平成26年度MRL認定試験における主任試験員講評

平成26年度MRL認定試験における主任試験員講評

平成26年10月4日・5日MRL認定試験における主任試験員講評

今回の試験について下園MRインストラクターより講評をいただきました。皆さんの今後の参考になさってください。  2014.10.6 認定委員会
 
1 介入目的調整面接
今回は、ホテル内での殺人事件に際し、事件1週間後に1日だけ入るという危機介入の想定でした。目的調整面接は、1時間後から開始されるケアについて、しかも、これまで調整してきたホテルのオーナーではなく、その妻と調整するというシチュエーションです。
 
(1)MRLとして今回の惨事の後に起こりうる事象をどれだけ想像できるか
惨事後のケアを要請される場合、要請者は「とにかくケアをしてくれ、とにかく何とかしてくれ」と言うだけで、具体的なイメージは持っていない場合が多いものです。しかも、今回は、ホテルのオーナーと、奥様の関心事項が異なっています。 このように、人や状況によってケアに対する要求は異なってきますが、いずれにしても、ある惨事でどのようなトラブルが生じ得るかを、どれだけ具体的に予想できるかが、ポイントになります。
例えば、今回のケースであれば、
 
  • 職員が、ホテル、特に事件があった部屋に近づけなくなる
  • 職員からうわさが広がる、あるいはインターネットなどで、風評被害が広がる
  • 一時的な感情で、仕事を辞めたくなる
  • 知らない間に関係者がイライラし、相互の信頼関係が崩れる
  • 罪悪感から、事件との関係を過剰に考えてしまう
  • 子供や女性が特に強く影響を受ける
  • 一般のお客さんに対しても、恐怖心を持つようになる
  • マスコミから狙われ続けると、何か悪いことをしているような感じがしてくる
  • マスコミに対応すると、インターネットなどで不必要に叩かれることがある。
等を予測できます。これらの予想を介入を要請した方の関心に合わせて提示しながら、介入目的や介入要領を確定していきます。
 
(2)展開力を発揮する
1時間後にケアが始まるという状況の中で、「味方になる」と、「必要な調整する」を両立しなければなりません。当然味方になることから始めますが、ずっと話を聞いているだけでは、結局何も調整しないままケアに入ってしまい、ケアが終わってから「予想していたケアと違った。もっとほかのことをしてほしかった」などと言う結果に終わってしまいがちです。
味方になるための話題で話を聞きながらも、自然な流れで必要な調整に入れるような展開力を磨く必要があります。具体的には、話題を調整に関わる「質問」につなげるのですが、当然、流れが変わるので、メッセージコントロール講座で学んだように、質問の前後に適切な「質問の背景説明」を加えることが必要です。
 
2 基礎講座課目講師
(1)時間配分
今回は、時間配分が不十分だったように思います。受講者とのコミュニケーション、受講者が理解できるゆっくりした話し方に気を付けていたのはとても良いことですが、結果として、持ち時間の間に指定された内容を終了できなくなりました。 与えられた範囲の中で軽重を適切に判断し、重要な内容は、事例や比喩で厚く説明し、軽微な内容は、思い切って軽く説明する勇気が必要です。
 
(2)話し方の適切な「変化」
ゆっくり、はっきり話すのは良いのですが、良い話し方でも、それが続くとなんとなく飽きてきます。スピード、声の大小、事例やユーモア、間を入れる、受講者と交流する、質問形式にするなどの変化を持たせる練習をしてください。
 
(3)質問の受け方
まず、質問者の質問を「要約」、つまり繰り返すといいでしょう。 質問の真意に的確に答えることができますし、他の受講者にも質問の意図が伝わるための配慮にもなります。 質問へ対応する様子は、講師のカウンセリング力を想像させます。質問の内容に正確に答えることだけを考えず、メッセージコントロールを第1に意識してください。
 
(4)印象コントロール
講師にはそれぞれ、いわゆる第一印象があります。MRLは協会の顔でもありますので、少々てきぱきすぎた印象や少し緊張している印象の場合、受講者がよりリラックスして講義に集中できるような、より柔らかい印象にする努力を続けていく必要があります。 例えば、自然体の笑顔、自分の内面(ダメな部分、弱い部分など)を打ち明ける、ユーモアを交えるなど、自分なりの工夫を続けてください。

平成26年5月24日MRL認定試験における主任試験員講評

今回の試験について下園MRインストラクターより講評をいただきました。皆さんの今後の参考になさってください。  2014.5.28 認定委員会
 
■基礎講座(課目講師)について~講義における内容の強調法~
講義では多くの情報を伝えなければなりませんが、受け取る側のキャパシティを超える情報を提供しても、結局未消化となり、むしろ不全感を持たれてしまいます。 講師としては、今回の講義では、「最低限ここだけは分かっていただきたい」という内容をある程度限定し、そこをしっかり伝えていかなければなりません。しっかり伝えるためには“強調”することが必要ですが、ただ「ここが重要です!」と言うだけでは、強調したことにはなりません。
それには次のようなことに気を付けると良いでしょう。
 
  • 強調したい内容には、事例、比喩をつける。
  • クイズ形式、短い討議にするなど、受講者に問題意識と緊張感を持ってもらう。
  • 時間をおいて何度か触れる。
  • その部分をまとめたペーパ―等を渡す。
  • メッセージコントロールで、それ以外の部分との差を印象付ける(目線の配り方、声の大小、話し方のスピード、間、表情、要約・質問などの変化など。特に事例を話す時は、テンポの良い語り口、例えば体言止めの多用などを練習すると、臨場感が増します。)
MRLを目指す人にはまず、①の事例・比喩を使い、⑤のそれまでと違う話し方をする練習を積んでもらいたいと思います。ラジオドラマやナレーター、落語家などの話し方は参考になります。