2025年度(令和7年度)MRC認定試験における主任試験員兼アドバイザー講評

2025年度(令和7年度)MRC認定試験における主任試験員講評

2025年度MRC認定試験における主任試験員兼アドバイザー講評

試験について下園MRSI(主任試験員)より講評をいただきました。皆さんの今後の参考になさってください。
2025年度認定部

———-
 

支援目的調整面接

1.メッセージコントロールについて
メッセージコントロールは、メンタルレスキュー協会が一番大切にしている概念です。 CPSに合格したからといって、メッセージコントロールがもう十分だというわけではなく、たとえMRIでも日々メッセージコントロールについては磨いていかなければならないテーマだと思ってください。 今回の受験者も、ファイブステップや要約・質問はできているのですが、その人、本来が持っているトーンがもたらすメッセージがあまり上手にコントロールできていない部分がありました。例えば、緊張してしまうと、どうしても、表情が薄くなり、かつ言葉のスピードが速くなるために「責めているいる」というメッセージが出てしまっている方がいらっしゃいます。 あるいは集中して考察しているとこれまた表情が薄くなり、あまり共感してくれていないような印象になる人もいました。 ファイブステップ、要約・質問などの基本だけでなく、個人が持っている固有のネガティブなメッセージのコントロールにも気をつけてください。中には、練習の時からずっと指摘されていた、「うっすらと笑ってしまう」癖をきちんとコントロールして試験に臨んだ方もいらっしゃいました。まずは、気づき、そして辛抱強くトレーニングすれば、きちんと修正できるのです。素晴らしいと思いました。
 
2.伝える内容が多すぎる
これはMRC試験で何度も強調されていることですが、情報提供などにおいて、伝えるようとする内容の「情報量が多すぎる」という傾向があります。 たくさん勉強するとどうしても、その勉強したことを伝えたくなります。ところが大学などの授業と違って、現場での情報提供は、相手は惨事のショックを受け、あるいは忙しくしていて集中力もない状態の人、あるいはショックを受けていても、俺には関係ない…と無関心な人達だと仮定してください。 とにかく、内容を絞ることを重視してください。講座でもお伝えしていますが、まずは言いたいことを一言でまとめてみる。あとは、それを単純理論、事例、比喩で補強する、というプロセスをしっかり踏んでほしいのです。 その際、どうしても、自分が勉強して理解した理論つまり、スライドを中心に伝えたくなりますが、現場で一番インパクトがあって理解しやすいのは、やはり事例なのです。受講者の中に上手に事例で導入した方がいて、これも素晴らしいと感じました。
 
3.場を考える(講座で習ったことを伝える場ではない)
支援目的調整面接などをする時には、あらかじめ入っている情報を基に、こちら側でリスクを考察し、対策メニューを立てていきます。これを「白紙的な戦略」と呼んでいます。 支援目的調整面接は、この白紙的な戦略を相手にプレゼンするものではありません。まだ白紙状態のままである「現状に関する情報」を相手からよく聞いて、現実のものにして、それを元に支援メニューを「調整」していくのが支援目的調整面接です。 例えば、今回は、「自殺ということを伝えてないなら、『組織が隠している』という噂が広がるだろう」 と、リスク分析をするのは、とても重要ですが、これはあくまでも、白紙的状態のリスク分析です。本当にどれぐらいのリスクが現場であるのかは、よく聞いてみないと分からないのです。 受講者の皆さんは自分の思い込みのリスク分析や白紙的なメニューを基に、説明を進めている方が多かったように思います。 またどうしても授業で習ったことを伝えたくなる傾向が強いようです。惨事から二週間経っていること、非常に厳しい現場を見たのは数名であること、という現場の特性にもかかわらず、パニック、呆然自失、麻痺という厳しい惨事直後のパターンを説明する人が多かったのです。もう一度、何のために、誰のためにこの説明をするのかという目的意識をきちんと持っていただくといいと思います。
 
4.まとめ
今回ここで指摘したことは、学習が進んできたからこそ生じやすくなるミスです。 残念ながら、今回合格しなかった方も、努力の方向性は合っている、と感じましたし、非常に成長されていますし、合格にもほんの少し届かなかっただけです。 あと少し、事例に基づいた練習量が足りないだけだと感じました。 次回の健闘を期待しています。