平成30年度UCPC認定試験における主任試験員講評

平成30年度UCPC認定試験における主任試験員講評

平成30年7月14日(仙台)・15日・16日(東京)UCPC認定試験における主任試験員講評

認定試験を受験された皆さん、お疲れ様でした。主任試験員講評をHPに掲載しました。『CPS認定試験』『UCPC認定試験』は相通じる部分がありますので、双方の講評を参考にされて、今後の研鑽にご活用ください。また、7月14日の仙台でのUCPC試験は、平成29年12月に東京で実施したUCPC認定試験と同じシナリオ・同じ前半ビデオで実施いたしましたので、平成29年12月の講評も併せてご覧ください。こちらは東京での受験者も同じです。
※受験者へのアドバイスCPSはこちら              平成30年7月 認定部
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平成30年7月14日・15日・16日、仙台と東京で、UCPC試験が開催され、24名が受験し、6名が合格しました。合格者のうち3名は、MRI、移行UCPCです。
大変レベルの高い試験になり、個人上級の訓練やUCPCの試験システムが、みなさんの実力向上に寄与していることを再度確認できました。
以下、今後のトレーニングのための参考になるポイントを記載します。   主任試験員 MRSI 下園壮太
 
1 目標管理
個人上級レベルでは、カウンセリングの目標管理ができることを目指しています。講座でもお伝えしていますが、目標をしっかり意識しないと、つい無意識目標に引きずられがちです。無意識目標とは、言い換えれば、自分の思考の癖。これまで受けてきた躾、教育や人生経験(特に成功体験)に培われたもので、たとえそれが状況に合わなくても、「自分が間違っている」とも気が付きません。そもそも、そんな傾向があると気が付いていないのですから。
今回の東京でのケースで考えてみましょう(仙台の事例に対するアドバイスは、29年12月2・3日の講評の「不安」の部分が参考になります)。東京のケースは、自転車事故の後、自転車に乗れず、「何をやってもダメ」と落ち込んでいた方が、同僚の勧めで、会社の契約EAPを訪ねたという設定です。まず前半が終わった段階の状態を「バリア病…」の項目で確認すると…
 
  • 場面:初回面接、自発的来談、「自転車に乗れない」が主訴、あと20分の面接
  • リスク:ケガの悪化(頭のケガ)?夫との関係?会社との関係?希死念慮?睡眠が十分とれていない生活パターンなので、それが様々な悪影響を及ぼしかねない。
  • 安全・安心:「60代の男」に対する恐怖、道路や自転車への恐怖?2週間前の事故の回避症状?
  • 病気:ケガの引きずり、更年期?、うつ?、FS(自転車に乗れない)
  • エネルギー:介護からの疲労+職場環境の変化で、2段階下から3段階?
  • 抑圧・緊張:何となく警戒・緊張している感じ
  • 味方感:徐々に醸成中
  • 感情・思考・体調:「自転車に乗れない」「今までにない仕事のミス」による第2の無力感、職場に対する怒り(おそらく2段階の症状)
などが認識できます。
これを、基礎講座で勉強したうつ・惨事の知識に基づいて考察すると、このクライアントの状態をおおむね次のように理解できるでしょう。
この方は、一年以上前からの母の介護で消耗し、おそらく疲労の第2段階に陥り、その後(数か月前から)の職場での多忙により蓄積疲労が悪化もしくは改善していない中で、今までにないような仕事上のミスを起こし、それほど大事故ではなかった自転車事故の心理的後遺症(自転車に乗れない)から、「何をやってもダメ」という大きな無力感・不安感が生じているようです。自転車に乗れない、という症状は、惨事後のFSの回避症状と理解できます。それほど大きな事故ではなかったのに、ダメージが大きいのは、第2段階での事故なので、ショックが2倍だったからでしょう。また、その際に加害者から放たれた「馬鹿野郎、気をつけろ」という言葉も、2段階で過敏になっていた自責と、直前の仕事上のミスで大きくなっていた無力感を強く刺激したものと考えられます。
多くの受験者も、大体上記のような分析をしていました。問題は、それをもとにどうカウンセリングを進めようとするのか(つまりカウセリング目標)です。
 
