2026年度(令和8年度)MRC認定試験における主任試験員講評
2026年度4月度 MRC認定試験における主任試験員兼アドバイザー講評
試験について下園MRSI(主任試験員)より講評をいただきました。皆さんの今後の参考にしてください。
2026年度認定部
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全体的に皆さん、とてもよく勉強し、実力を上げて受験していただきました。合格しなかった方も、あと一歩というところです。以下、共通して意識、改善していただきたい点を解説します。
主任試験員 下園壮太MRSI
1.メッセージに意識を向ける
メッセージ・コントロールは、CPS(心理的応急処置等の基礎)の頃から大変重視している内容です。MRC(メンタルレスキュー・カウンセラー)に挑戦する際も、あらゆるコミュニケーションにおいて「メッセージ」を大切にしてほしいと思います。
例えば、ファイブステップや要約質問などの基本技術だけでなく、MRCレベルであれば「表情」も適切にコントロールすべきです。自分の動画を見直す際は、何を言っているかだけでなく、自分から「どのようなメッセージが発信されているか」を確認してください。
特にアウトリーチを行う惨事現場では、相手がこちらの意図しない「裏メッセージ」として受け取りやすいことを意識する必要があります。
- 例1:亡くなった原因や病名をあえて聞かないことで、「その話題は避けるべきであり、支援の場でも扱わない」というメッセージを与えてしまう。
- 例2:論理的な説明であっても、相手の疑問への回答を後回しにすると、「私の疑問は重要ではないと判断された」という裏メッセージになりやすい。
- 例3:「これだけはやってください」と多くのアドバイスをすると、「これらを全て覚えないと大変なことになる」という不安や負担感を与える可能性がある。
- 例4:あまりショックを受けていない人に対し、初期反応(ファーストショック)を丁寧に説明しすぎると、「そうした反応が出ていない自分はおかしいのではないか」というメッセージになりかねない。
- 例5:スライドに「死にたい」という文字が残っているだけで、「今回の入院は実は自殺だったのではないか」という憶測(裏メッセージ)を呼ぶ可能性がある。
2.出来事をどう捉えるか
MRCの試験対策では、まず「出来事の詳細」を聴く練習を多く行います。これには2つの目的があります。
- 相手の味方になるため:体験を詳しく聴き、丁寧にケアすることで信頼関係を築く。
- 支援メニューへの反映:惨事の性質を理解し、適切な支援を組み立てるため。
しかし、これらも状況によって達成方法が変わります。例えば、惨事を直接体験していない管理職が相手であれば、現場の状況よりも「業務上の苦労」を聴く方が味方になりやすいものです。
今回のケースでは、現場の状況、個人のつながり、あるいは業務全体の話など、どこに焦点を当てることも可能でした。必ずしも「細かい現場の話」をしなければならないわけではありません。しかし、自動的に出来事から始める方がいらっしゃいました。今回のケースでは、悪くはないのですが、パターン化していないか心配です。
また、「惨事」の捉え方についても再考が必要です。多くの人が「倒れた現場」を中心に考えていましたが、「過重労働の末に人が倒れてしまった」という側面での惨事として捉えることもできます。
もし協会への依頼ルートが、過重労働を危惧する産業医からであったなら、後者の文脈で捉える方が場に即しています。さらに、発生から1ヶ月が経過している場合、講義でファーストショックの話を詳しくするのは時期尚早(あるいは場違い)かもしれません。支援目的の調整面接は、その出来事が「組織にとってどのような意味を持つのか」を把握することから始まります。
3.情報提供のボリューム
15分間の情報提供において、伝えたいことが多すぎて情報過多になる傾向があります。先述した通り、情報量の多さは相手への負担だけでなく、不安を増幅させます。現場ではできるだけシンプルな情報提供を心がけましょう。
講座でもお伝えしている通り、まずは「伝えたいこと」を一つに絞ります。そして、その一点を伝えるために必要な要素だけを抽出してください。協会の提供スライドには多くの情報が詰まっています。そのまま使うとほぼ確実にオーバーワークになると自戒しておくべきでしょう。
- 結論を決める
- それを説明する端的な情報を1〜2つ選ぶ(単純説明)
- 比喩や事例で厚みを持たせる
この構成で、1テーマ(多くても2テーマ)に絞って15分間でアウトプットする練習を、ぜひ積み重ねてください。
2026年度9月度 MRC認定試験における主任試験員兼アドバイザー講評
試験について伊藤文MRI(主任試験員)より講評をいただきました。皆さんの今後の参考にしてください。
2026年度認定部
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受験者の皆さん、MRC試験お疲れさまでした。試験科目が3つも有り、緊張の中で実力を出すのは大変だったかと思います。試験に向けて努力を重ねていらっしゃるのも伝わってきました。気づいた点をまとめましたので、今後の参考にして頂ければと思います。
