2025年度(令和7年度)UCPC認定試験における主任試験員講評

2025年度(令和7年度)UCPC認定試験における主任試験員講評

令和7年8月2日・3日(オンライン)UCPC認定試験における主任試験員講評

認定試験を受験された皆さん、お疲れ様でした。主任試験員講評をHPに掲載しました。『CPS認定試験』『UCPC認定試験』は相通じる部分がありますので、双方の講評を参考にされて、今後の研鑽にご活用ください。
また、今年度より危機介入上級講座(個人支援)がハイブリッド形式となったことに加え、UCPC資格更新(3年に1度、ポイント取得または再受験を選択可能)の機会に、会場で受講される方もいらっしゃいました。
そして、これまで会場で受講したことのない方にも参加いただけるよう、また、すでにUCPCを保持している方で対面でしか実施していないという方のためにも、認定試験をハイブリッド形式で実施することといたしました。

令和7年8月 認定部
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全般

今回のUCPC試験は、オンライン、もしくは対面で試験を受けてくださいました。いつもながら皆さんの真剣な取り組みに頭が下がります。 今後の一層の研鑽のために、主任試験員として、気が付いたことをご紹介しておきます。
主任試験員 MRSI 下園壮太

 

1.MCを一層高い水準に

AIカウンセリングが主流になる時代です。AIのMCは非常に高いので、人間カウンセラーもAIと同等、それ以上のMCを発揮できなければなりません。受験者の多くは、CPS以上ではあるものの、UCPCには、もう一歩という方が多かったように思います。
具体的には、物事や感情を聞くときには、きちんと対応できていても、後半戦で時間が無くなると、急に「押し付け」メッセージが多くなってしまうのです。どんなときでも、相手にどういうメッセージが伝わっているかを意識できなければなりません。
表面的なMCスキルで気になったのは、声が小さい方がいることです。クライシスの方には、大きな声で、はっきりと話してあげないと、相手に負担をかけますし、裏メッセージにとられる可能性も大きくなります。
また、「間」が取れていない方も、どうしても押し付け感、置いてけぼり感を与えてしまいます。たとえ急いでいても、いえ、急いでいるときほど、早口でも仕方ないので、間を大事にしてください。
 

2.“痛み”への感度と焦点設定に課題あり

後半戦で焦り、押し付け感が出るのには、いくつかの背景があります。一つ目は、「痛いところ」の感覚が不十分だということです。
後半は20分しかありません。模試前半で痛いところを十分に把握できていなければ、「どこが一番つらいですか」などと直接的に聞いて、それに沿った展開にしなければならなのです。
今回は、「子供につらく当たった自責」が痛いところだと判断し、そこに時間を使いすぎた方が多かったようです。
しっかり聞いてみると、子供のことより、自分はどうなっているのかという第2の自信の低下と、今後働き続けられるのかという不安が最もつらいポイントであることがわかります。そうなると、次の対処に早めに移ることができるため、余裕のある展開ができます。
「今、何がこの人の一番の苦しみなのか?」を見抜き、あるいは直接聞き、そこに焦点を当てていく力は、多くの方の今後の課題であり、成長の鍵でもあります。
 

3.戦略的な進め方が不十分

後半が押し付けになるもうひとつの背景は、戦略的進め方が不十分であることです。具体的には、目標の変更と時間管理です。
今回は、まず痛いところの情報収集をし、それにより、うつ対策に進む、その中で説明が有効かそれとも直接できること探しに移るのか、という判断をしていく必要がありました。
痛いところのうち、第2の無力感をターゲットにケアするのなら、説明が有効です。今どうすればいいのかという不安をターゲットにケアするのなら、できること探しが有効です。全部やる時間がなければ、どちらかを選択し、残された課題は、次回のカウンセリングに引き継ぐという設計図をかけなければなりません。
その時に、どの要素に、どれぐらいの時間がかかるのかという自分なりの尺度を持っておく必要があります。これは、とにかく経験(練習)で身に着けてください。
特に、「次回面接に上手に引き継ぐ部分」は、皆さんがあまり練習していないようです。そこの部分に自信がないと、このテーマは次回に送る、という目標変更ができないものです。ぜひ先輩に聞いて、次回面接へのつなぎの説明を練習してください。
 

4.うつの認識、説明が不十分

後半に十分な時間が取れないまま、説明に入って、表面的な説明に終わった方が多いという印象です。 今回、説明のためのツールとしてほとんどの方が経緯表を使っていました。経緯表を使えるのは、とても大きな進歩ですが、何のために、どう使うかがポイントです。
今回のクライアントは、自分は疲れていると十分認識しています。ですから経緯表を使って、「こんなにたくさんのことがあるので疲れているはずですよ」と説得する必要などないのです。では、今回は、経緯表をどう使うかといえば、子供を叱ったこと、子供の一言で、大きく傷つきその後体調が急に悪くなった、という出来事を、「3段階で受けたショックは3倍大きい」という説明をするために使うのです。そうすれば、クライアントの第2の無力感を緩めることができます。あなたは壊れていない、大丈夫、昇進にも耐えられるはず、というメッセージを与えられます。
疲れている、だけの説明なら3段階の線(説明)はいりません。
なのに、3段階の線は描いているもの、3倍モードのショックについては語らないというちぐはぐな方がほとんどでした。
また、クライアントのうつ状態を軽く見過ぎている傾向がありました。2月から、4時間睡眠が続き、ライフイベントが目白押しで、休日も休めていないという状況を把握しているのですから、クライアントが表面的に「元気です」と言っても、2段階下から、3段階を想定しなければなりません。 うつを軽く見ているので、死にたい気持ちを確認しなかったり、睡眠の改善だけアドバイスして、1週間後に来てくださいと放置する方が多かったのですが、本当に深刻な方にとって、自助努力で睡眠を改善するだけという1週間は、かなりつらいものだと認識する必要があります。
 

5.できること探しをあせらない

終わりの時間が後2~3分という段階で、できること探しを始める方が何人かいました。できること探しは、「相手」ができることを探す作業です。相手とのやり取りに十分な時間をかけないと、単なる押し売りになります。せっかくそこまで丁寧に進めているのに、最後に押し売り感が強くなって終わるのは、残念です。
クライアント目標という概念を講座で紹介しているのは、クライアントが「自分もこれで努力してみよう」と思えるようなものが見つかると、カウンセリングが美しく終わるからです。
そこを狙いすぎ、押し付けをすると、クライアントは「はい」とは答えますが、もうカウンセリングの終わり時間なので、とりあえずこの場を終わらせよう、という感じになってしまいます。
十分な時間が確保できないなら、できること探しには入らず、「次回面接へのつなぎの説明」をきちんとしたほうが、カウンセリングは美しく終われます。
 

6.終わりに

何回かの不合格を経て、今回合格した方がいらっしゃいましたが、前回までとは違い、格段の成長を見せてくださり、試験員としてもうれしくなりました。ご本人に、これまでと何が違うかと尋ねたところ「長年教えていただいたことが、最近ようやく、納得できるというか、しみこんできた感覚があります」とお答えになりました。
これこそ、メンタルレスキュー協会の実践的試験を受ける意味だと思います。わかっていることと、できることの間には大きな差があります。今回多くの方が、「確実に成長しているが、もう一歩」というところでした。苦しい段階だとは思いますが、いつかは今回の合格者のように「次第に視界が開ける」感覚を得られるはずです。頑張っていきましょう。