2 大きな目標、根本目標を追いたがる
このようなクライアントに対する、基本的な対処は、基礎講座でもお伝えしているように、休養、受診、環境調整により、疲労を回復してもらうことです。トラブルの根本原因である疲労に対処しない限り、クライアントの不安定な状況を根本的に改善できません。また、疲労をしっかり理解していただくことで、仕事上のケアレスミスや自転車事故、その後のショックの引きずりの大きさもある程度説明できます。
そこで、カウセリング目標を「疲労での説明で無力感を緩めてもらい、今後の疲労回復の対策を立てる」としてスタートするのは良いのです。案外するっと受け入れてくれるかもしれません。ところが、後半でその説明をしているうちに、このクライアントは、不眠を不眠と自覚できていないし、疲労も「介護の時よりずっとまし」と感じていること。さらに、介護については「以前父をしっかり介護できなかった、母は今度こそしっかり看てあげたい」という思い(責任感・自責)が強いため、疲労していることを自覚したくない麻痺させている状態であることがわかってきます(「バリア病…」の変化です。)
つまり、当初登ろうとしていた「疲労対処の山」は、今回のカウンセリングでは、非常に困難な崖続きのルートであったことがわかってきたのです。この状態の中でも、もし時間があれば、経緯表などを使いさらに具体的に話を聞きながら味方を深め、そのうえで、ゆっくり説得して、崖を登っていくこともできるでしょう。しかし、時間がありません。このような場合、目標を柔軟に変更していかなければならないのです。
根本対処、基本対処にこだわって、うつの説得、うつ対処の押し付けをしてしまうと、それは「変われM」になりますし、山登りの例では、夕刻が迫っている中、体力のないクライアントに急な壁を登ることを強要しているようなものです。決して上級の登山ガイドのすることではありません。
ただ、不合格だったほとんどの方は、このパターンでクライアントを支援しようとしていました。「受診だけは承諾してくれたので、良かったです」と自己分析していた方もいましたが、クライアントは、あからさまにカウンセラーを否定できません。にっこり笑って「ありがとうございます」とカウンセラー室を出ても、結局受診もせず、次の面接はキャンセルされることが多いのです。
特に男性の場合、最初に立てた計画を、仕事をこなすように進めていく傾向があります。クライアントが、難色を示しても、自分の理論の正しさを「説得」しようとしてしまうのです。間違えた認識を持っているクライアントをディベートで打ち負かすことが無意識目標になっているからです。表面上はきちっと理論正しくブロックの階段を積み上げる作業をしていると思っていても、その地盤(つまり一番重要な味方感)がどんどん崩れていっていることに気が付かなければなりません。
クライアントを守ってやりたい、長期的に救ってあげたい、そのためにはクライアントを正したい、という思いからの行動なのですが、そのようなアプローチでは、本当の意味でクライアントの支援になっていない場合が多いのです。(実は、下園MRSIもこのトラップに引っかかることがよくあるので、気を付けています。)
 
3 小さな目標でも、全体に対する意義は大きい
では、具体的にどのように舵を切ればいいのでしょう。一例です。
もし、疲労アプローチの目標にクライアントの抵抗があるようなら、そのほかの様々な苦しさの中、当面達成しやすい苦しさへの対処をターゲット(目標)にします。時間に応じた小さな目標です。
例えば、今回のケースなら「自転車に乗れない苦しさをFSの無力感対策で説明する」、という作業に絞るのです。みんなそうだよと事例を挙げ、その理由を説明する。今回は、「ドキッとしたこと」、「馬鹿野郎」と言われた恐怖、言葉に最近の自分が重なってしまったこと、その後会社に行けなかった無力感(情けなさ)などの今回の事象が特別であったことを説明し、身を守るための回避症状の原始人的説明を簡単にし、それは長くは続かないということを、再び先の事例で説明し、でも、自転車に乗れないのは、介護を続ける上でも大変なので、できるだけ早く乗れるようになることや、しばらくはタクシーを使うなどの具体的対処法を、一緒に考えるという進め方があるでしょう。さらに、今は事故現場を回避していることも、「上手な対処」として認めることも忘れてはなりません。
これなら、無力感をある程度速攻的に緩め、さらに本人の困ったことに対し、「一緒に悩む」という味方を強化する効果もあります。
そして、最後は、「おそらく徐々に自転車に乗れるようになる。次回は、その状態を教えてほしい(クライアント目標)。もう一つ、私が気になるのは、少し最近集中力がなかったり、すこし傷つきやすくなっている感じがあるような気がするのだけど、それは、昨年来の頑張りすぎのせいで、少し疲れがたまってしまっているからなのかと思う。お母様の介護をしっかり続けるためにも、あなた自身の健康管理にアドバイスしたいと思う」と次のカウンセリングを含めた、将来像を提示して、終わります。
バリア病…で見たように、今回は初回面接、相手は自発来談です。味方の関係をしっかり作れば、次回からの支援で本当にクライアントを支えられるのです。本丸の疲労対処は、その時にしっかり対処すればいいのです。慌てて、自分の考える目標を押し付け、結局信頼関係を損なってしまいかねないアプローチは、自分では論理的なように感じていても、ほんとうは小さな視点でしか考えられていないのです。
 
