2019年度(令和元年度)CPS認定試験における主任試験員講評

2019年度(令和元年度)CPS認定試験における主任試験員講評

令和元年7月13日・14日(仙台)、15日(福岡)、20日・21日(東京)における主任試験員講評

CPS認定試験を受験された皆さん、お疲れさまでした。
今回は、東京、仙台、福岡の3か所で同じシナリオで試験が実施されました。それぞれの主任試験員の講評を西川が取りまとめました。
それらを以下にコメントいたしますので、今後の参考にしてください。
MRインストラクター 西川あゆみ
 
1.メッセージコントロール
5ステップについては、ほとんどの方がご自身の課題(苦手なところ)を意識して努力されてきたことが伝わりました。特に「驚き」や「興味津々」に関しては、多くの方がしっかり表現できていたと思います。
しかしながら、CLの自責に関しては「保留」せずにうなずいてしまう方もいましたし、図を描く場面でも、ずっと下を見ながら浅いうなずきをしている方がいて、残念に思いました。
反面、図を描きながらも、Bさんが倒れた場面やCLが自責を語っている場面で、書いている手をおろし、CLの顔を見ながら大きくMCを表現している方もいて、素晴らしいなと感じました。
ほぼ全員に共通していたのは、盛った要約が少ないという点です。CLは普段の仕事だけでなく、月末の研究会に向けての準備をする中、同時並行で町内会の防災係として避難訓練の準備もしており、何事にも真面目に取り組むAさんの様子が伺えます。そんな中、30年近くも頼りにし、お世話にもなっていたBさんが目の前で倒れ、残念ながら亡くなってしまった。まだ2週間しかたっていないわけですから、大きなショックからBさんが倒れる場面を夢で見て眠れなくなっていてしまうのも無理もないことです。でも研究会は迫ってくるし、準備をしなくてはと気持ちは焦るものの仕事が手につかない・・・そんな状況を10分間で聴いたのですから、簡単な要約ですぐに図を描くのではなく、まずはひとつひとつのことに対し、丁寧に盛った要約を行い、しっかりと味方になっていただきたいと思います。
 
2.体験を聴くということ
受験者全員が、「CLの体験を丁寧に聴いていく」ということを意識しておられたと思います。中には、体験を聴く理由をCLに説明してから始める方がいて、CLへの配慮が感じられました。
また、CLが(CLの視点を通して)感じた情景・音・臭い・感触などの体験を教えてもらうことで、CLの苦しさの背景を理解し、共感する、ということは皆さん理解しておられたと思います。
しかしながらもう一つの目的である「体験を聴きながら、痛いところをゆるめる情報を確認して、配慮して触る」ということが忘れがちになっている方がいらっしゃいました。
その視点で見ると、「10m手前あたりで倒れた」という情報を聴いた時、「近いですね」と言うのか、「10mも先で」と言うのか、伝え方が変わってくると思います。
聴く範囲も重要です。今回、ほとんどの方が事故当日に家に帰るまでをだけを聴いて、そのあとのお通夜や葬儀の様子、カウンセリング当日までの過ごし方などを聴くという視点が抜けていたように感じました。体験を聴く時は、当日から今日までを丁寧に聴いたうえで、必要があればそれ以前を聴いていくとよいでしょう。
また、途中でCLから症状の説明を求められた場合も、不安なCLの気持ちを受け止め、安心情報を提供したら、また体験の確認に戻ることを意識しておきましょう。
図を描くこともメッセージです。多くの方がBさんがどこで倒れたのかを確認する前に、図を描き始めていましたが、CLと関係する人の位置関係を聴いてから書き出すと、大きなズレを防ぐことができます。
中には、手元ばかりを見ていてCLを見ていなかったり、図が小さくてCLから見にくかったり、何度も向きを変え、CLが何を見ればいいのかわからない、という方もいました。図を描くことはCLとCOの共同作業ですので、CLの顔を見て表情を確認しながら「一緒に作り上げていく」ことを意識しましょう。
惨事反応のグラフを書く時も配慮が必要です。2週間後で反応が残っている人に対し、1週間のところに線を引きながら「1週間で半分くらいに落ちます」という説明は、CLにどんな印象を与えるでしょう?また、落ちてくるグラフの最後が上がっている方もいました。些細なことですが、エネルギーの低いCLを傷つけないよう、グラフの書き方も練習しましょう。
 
