくなっています。何とか勉強会などの場を見つけて、実技練習を重ねてください。

惨事後Mでも、構造化はされているものの、何のためにこのミーティングをやるのかという目的に応じて、柔軟に対応する必要があります。話を聞くうちに、初めに認識していた目的が変化するかもしれませんが、とにかく「このミーティングで、少しでも楽になってもらえる」「このミーティングで、今後の仲間の崩壊を防ぐ、出来れば助け合いの雰囲気を助長する」という方向に向けるようにミーティングを導く必要があります。

構造を進めることは、この一番重要な“目的”ではなく、単なる“手段”に過ぎません。
また、なんとなくうまく行っていない雰囲気のとき、PTSDの不安を掻き立ててミーティングの意義を強調(言い訳)するのも、多くの場合自分を守ろうとする行為なので、惨事後M実施の目的とは関係ない行為になります。
常に、目的意識を忘れないようにしてください。

また、どうしても暗い話が続くので、カウンセラーのほうの自責感が刺激され、申し訳ないことをした、うまく行かなかったとネガティブな発想をしがちです。
MRLは、メンバーが実施した惨事後Mのスーパーバイズをすることもあります。そんなときは、ミーティングをやってよかったことを、しっかり認識できる視点を持たなければなりません。