4 相手理論を尊重する態度が重要
ただ、カウンセラーが考える目標が、クライアントにとって受け入れられるかどうかは、やってみないとわかりません。とはいえ、尺度感覚は鍛えることができます。
まずは、バリア病…の視点で、しっかり想像してみることです。
もう一つは、提示する目標(現状説明、対処法)が相手にとって、受け入れられる内容であることを、会話の中で丁寧に探してく態度が必要です。これを協会では「相手理論」を探す、と呼んでいます。自分が納得する理屈(自分理論)を押し付けるではなく、クライアント(相手)が納得する理論(相手理論)を探すのが、カウンセリングの本質です。
この相手理論という考え方と、それを模索する態度・作業は、訓練しなければなかなか身に付きません。もちろん一番これが鍛えられるのが、カウンセリングの現場です。だから、勉強だけするのではなく、常にカウンセリングの現場を求める姿勢が大切です。
でも、なかなか本当の現場を持てない方も多いと思います。ではどうすればいいか。
今回、カウンセリング能力が飛躍的に向上した合格者が二人います。このお二人は、カウンセリングの場はそれほど多く持っていませんが、比較的短い期間に、試験員が驚くほど実力を向上させていました。お二人に共通するのは、協会の講座の「実技指導者」と「クライアント役」を数多く経験したということです。
クライアント役を経験すると、いかにカウンセラーの思い込みが押しつけになるかを実感できます。また、実技指導者は、ただ実施者にダメ出しをするのではなく、その実施者の実力に応じて「次はこうしてみよう」というモチベーションにつながるようなアドバイスをしなければなりません。当然相手にわかるような説明、相手の立場で受け入れられるような提案をしなければならないのです。
合格したお二人は、まず実技指導者勉強会で、相手理論の考え方をしっかり叩き込まれ、それを現実の講座の中で、ヒリヒリした思いを感じながら、フィードバックしていく体験を積んできたのです。その経験の中で、自然に相手理論を丁寧に模索する姿勢が身についてきたのだと思います。
UCPCだけでなく、MRI、惨Mファシリテーターという上級3資格を目指す方は、ぜひ、講座のクライアント役、実技指導者役を数多く体験すべきだと感じました。
 
5 時間管理、話題管理
目標管理以外にも、時間管理(話題管理)で失敗した方もいらっしゃいます。
UCPC受験レベルになると、MCがとても上手になります。すると、そのまま普通に聞いてしまうと、クライアントはたくさん話をしてくれるのです。時間があるときや、単に味方を作る段階なら、それでもOKです。ところが、あと20分しかないという場面では、カウンセラーがしっかり時間と話題を管理しなければ、クライアントは、言いたいことが尻切れトンボになってしまったり、逆に最後に急に大切なテーマを振られ、それを粗雑に扱われたりして、結局「しっかり相談できた」という印象を持ってもらいにくくなります。
どうすればいいでしょう。さらにMCを磨くのです。
時間に応じて、テーマの選択をしたら、クライアントが横道にそれる場合でも、しっかり要約し、MCを多用しつつ、話題をもとに戻してください。多少強引に話題を進めてがけ崩れの雰囲気が生じたら、少し相手に発言してもらうなど、きめ細やかなMCを使いながら、終結に向かいます。
また、終わりの技術として、現状説明から「できること探し」によって、クライアント目標を設定したり、カウンセリングの進行状況を確認し、次回のカウンセリングへつなぐために、どれぐらいの時間がかかるのか、しっかりイメージしておく必要があります。単純なプレゼンではないので、相手が否定する場合も考慮し、かなりの時間を取っておく必要があると理解しておくといいでしょう。
 
6 体調、ストレス管理
今回合格した方の中には、明らかに以前の試験の時より「雰囲気」が良くなっている方が何人かいらっしゃいました。聞いてみると、以前の試験の時は、体調が悪かったり、ストレスが多い時だったということです。カウンセリングは、スキルだけでなく人間力も関係してきます。人間力は、雰囲気として染み出てきます。
スキルだけに意識を向けるのではなく、健康管理、ストレス管理にも配慮する大きな視点を持っていただくといいと思います。