主任試験員 伊藤文MRI
【支援目的調整面接】
1.クライシスにある相手に十分な配慮をしながら情報収集と説明ができるか
今回はどんなことが起きて、どんなリスクがあると捉えましたか?「若い人に辞めてほしくない」という、製造部長の主訴は皆さんが把握されていたようでした。製造現場で事故が起きたけれど、死者が出たわけでも無く、重症ではあったものの命に関わる事故ではありませんでした。現場にいた社員が若く、動揺が大きかった、というものです。どんな事故が起きて、その時にどんな音がして、怪我は出血があったのか、近くにいた社員さんはどんな位置にいたのか、など状況を細かく聴けていた人は少なかったです。製造部長は惨事の当日から2週間も管理職として対応してきた方です。製造部長の事故に対する思いとこれまでの対応も聴きながら、それに対して労いの言葉、態度が無ければ、製造部長の味方になって一緒に目標に向かって話を勧める事は難しくなります。
2.MC(メッセージコントロール)
メッセージコントロールはできている、と答えた方が多かったです。頷き、相槌、驚きはできて、製造部長の話を引き出すことはできていました。しかし、MCはそれだけではありません。9メッセージを意識して面接できていたでしょうか。基礎メッセージで話を聴いて、その上で苦しかったね、頑張ってるね等、盛った要約でメッセージを積み上げていくことや、自分が発したメッセージを相手にどう捉えられるのかを意識してコントロールしていくことが含まれていることも理解しておきましょう。
MRCの試験では口頭試問があります。試験の入り口で緊張もあるかと思いますが、MCの5ステップ、9メッセージ、うつ症状の5+5も訊かれたらすぐに頭に浮かぶくらいに理解しておくと、面談の中でも自然に滲み出て、説得力のある説明にもつながります。
3.事例の使い方
事例はとても効果的です。しかし「こんなことが起きた時、同じように症状が出ていて」、とざっくりしたものだと伝わりません。支援目的調整面接では、事例は同じような出来事を今回の出来事に合うようにアレンジして、例えば「同じように工場内で社員が怪我をする、という事があったのですが、事故現場にいた人たちで考えていることを話してもらい、その事故の経緯や対応についての情報を共有することで、気持が落ち着き、離職防止につながった」というように、そのような効果があるならやってみようかな、という気持ちになってもらう、あるいは、その事故が起きた場所に行きたくない、会社に来たくないという人がいた、みんなそうだよMで安心してもらうなど、何のために、何を期待して事例を盛り込むか考えて盛り込みましょう。今回事例を入れた受験者が非常に少なかったのは残念でした。実際の現場をお持ちの方やロールプレイで「今回、1つは事例を入れてみよう!」といつも「事例、事例」と意識をしていくと自然と入れられるようになります。相手に説明をする時に、今一つ理解できていないかも?と感じた時に思い切って入れてみましょう。
【情報提供】
何を伝え、どう配慮するのか
一言で言うと何を伝えたいですか?と質問すると、「今起きている反応は正常な反応であり、いずれ治まってくる。そのために今やってほしい事を伝えたい」というようにご自身がこれを伝えたいという考えをしっかりまとめていらっしゃいました。ただいざ中身に入っていくと、多くの人が同じようにスライドに、パニック、茫然自失、麻痺の項目を挙げていました。何のためにその3つを入れるのか意識できていたでしょうか?その3つは現場にいて対処した人が、パニックになって間違った対応をしてしまった、腰が抜けて動けなかった、自分は動揺もしないで淡々と対応した冷たい人間だ、と思ってしまう人がいた時に、「それは命を守るために正常な反応です」と無力感を手当てするためのものです。今回現場にいた人がどういう状態であったのか、支援目的調整面接で把握できていた方は、あまりいらっしゃいませんでした。資料に提示することによって、辛い気持ちになる人がいるかもしれない、と想定したら、その手当をする言葉が必要になります。あまり必要でない、効果が薄い言葉の提示は疲弊している受講者を余計に疲弊させてしまいます。資料に入れる言葉一つにも、習った事をそのまま入れるのではなく、その出来事、場面によって目的と効果を考えて使用しましょう。また、やってほしい事が多すぎると負担感が大きくなって、結局はやらない、という事になってしまいます。例えば、やってほしい事は1つ!今の時期は休養です。動画を見る時間を減らして15分でも早く寝てください。でもいいくらいなのです。(1つの例です。パターンでは使えません)。
【その他】
講座の中でもお伝えしていますが、試験と言ってもMR協会では本番と想定しています。相手に信頼してもらえる服装や見え方、視線、音声に気を配り、説明が終わったら共有画面を止めて受講者の表情をしっかり見る、などの配慮を心掛けましょう。