3.自責の扱い方
CLが話をする中で多くの自責が語られました。特にBさんが倒れた場面での自責に対し、多くの方が疑問・保留で応答し、しばらく話が進んでから「他の方を誘導していてすぐに行けなかった」という部分に盛った要約で対応されていました。それも間違いではないのですが、せっかくCLの自責をゆるめることができるかもしれないチャンスを逃してしまっています。
中には、「自責を軽くしてあげたい」と思うがあまり、「あまり自分を責めないでください」と何度も繰り返し「変われ」メッセージになってしまう方もいました。
今回、お一人だけ誘導係としてすぐに駆け付けることができなかった状況を盛っただけでなく、「駆けつけたかったですよね・・・」とCLの思いを言葉にされた方がいらっしゃいました。正にCLの心情に寄り添う素晴らしい応答だったと感じました。
自責は0にする必要はありません。配慮しながら触れ、寄り添うことも重要だということを覚えておいてください。
 
4.症状説明
今回の試験では、多くの方が原始人の比喩、ボールの比喩、事例、ストレス軽減の曲線などで説明を試みていました。ところが使い慣れていない比喩や事例では、CLの症状とのつながりが分かりにくく、CLが戸惑っている様子が見受けられました。中には、そのCLの戸惑いに動揺し、分かってもらおうと強引に説明を続けるケースもありました。
事例や比喩をCLがわかるように説明するためには、他の人が理解できるかどうか、第3者に聞いてもらい、フィードバックをもらいながら説明のスキルを上げていきましょう。
特に事例は非常に効果的なツールです。是非、状況に合わせて事例を出せるよう学習を続けていってください。

令和元年12月7日・8日(東京)、12月21日・22日(福岡)における主任試験員講評

CPS認定試験を受験された皆さん、お疲れさまでした。
今回は、東京、福岡の2か所で同じシナリオで試験が実施されました。それぞれの主任試験員の講評を前田が取りまとめました。
それらを以下にコメントいたしますので、今後の参考にしてください。
MRインストラクター 前田理香
 
1.メッセージコントロール
 5ステップについては、受験者の皆さんそれぞれがご自身の課題を意識し、修正したうえで試験に臨んでおられました。特に多くの方が「興味津々」や「了解」で大きくうなずき、「驚き」の表情でCLのショックを理解しているということを表現していらっしゃぃました。
 しかしながら、「大きく表現する」ことを意識するあまり、「私が手を離してしまったから」という自責の場面でも、つい大きくうなずいてしまったり、盛らずに繰り返してしまい、CLの自責を強めてしまった方もいらっしゃいました。
 焦らず、しっかりCLの話を聴いてから、適切なMCを出すようにしましょう。
 
 多くの方に見受けられたのが、直Q質問です。「どんな夢を見るんですか?」「睡眠はどれくらい?」「食事は?」「何時に寝て何時に起きるんですか?」など、先を急ぐあまりCLへの気遣いや質問の意図が理解できるような要約が足りなかったように感じました。
 
 また、緊張のせいか「CLの言葉をそのまま繰り返す」方が目立ちました。惨事のCLに対して言葉をそのままに繰り返すと、それはCLの苦しみを大きくしてしまいます。例えば、「足がすくんで動けなかった」とうCLに「足が動かなかったんですね」と繰り返したり、「手を離さなければよかった」というCLに「手を離さなければ・・・」と繰り返したらどうでしょう?CLは「やっぱり私のせいだ」と、より自責を深くしてしまいます。緊張した状態でも「ただ繰り返す癖」が出てこないよう、「盛った要約」や「代弁要約」を磨いていきましょう。
 