平成30年12月01日・02日UCPC認定試験における主任試験員講評

認定試験を受験された皆さん、お疲れ様でした。主任試験員講評をHPに掲載しました。『CPS認定試験』『UCPC認定試験』は相通じる部分がありますので、双方の講評を参考にされて、今後の研鑽にご活用ください。
※受験者へのアドバイスCPSはこちら              平成30年12月 認定部
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平成30年12月1日2日に、UCPC試験が開催され、16名が受験し、2名が合格しました。
合格者は少なかったものの、すべての皆さんが試験に向けてぐんと実力を上げてきている様子を見ることができました。
以下、今後のトレーニングのための参考になるポイントを記載します。   主任試験員 MRSI 下園壮太
 
1 自分の価値観の偏りに気が付いておく
今回のクライアントは、1週間前に電車の中での急病人を見て電車に乗れなくなり、仕事に行けなくなったという主訴を持っていました。それ以前の生活を確認すると、かなりライフイベントが混んでいて、2段階から3段階の状態での事故との遭遇だったことがわかります。
今回のケースでクライアント目標を提示する際、「このクライアントは仕事を休めない」と決めつけて、「家事を少なくする方法」「いまの休日をよりしっかり休む方法」「仕事場の近くに生活する方法」などを提案した方が数名いらっしゃいました。
実は、クライアントはアルバイトで、上司も理解があり、以前にも2週間ほど休んでいます。ですから、休めないわけではないのです。そこを忘れて、自分の思い込みで限定されたクライアント目標しか提示できなかったのは、「仕事は休めない」「仕事を休むと職場に迷惑がかかる(それが一番苦しい)」という受験者自身の価値観があるからではないでしょうか。
これが上級(個人)で紹介している「無意識目標に引っ張られる」という現象です。
価値観の偏りは、クライアント目標だけでなく、カウンセリング全般に影響してきます。あるテーマをスルーしてしまう、ある問題に関してだけ積極的に説明してしまう、ある相手の場合だけ自分の口調が変わってしまう…。今回、自分でなんとなくうまくいかなかったと思っているところには、スキルの問題だけでなく、価値観の偏りが関係しているのかもしれません。自分がどのような価値観を持っているかは、なかなか一人では気付きにくいものです。このようなロールプレイでの指摘は、自分の価値観に気付くとても貴重な機会と、とらえていただきたいと思います。
 
2 「バリア病…」をカウンセリングに生かせない
ロールプレイ開始前に、前半が終わった段階の状態を「バリア病…」の項目で確認してもらいます。実は、上で紹介した受験者の皆さんは、その時点では、場面の項目で「上司の勧めで来訪」、安全・安心の項目で「上司は理解がある」ということを発表していた人が多いのです。でも、すっかり忘れてカウンセリングを進めていました。
また、バリア病…では、疲労の2~3段階にある、とか、セカンドショックがあるなどと認識しているのに、カウンセリングが始まったら、そのことに全く触れないでカウンセリングを進めていく方も多かったようです。当然、死にたい気持ちも確認できていません。これも「死にたい気持ちはない方がいい(やりやすい)」というカウンセラー側の無意識の願望(無意識目標)があるのかもしれません。
ただ、バリア病…を現実のカウンセリングに生かせないのは、「まだ、練習が足りない」その一点につきます。カウンセリングでは、クライアントの話を聞きとり、感情に共感しながら、バリア病…の要素を確認し、さらにカウンセリング目標などを修正しながら進めるものです。同時並行作業なのです。大変難しい作業ですが、それができるのがプロのカウンセラーだと私たちは考えています。
 
3 時間管理が甘い
これも、結局練習の足りなさに帰着するのですが、せっかく良いカウンセリングをしているのに、時間通りに終われない受験者が多かったのは残念です。
一つ目のコツは、引き継いだ後に、すぐにしっかり相手の心をつかめるようなコンパクトな要約を磨くこと。そのためには、相手の痛いところをしっかりと把握しておく必要があります。前半で、クライアントが話した重要な言葉をメモしておくと、それを使って効果的な要約がしやすくなります。
2つ目は、やはり説得力のある説明のバージョンを練習しておくこと。事例比喩はまだまだ使いこなせていない印象です。
3つ目のコツは、説明やできること探しは、相手の反応を見ながら進める作業なので、自分なりの「予備」の時間を意識しておくことです。20分しかない場合なら、5分は予備と考えておいてもいいと思います。
4つ目のコツは、時間管理自体に慣れておくことです。時計の置き方、時計の見方。当然これらはメッセージを出してしまいます。クライアントにどういう印象を与えるか、「時間が迫っているけど、大切にしようとしている」いう印象を与えるにはどうしたらいいかを、常々考えながら練習してほしいと思います。
カウンセリングの同時並行作業の一つに、時間管理を必ず入れておいてください。
 
