平成27年度MRI認定試験における主任試験員講評

平成27年度MRI認定試験における主任試験員講評

平成27年11月15日MRI認定試験における主任試験員講評

今回の試験について下園MRシニアインストラクターより講評をいただきました。
皆さんの今後の参考になさってください。   2015.11.23 認定委員会
 
1 介入目的調整面接
メッセージコントロール、特にファイブステップや盛った要約などにより、短時間に味方になることはできていました。受験者が日ごろから鍛えているカウンセリング力の高さを感じることができました。
またツールの説明や目的調整に必要な内容についての理解は十分だと感じました。
ただ2点、注意していただきたいことがありました。
(1)誰を中心に話を進めるか
一つ目は、誰を中心に話を進めるかです。
今回は、事件に直接かかわっていた現場担当者と、その上の部長の2名に対する介入目的調整面接でした。この場面で、どうしても現場担当者に関心が向きすぎたように思います。面接の冒頭から現場担当者に対する配慮をし、その体験を細部まで聞く手順に進んでしまいました。
もし、相手が現場担当者一人なら、その手順で問題ありません。ところが今回は、さらにその上司の部長がおり、実質的な調整相手は部長のほうです。
現場担当者に事件の細部を聞いていくと、その間どうしても部長がないがしろにされているような感じを受けますし、体験を聞くことの意味を知らない上司にしてみれば、部下が事情聴取されている(部下に苦しい思いをさせている)ような感覚に陥っても仕方がありません。
現場担当者への対応が主になってしまったのは、知らず知らずのうちに惨事の個人カウンセリングのパターンを進めてしまったのだと思います。受験者が、実際にカウンセリング現場を持っている方ばかりだったので、どうしてもクライアント的な相手への配慮が無意識のうちに優先されたのかもしれません。
私なら、軽く現場担当者への配慮を示したのちに、部長を中心に話を進めます。その中で、惨事の症状などを説明する際、現場担当者に「○○さんは、そのようなことはありませんでしたか」とお尋ねします。その中で必要なら最小限の事実認識の確認をします。そのような聞き方をすれば、ケアの目的調整をしているという流れの中で、現場担当者の苦しさを部長にもわかってもらえる良い機会にもなります。
その後のツールの説明の際も、目的は部長に、そのツールをやる場合の当事者の「痛さ」は現場担当者に確認しながら、介入メニューを決定していく手順をとるでしょう。
今回の状況のように、現場は練習や事前想定とは異なる状況が生起します。「練習」はとても重要なことですが、常に何を何のために練習しているのかを意識し、現場ではパターンに陥ることなく、柔軟に対応できるように努力していきましょう。
 
(2)時間の使い方
二点目は、時間の使い方です。
目的調整面接を終了したら実際に介入に入ります。その為には、この面接で最低限何を合意しなければならないかを考えながら、面接を進めていく必要があります。あるテーマを調整するには、それなりの時間が必要です。例えば実施内容とタイムスケジュールを決定しようとするなら、
 
  • 全体への介入の説明(挨拶):誰が、いつ、どれぐらいの時間
  • 使える部屋の確認:全体挨拶、個人カウンセリング、惨事後M・ 情報提供用
  • 個人カウンセリング:人数、時間、選定方法、案内方法
  • 惨事後ミーティング:参加者の決定方法、根回し相手
  • 情報提供:対象者、時間、回数等
  • アンケート:実施の有無、どのテスト、記名無記名、回収方法、フィードバック方法
などを決めていかなければなりません。
このことを踏まえて、提示された面接時間を効果的に活用することを意識して面接を進めていってください。
 
2 基礎講座課目講師
どの受験者も、とてもよく勉強されていました。中にはご自分なりのコツを上手に紹介してくれた受験者もいらっしゃり、自分理論になっている感じがしました。
ただ、すべてのスライドの説明が完全というわけではありません。自分の不得意(まだ借り物理論レベル)なスライドの説明は、どうしてもあっさりしたり、声が小さくなってしまいます。
大変なことですが、試験は自分の実力を高めるとてもいいチャンスです。妥協せずに、自分理論になるまで、先輩や上級資格者に質問し、理解を深めておいてください。
また、自分の担当部分が終わったことにより、安堵してしまい集中力が切れ、その後の質問にうまく答えられなかった方がいらっしゃいました。講座では、質問に答えることは、とても重要な仕事です。水泳の北島康介選手は、ゴールして振り返って、時計を確認するまでが試合だと考えているそうです。ゴールした時点が終わりだと思っていると、無意識が最後に力を抜いてしまい、タイムが伸びないそうです。講師の場合、質問を受けるところまでが、私たちの大切な試合なのです。