2.体験を聴くということ
 受験者全員が、「CLの体験を丁寧に聴いていく」ということを意識しておられたと思います。
 体験を丁寧に聴くことで、CLが(CLの視点を通して)感じた情景・音・臭い・感触などの体験を教えてもらい、CLの苦しさの背景を理解し、その辛さ苦しさに共感するために体験を丁寧に聴くのです。そのためには、あっという間に子供が手を離して走って行ってしまった様子や、車のクラクションやブレーキ音、それを聴いてCLがどう行動したのか、できなかったのか、切迫した状況がCOに伝わっているということを、要約のスピードで表現することも大切です。
 
 聴く「範囲」や「順番」はどうすればいいのでしょうか?
 今回は、最初の10分間のシナリオの中で、8月くらいから体調が悪いこと、3週間前の事故のこと、10年前の転職のこと、昨年4月の開業のこと、今年の4月に子供が小学校入学したことなど、多くのことが「ざっくりと」語られましたので、焦点を当てる部分について迷った方もいらっしゃったのではないでしょうか。
 そんな中多くの方が事故当日の公園での出来事からこれまでどう過ごしてきたのかを聴こうとされていらっしゃいました。特に、公園から帰るバスの中の様子を聴いた方がいらっしゃいましたが、ずっとお子さんの手を握っていたCLに「お父さん(お母さん)が手を握ってくれてお子さんも安心したでしょうね」と労ってあげられれば、より味方になれたと思います。
 逆に疲労を意識するあまり、かなり前から聴き始めた方もいらっしゃいました。
 体験を聴く時は、当日から今日までを丁寧に聴いたうえで、必要があればそれ以前を聴いていくとよいでしょう。
 
 図を描くこともメッセージです。CLに確認せず書き始めてしまい、何度も書き直している方がいらっしゃいました。回数のメッセージを思い出してください。1回の書き直しであればCLの説明(体験)を大切に扱っているということが伝わりますが、何度も書き直すと「聴いてくれていない」というメッセージになってしまいます。書き直すときは必ずCLにどれくらいの大きさにすればいいか確認しましょう。
 
  3.自責の扱い方
 CLが話をする中で多くの自責が語られ、それに対しほとんどの方は疑問・保留で対応されていました。それも間違いではないのですが、せっかくCLの自責をゆるめることができるかもしれないチャンスを逃してしまっています。
 今回、「小学生だと親の手を離してひとりで行動してしまいますよね」と伝えた方がいらっしゃいました。このように「無理もないよ」メッセージを込めた盛った要約は非常に効果的です。
 自責は0にする必要はありません。配慮しながら触れ、寄り添うことも重要だということを覚えておいてください。
 
4.症状説明
 今回の試験では、事例や比喩を使って説明する方があまりいらっしゃいませんでした。そのせいか、惨事反応の説明が抽象的で、CLに伝わりにくかったように感じました。例えば「下がっていく」や「落ち着いていく」では、何(どんな状態)が下がっていくのか(落ち着いていくのか)わかりません。
 一般的な惨事反応の症状については、例えば「突然その時のことを思い出して苦しくなったり、悪夢を見たり、出来事があった場所や関連する場所に近寄れなかったり、神経が過敏になって音でびくっとしたり、妙にイライラして人にあたりそうになったり・・・といったショックな出来事の後に起きる心や体の変化は、一般的には1か月から1か月半で少しずつ回数が減ったり、気にならなくなったりしていきます」と説明し、その上でCLの長引いている症状については「Aさんの場合、事故の前から疲れがたまっていて、少し以前の状態に戻るのに時間がかかっているようですね。例えば・・・」と、開業準備からのことやお子さんの小学校入学についての準備やお弁当作成など、具体的に伝えていくと良いでしょう。
 何より事例や比喩はCLの理解が深まる強力なツールです。是非使いこなせるようにトレーニングしてください。
 
※福岡・仙台会場でもCPS認定試験を実施しましたが、前田MRIが記載した講評に含まれていますので別途講評はありません。