4 基礎講座の内容を体に刷り込ませておく
時間に追われると、重要なことを忘れてしまいます。バリア病…を忘れてしまうだけでなく、合わせて「基礎講座で学習した内容」も忘れてしまった人が多いようです。
 〇うつの場合「症状」を聞いてそれに共感する(死にたい気持ちも確認する)。症状をしっかり聞かなけば、事故の後の反応が2倍、3倍だという説明もできません。
 〇うつの対処は、3点セットを一気に出して説明する。
 〇FSの無力感に対しては7つの手順で対応する。その際は、できるだけ事例や比喩を使う。
UCPC試験は応用だからと言って、これらの基礎を忘れてしまっていいわけではありません。基礎は基礎であり必要なことがいっぱい詰まっています。今一度、基礎講座で学習した内容を再確認してほしいと思います。
基礎講座の内容の中では、今回は、MCについては、ほとんどの方がかなりうまくなっているという印象を受けました。ただ、MCだけについていえば、MR協会員の上位5%に入らなければ、UCPCの合格レベルに達しません。少しうまい、ぐらいではUCPCの合格レベルではないのです。引き続き、5ステップ、要約質問、メッセージの積み上げ、がけ崩れ対策などに磨きをかけてください。
 
5 相手の立場にしっかり立って想像する
今回のクライアントが体験したのは、「少し遠くの乗客が倒れて、自分の横に寝かされた。自分は何もできなかった」という状況です。電車に乗れなくなった、何もできなかった…ということから、マヒに対する無力感を想定して、「みんなそうだよ」というメッセージを出そうとしていた受験者が多かったのです。そのような方は、「めったにないこと」「目の前で突然そういうことがあれば…」と、「そういう状況になっても普通だ」という説明をしました。
ところが、クライアントの心にはなかなか入っていかなかったようです。というのも、このクライアントは、無力感はもちろんありますが、女性でありそれほど強く感じておらず、むしろ「何もできなかった」という自責を強く感じています。それが、他の乗客から責められる不安となり、電車に乗れない原因(主因)になっているのです。
講座で学習した一般的な解釈をパターン的に説明する前に、まずはその方の状況をしっかり心の中で再現してみる必要があります。例えば今回のケースでは、急病人に対応していた看護師のような方がいたことを指摘し、「そんなプロがいると、普通私たち素人は、邪魔をしてはいけないと思って、手を出せませんよね」と返してあげるのが、その時の本人が動けなかった理由を自然に説明でき、自責を少なくするヒントになると思います。
 
6 リスクをもっと意識する
今回一番違和感があったのが、今回の症状をFSだけで理解しようとしていた受験者が多かったことです。
今回のクライアントの反応は、経験した出来事に比してちょっと普通ではないぐらい強い反応です。ただ観察しておけばそれで済む、というレベルではないのです。そのことに気が付いてほしいのです。
そこに気が付くと、始めから、出来事の前の疲労や、過去の経験や、その他のトラブル(たとえば病気)などを想定して話を聞きますし、単に観察するだけの対処に終わらず、もう少し本格的な対処を念頭において、カウンセリングを進めるでしょう。バリア病…でいえば、「リスク」です。このリスクに関する認識が甘いと感じました。それが、希死念慮を確認しない一因でもあると思います。
 
最後に
UCPCの試験は、実力向上のためのとても良いトレーニングの場となります。協会では、この機会をさらに活用しようと2つの改善策を検討中です。
一つは、試験会場にスマホなどを持ち込んで、自分のパフォーマンスを撮影できるようにすること。そうすると、あとで自分自身で客観的に確認できますし、試験員のアドバイスもより理解しやすくなるでしょう。
もう一つは、UCPCビデオ解説勉強会を開催します。認定試験後に皆さんが視聴したMRI以上の後半ビデオの解説をしようと思っています。一度ご覧いただいていますが、しっかり解説したほうが皆さんの理解が深まると思うからです。
2019年1月22日(火)、平日の夜2時間ほどを計画しています。参加ご希望の方は UCPCビデオ解説勉強会 からどうぞ。