2026年度(令和8年度)CPS認定試験における主任試験員講評
2026年(令和8年)7月18・19日(オンライン)における主任試験員講評
受験者の皆さん、お疲れさまでした。多くの方が、基礎講座で指導されたポイントを改善して臨んだことがよくわかる試験でした。
今回の認定試験について気付いた点をいくつか総評としてまとめましたので、今後のスキルアップの参考としてください。
主任試験員 MRシニアインストラクター 前田理香
1.MC(メッセージコントロール)
MCは、ほとんどの方が講座で指摘されたことを工夫し改善していらっしゃいましたが、表情やうなずき、あいづちなどはさらに工夫の余地がありました。特に、
・驚きや焦りなど、カウンセラー自身の素の反応が表情に出てしまった方
・「はい、はい、はい、はい」などのあいづちの過度な繰り返しをする方
・表情の動きが少なく、カウンセラーがどう受け止めたのかが伝わりにくい方
・自責場面でも肯定ととられるようなうなずきとあいづちを続けてしまう方
などが見受けられました。
MCは「話を聴いている」だけでなく、「あなたの味方ですよ」というメッセージを伝える重要な技術です。場面に応じて表情やうなずきを使い分け、不要なメッセージを出さないことが大切です。特に「何もできなかったんです」「教師失格です」という自責が語られた場面では、しっかりと「保留」を使い、カウンセラーはそう思っていないことを伝えないと、クライアントをより苦しめてしまいますので、注意しましょう。
講座の中で「表情が薄い」ことを指摘されている方は、一日1回鏡を見て表情の練習をすることでかなり改善しますので、やってみてください。
また、表情やうなずき、あいづちだけがMCではありません。カウンセラーの服装や背景に見えているもの、手元で見せているホワイトボードなどもメッセージです。弱っているクライアントが戸惑ったり、不快になるようなものが画面越しに見えてしまっていないか、カメラをオンにする前に今一度確認しましょう。
2.クライアントの苦しさに寄り添う要約・質問
多くの方がクライアントの苦しさを上手に要約し、自責感を和らげる伝え方ができていました。一方で、カウンセラーが知りたいことを優先して質問してしまったり、クライアントが最も苦しさを感じている場面を十分に聴かず、話題を変えてしまったりするケースも見受けられました。要約や質問は情報収集のためではなく、「クライアントの苦しさを理解する」ために行うものです。クライアントが最も辛いと感じている場面を具体的かつ丁寧に確認し、理解し、(盛った要約で)受け止め、その体験を共有する、という姿勢を大切にしてください。
3.図の活用
図を描くことも、「クライアントの苦しさを理解する」ための重要なツールです。位置関係だけを整理するのではなく、その場で何が起きていたのか、クライアントはどのような役割を担っていたのか、他の先生方がどこでどんなことをしていたのか、クライアントがその場面の何に苦しさや自責を感じているのか、を確認しながら図にすることで、「痛いところ」を緩める要約や説明へとつながります。体育館の中でのクライアントや児童、他の先生方の位置などを、時間経過とともに変化させていきながら図を描いた方がいらっしゃいました。そして「こんなにたくさんの生徒さんたちを落ち着かせるようにされていたんですね。」と自責を緩める要約をされた方は素晴らしかったと思います。
効果的な場面で躊躇せず図が描けるよう、日ごろから練習しておきましょう。
4.説明をする
説明では、講座で学んだ知識をそのまま伝えるだけではなく、目の前のクライアントの状況に合わせて説明することが求められます。特に今回は、出来事から3週間ってからの相談で、最初は大丈夫だったのに、音楽祭が終わってから辛くなり、かえってひどくなっている、というクライアントです。それに対して講座で習ったまま「1か月~1か月半で落ち着いていきます」という説明をする方が多いように感じました。クライアントが安心できる説明をするためには、
・惨事反応の中の「麻痺」の理解
・現在の反応が自然な経過の中にあること
・なぜ今になってつらさが強くなったのか
など、講座で学んだこと一つ一つを理解し、例えば「音楽祭に出たいという子供たちのために、ショックな出来事の後に出てくる『怖い』という感覚をマヒさせて、なんとか2週間乗り切ったけれども、それが終わってほっとしたタイミングでマヒが解け、『怖さ』を感じるようになっている。それでも通常は時間とともに以前の状態に戻っていくが、更年期による睡眠不足と音楽祭までにエネルギーを使っているため、少し時間がかかっているが、しっかり睡眠をとることで以前の状態に戻っていくから心配はいらない」というように、クライアントの今の状況に合わせて説明できると、より安心感につながったのではないでしょうか。
また、「医学的には…」「自然な反応です」という説明だけでは安心材料として十分ではありません。
比喩や事例を交えながら説明し、説明中もクライアントの表情を見て理解できているかを確認し、「ここまででイメージできますか」「分かりにくいところはありませんか」と確認しながら進めることが大切です。
5.構造化面接の理解と活用
構造化面接を十分に復習し、希死念慮の確認までできていた方、時間内には確認できなくても残りの30分で確認しようという方向性を考えていた方は、素晴らしかったと思います。一方で、構造化面接を「形式的な手順」と捉えてしまい、その有効性を十分理解できていないように感じられる場面もありました。
構造化面接には、初心者でも実施しやすい、緊張やパニック状態でも進められる、聴き漏れを防げる、感情に巻き込まれにくい、必要な情報を系統的に把握できる、という大きな利点があります。
ショックな出来事に対するカウンセリングでは、カウンセラー自身も緊張しやすくなります。だからこそ、基本手順を十分に身につけ、必要な情報(痛いところ)を漏らさず確認できるよう練習を重ねてください。
最後に、今回合格された方は、様々なケースに対応できる上級のカウンセリング力をつけるためにも、学びを深めていただきたいと思います。
残念ながら合格されなかった方も、基礎講座の頃に比べ確実に実力がついてきています。またCPS認定試験は、基礎講座で学んだことの総復習であり、大きな成長の機会ですので、あきらめることなく再チャレンジしていただければと思います。
