平成28年度UCPC認定試験における主任試験員講評

平成28年度UCPC認定試験における主任試験員講評

平成28年12月03日・04日UCPC認定試験における主任試験員講評

認定試験を受験された皆さん、お疲れ様でした。主任試験員講評をHPに掲載しました。
『CPS認定試験』『UCPC認定試験』は相通じる部分がありますので、双方の講評を参考にされて、今後の研鑽にご活用ください。
※受験者へのアドバイスCPSはこちら     平成28年12月 認定委員会
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平成28年12月3・4日に実施されたUCPC試験には、7名の方が挑戦していただきました。
前回(7月)は、合格者がいなかったのですが、その後皆さんが自主的に勉強した成果があり、今回は受験者全員、非常に高いレベルのパフォーマンスを示していただきました。
とはいえ前回も講評した通り、UCPCの合格レベルは、非常に高いレベルに設定しています。今回は2名の方が合格しました。そのうち一名の方は、CPS試験を一度落ちていますが、UCPCの試験は一度での合格です。CPSでの不合格で、基礎部分をしっかり鍛えたことが、結果的にUCPC合格の近道になったケースです。
今後の更なる実力向上のため、次のようなポイントを参考にしてください。  主任試験員 MRSI 下園壮太
 
1 自責の念の扱い方
今回は自責の念の強いクライアントでした。自責を訴えられると、多くの受験者が「そんなことはない、あなたはよくやった、頑張っている、責任感が強い」と、励ましてしまう傾向がありました。
「責めないよM」を出したいという発想かもしれませんが、メッセージ的に言うと、これは、「変われM」として受け取られます。カウンセリングの場では、「私はあなたを責めないよ。でも責めているあなたは変わらなくていいよ」というバランスの対応が必要になります。
基礎講座で自責対処のスライドにあるように、まず自責をゼロにしようとしている自分に気が付いてください。
惨事やうつの自責は症状です。いくら理屈を言っても、簡単に減るものではない。風邪をひいている人に、咳をしても意味がなく、周囲が迷惑するからやめなさいと言って、本人が本当にそうだと思っても、咳は止まりません。それと同じです。
 
次に自責の対応の重要な3つのポイントを押さえてください。
自責は、まずは「懺悔効果」。
味方になり、自責を語ってもらいます。そして、自責のつらさに共感する要約をしっかり返してあげるのです。
その過程の中で、自責に感じていることを、もっともっと具体的に詳しく聞かなければなりません。多くの人が、自責のことを聞くと、さらに自責の念を深めてしまうと勘違いしています。確かに、配慮のない応答で尋問調だと責めるMが出てしまいますが、しっかりMCを行い味方のスタンスで聞くと、本人が自責を感じている背景の事実認識が具体的に理解できます。(惨事で事実認識を詳しく聞くのと同じ感じです。)それを理解してから、苦しかったねMを載せた要約をする。この過程が自責対応の基本です。安易にそれより進んで、「あなたのせいではない」を押し付けてはいけません。
この自責に感じていることを詳しく聞く作業は、もう一つの効果をもたらします。それが、「自責でない事実認識の思い出し」です。
惨事の時は、まず自責の念がわき、その視点で事実認識を作り上げ、苦しんでいます。それを丁寧に聴くことで、「ああそうか、仕方のない部分もあったんだ」と自分で思えるようになることが結構な割合で起こります。
このときカウンセラーは、少し語弊のある表現ですが、「一緒に言い訳を考えてあげる」スタンスで要約します。例えば、「塀のことは以前から気になってはいただけど、部下の方が休んで、彼の仕事も担当することになった。毎晩残業しながら、優先順位の高い仕事をこなすことに必死になって、結果的に、塀のことまで手が回らなかったんですね」という要約です。
そこで、「そうなんです。手が回りませんでした。…でも、課長としてそれではだめですよね。結局事故が起こったんだから」と返答があったら、「なるほど、課長としてどうしても自分を許せない部分があるのですね。そこが一番苦しいところなのですね」と受け止めます。
懺悔効果は、受け止めることが、目的です。それ以上必要はありません。この事例ならこの後は、「そんな思いを抱えていると、体調が崩れていませんか」とか「ところで、今後の業務の立て直しはどう考えていらっしゃるんですか」と自然な横堀質問で苦しい自責から話題を転換します。
自責対処の3つ目は、「償い行為」です。
自責の念は、理屈で減るものではありません。自責は惨事の反応ですと説明してくださった受験者も何人かいましたが、それもそれほど効果的ではありません。スライドに提示してあるのは、基本的には効果的なものの順です。ただ、一番最後の落とし前の付け方を考えるは、自責の程度が強い場合とても有効な支援となります。
自責の気持ちは、理屈では変わりませんが、謝罪をするという行動で緩めることはできます。何をすれば償えるのかを一緒に考えてあげるのです。今回のケースでは、Tさんに謝罪の手紙を書くなどの提案が有効でしょう。このような行動をとると、Tさんの気持ちを知ることもでき、自分だけで考えている自責のスパイラルから抜け出すきっかけになることもあります。
 
2 何をテーマとし、何を捨てるかの選択をする
UCPCで試されるのは、カウンセリングのデザイン力です。わずか20分のカウンセリング時間を、どう使うのが最もクライアントのためになるかを考えなければなりません。
多くの受験者は、「バリア病E預金ミカタ」の項目で、よく現在の状況を把握しています。ところが、その状況把握が的確になればなるほど、さらに確認したい事、伝えたい事が出てきてしまい、結果的に、矢継ぎ早にいろんな質問をしてしまう傾向が見られました。大きく状況を把握したら、クライアントの理解力や、使える時間、味方度など考慮し、カウンセリング目標をしっかり絞り切らなければ、一方的なカウンセリングになってしまいます。
また、自分だけはよく状況を把握し、必要事項を確認するために質問したと思っていても、時間が迫り焦っていることも手伝い、直Qが多くなってしまう傾向があります。かならず、横堀質問の場合、事前の要約をするか、質問の意図の説明をする必要があります。
 
3 説明のための事例・比喩の使い方
前回も同じテーマで講評しましたが、まだ説得力のある説明が不十分なようです。
症状等の「理由」は十分勉強し、比喩を使おうという意図はあるのですが、比喩はクライアントの症状や関心事項や心情的被害レベルに応じたものでないと、逆に違和感が大きくなります。UCPCが使う比喩は、有効であることが求められます。パターンの比喩を押し付けるのでは、相手に受け入れてもらえません。その場でアレンジするか、もしくは、もっといろんなパターンの比喩を日ごろから研究しておくことが必要だと思います。
比喩が自分勝手になりがちな傾向への対策として、誰かにその比喩を話してみて、うまく言いたいことが通じるかどうか、アウトプットの練習をすることも重要です。全体的に、理論学習は進んでいるのですが、説明練習の回数が少ないように感じました。
また、比喩は有効ですが、比喩より事例の方がもっと有効です。事例を語れるように準備してください。
 
いずれにしても、皆さんが勉強している方向性は間違いないと思います。今回不合格になった方々も、レベル的に本当にあと一歩のところまで来ています。引き続き、努力を続けていっていただきたいと思います。