平成24年度MR認定試験におけるアドバイザー講評

平成24年度MR認定試験におけるアドバイザー講評

平成25年2月16日MR認定試験におけるアドバイザー講評

今回の試験について下園MRインストラクターより講評をいただきました。皆さんの今後の参考になさってください。  2013.2.23 認定委員会
※注:平成25年当時のMRC試験は、現在と受験内容が異なり、惨事後ミーティングが実施されていました。ご注意ください。
 
【情報提供】
全体として、良く勉強されており、非常に真摯に課題に取り組んでいる姿勢にMR協会のメンバーとしての信頼感を感じました。 次のようなことをさらに学習してほしいと思います。
<何を話すか>
試験では10分間の情報提供の場面が与えられましたが、その10分でどのような情報を提供するかを明確に意識してできていない人が多かったように思います。主要なターゲットを誰にするかをイメージしないと、提供する内容が決まりません。そのターゲットがどのような情報を知りたいか、MRとしてどのような情報を与える(提供したい)か、受講者にそれらの情報を受け入れる余裕(感情的、集中力)がどれぐらいあるかを考えます。
また情報提供とはいえ、今回の介入の最初の挨拶にもなります。我々のサービスをより活用してもらうために、今回の介入メニューの紹介や活用する際のコツなどを、お知らせしておく必要もあります。
これらのことを総合的に考えて与えられた10分間を最大限に有効に使う必要があります。今回の場合なら、集められたメンバーがマラソンに関係している方々なので、必要以上に無力感を感じないための情報提供、つまり惨事後のファーストショックの具体的な症状と、安心情報として、症状の理由説明や継続期間、対処法などを説明すること、及びこれから始まるMR協会介入チームの介入メニューや活用法についての紹介などを主体とするべきでしょう。10分間の使い方の一例としては、
 
  •  MR協会・個人の簡単な紹介(1分)
  • この10分間の情報提供の目的と説明項目(30秒)の紹介
  • コンピューターサービス惨事後に起こりうる症状(ファーストショックのみ)(3分)
  • 安心情報として誰にもでも起こりうるという事例(2分)
  • 時間限定であるという事例(1分)
  • 今の苦しさをさらに楽にするためのMRの介入メニューとMR協会加入チームの協会の活用法(2分)
予備30秒あるいは、個人でできる対処法をもう少し詳しく述べたい場合は、期間限定であることと誰にでも生ずることをさらっと述べた後、個人で出来る対処法について具体例をあげながら3 ~4分説明してもいいでしょう。
セカンドショック(うつ)のことを主体で話した人が多かったのですが、この時点では、まだその症状は表れておらず、ただ、不安にさせるだけの情報提供になってしまいます。ファーストショックの症状(正常な反応)をよく理解し、自分の言葉で説明できるよう、復習して下さい。「侵入・回避・過覚醒」の話をすると(特に「侵入」)、その情報がかえってショックを与え、フラッシュバックなどにつながるのではないか、という不安も聞かれましたが、ご自分のその不安は必ず聞き手に伝わりますし、あえてその情報を与えることを「避けた」ことで「その症状はあたりまえだよ」と後でいくら言っても説得力がなくなってしまいます。
セカンドショックの情報を説明するとすれば、その後の観察や仕事の調整を行う上司、人事、健康管理スタッフなどに絞るべきでしょう。多くの人にセカンドショックの話をするのは、3か月後以降の時期になります。
 
<どう話すか>
情報提供の場はカウンセラーとしての人柄をアピールする絶好の場であるので、メッセージコントロールに特に気をつけるべきです。多くの人がゆっくりとした聞き取りやすい話し方をしているところは好感が持てました。
しかし説明が分かりにくかった人(事例や比喩がない)、与える情報とその表現が不安を煽るメッセージとなった人、やや多動になっている人、言葉の繰り返しが多い人などが見られました。緊張してのことと思いますが、実際の介入現場では、もっと緊張します。緊張の中でもパフォーマンスを上げなければなりません。また、口述原稿を準備してきた人も何人かいましたが、原稿を読むと、やはり内容が伝わってこない気がします。内容自体は十分理解しているようなので、勇気をもって、自分の言葉で話す練習をしてみてください。相手の顔を見ながら話すことが、現場ではとても重要になります。
具体的な対策事項について、呼吸法やストレッチを提案した人もいましたが、十分な説明がないと、「自分たちの苦しさは、呼吸したぐらいで軽くなるものではない!」と、裏メッセージにとられる可能性が高くなると思います。
同じく、原始人や自分が経験した事故などの事例を出した人もいましたが(十分にその真意を伝えきっていないと)、今回のターゲットである間近で同僚を失った人々には、軽く扱われた印象になったかもしれません。
スライドのアニメーションや字体がかわいすぎると、これも軽く扱われた印象になります。また、ホワイトボードに書く字やフィリップの字、グラフなどの図も、その人の印象を決めてしまいます。事前に予行し、自分で書いたものを受講者の位置から見て、印象を確認してください。線が細くぶれている図からは、安心メッセージが伝わりません。
 
【惨事後ミーティング】
<どう回すか>
参加者の発言を丁寧に聞こうとしていた姿勢が十分伝わってきました。ただ、多くの人が、どうしても1対1の対応になりすぎていたようです。
惨事後ミーティングは、個人の公開カウンセリングの連続ではなく、参加者全員の時間になるようにしなければなりません。一人の意見があれば、他の人にその意見に対する追加意見や追加情報を求めることが必要になります。
グループ全体で話題を進めている感じが薄かったように思います。
また症状の激しい人が現れた場合、その人のみに対応してしまいがちになったシーンもありました。個人対応を重視しすぎるとグループであることの意味が薄れます。個人対応は、その後の個人のケアに結び付け、そこでしっかり話を聞く体制をとりさえすればいいでしょう。
また、自責感や無力感、不安感などの重要な感情が表現された時、それに何の対応もせず、他の人や他の話題に振ってしまった(スルーする)場面も何回か見受けられました。たとえ事実認識の場面でも、少なくとも要約だけはするべきです。ファーストショックの症状を十分理解していないと、そのつもりがなくてもスルーしてしまうことにつながりかねないので、十分復習してほしいと思います。
 
<どう進めるか>
事実認識に使える時間を意識し、どこの部分に焦点を当てるかという意識が少なかったように思います。今回の場合、少なくとも事故の直前直後の各人の行動を焦点にするべきだったと思います。
例えば私なら、このメンバーと50~60分という時間で惨事後ミーティングをしなさいと言われたら、この時期にまつわる感情と身体反応の共有を図る時間を20分ほど確保し、事実認識の確認は40分ほどで済ませようと考えるでしょう。40分の中で、やはりまず事故が発生した場面を中心に話を聞きます。そこが最も情報などの混乱が生じやすいからです。その場面の話がある程度聞けたならば、らその前後に話を広げていくという手順を取ります。これが時間が限られる中でも効率よく事実認識の確認共有ができる手順でしょう。
もし事前の情報で話を聞く場面の焦点を絞りきれない場合(参加の経緯や、健康管理の問題や、事前の訓練管理の問題が一番大きなテーマなのか、あるいは現場で対処なのか、その後の会社での遺族に対する対応などが大きなテーマなのか等々)、まず最初に参加者全員に、今回の事故が個人にとってどのようなものでであったかを話してもらう場面を作ると良いかもしれません。何よりも柔軟さが大切です。
 
<どう振り返るか>
振り返りにおいては、暗かったという印象に左右されず、「惨事後ミーティングをやって、このグループに良かったこと」を明確に意識する(意識的に見出す)必要があります。
惨事後ミーティングは「やったことでかえって具合が悪くなる」ということだけは絶対に避けなければなりません。「こういう話が出て、こういうふうに流れて行ったから、その効果がこう出た」というふうに振り返ることができるようになりましょう。このミーティングをやらなければ、その後このグループがどうなっていったかを予測すれば、その視点で客観的に惨事後ミーティングを振り返ることができます。
またファッシリテーターは、事実認識や感情の確認段階の話を聞きながら、それぞれの参加者人がどのような事実あるいは感情によって苦しんでいるかを、しっかり把握できていることが必要です。そのような視点の振り返りは、実力を上げるうえで非常に重要な振り返りとなります。というのも、参加者の苦しみ(自責や不安や無力感や負担感)を具体的に把握することが、それをどのような対処によって低減させられるかを考える基礎となり、後半の展開や今後のケアに結び付けられるような戦略的な視点につながるからです。
惨事後ミーティングは、情報提供に比べ、一人で練習できないため、どうしても練習不足になります。今後協会も皆さんの練習の為の勉強会をもっと開催していかなければならないと認識しています。そのような機会があれば、ぜひ参加して実力を上げてください。
 
【筆記試験】
試験内容についてはほぼ皆さん理解されているようでした。
情報提供と同じ時間内の課題作業となりましたが、これは時間の使い方の練習にもなります。
実際に皆さんの作業を見ていたわけではありませんが、筆記試験の充実ぶりと情報提供のパフォーマンスを見ていると、作業に使える時間配分を誤っていたのではないかという危惧があります。現場では、相手の集合時間等に合わせて、こちらの準備時間が限られることもあります。目の前の作業に没頭せず、相手の時間(ここでは情報提供の開始時間)に合わせて、自分の作業をコントロールすることも重要です。
 
-追記-
最後に、基礎講座の無力感対策のスライドを十分理解していない人が多かったように思います。もう一度良く理解し、覚えてください。