2022年度(令和4年度)CPS認定試験における主任試験員講評

2022年度(令和4年度)CPS認定試験における主任試験員講評

2022年(令和4年)7月9日・10日(オンライン)における主任試験員講評

受験者の皆さん、お疲れさまでした。
今回はこれまでにない多くの方が受験されました。そのほとんどの方が講座の内容を理解されており、試験でも真剣に取り組まれている姿勢を強く感じました。
今回の認定試験について気付いた点をいくつか総評としてまとめましたので、今後のスキルアップの参考としてください。
主任試験員 MRインストラクター 伊藤朗・前田理香
 
1.メッセージコントロール
5ステップについては、ほとんどの方が、興味津々や了解、保留のメッセージを表情や応答で上手く表現できており、苦手なものを克服してきたことが伝わってきました。
ただ、驚きが小さい方が多かったように感じました。驚きのメッセージは、日常では起きない出来事に遭遇しとまどっているクライアントに「大ごとだね」のメッセージを伝えるのに有効なメッセージであり、大ごとだからこそCLに様々な惨事反応が出ていても「無理も無い」ことを伝えられる大切なメッセージです。CLが体験を話してくださるときは、しっかりと驚けるように練習していきましょう。
また、緊張が高まったり、どうして良いか分からなくなると笑顔が出てしまう方もいらっしゃいました。一方で、眉間にしわをよせながら苦しい表情で、ワンちゃんの鳴き声や倒れた音に大きくリアクションしていた人もいらっしゃいました。
上手にMCを出してる方でも、図を書くという行為が加わると、大切な話をしている時に相手を見ていなかったり、あいづちやうなずきが小さくなってしまっている人が多くみられました。書いているときこそ、5ステップが小さくなってしまうので意識して大きくする必要があります。
試験でご自身の動画を録画された方は、今一度、5ステップを意識しながら動画をご覧いただければと思います。
要約をしている人が少なく、ただ状況を確認するだけの質問(直Q質問)になっている方も多かったように感じました。
また、緊張のせいか「CLの言葉をそのまま繰り返す」方が目立ちました。惨事のCLに対して言葉をそのままに繰り返すと、それはCLの苦しみを大きくしてしまう恐れがあります。
例えば、「看護師だったのに、頭が真っ白になって何もできなかった」というCLに、「看護師なのに何もできなかったんですね」と繰り返したらどうでしょう?CLは「やっぱり看護師なのに何もできなかったなんて、自分はなんてダメな人間なんだろう」と、より自責を深くしてしまうことになりかねません。緊張した状態でも「繰り返す癖」が出てこないよう、「盛った要約」や「代弁要約」を磨きましょう。
中には「看護師といっても、獣医さんの看護師さんじゃないですよね。動物だと人間と違うから難しいんじゃないかと私は思いますが・・・」と、COの感想として自責を緩める発言をしていた人がいらっしゃいましたが、このように第三者の客観的な意見として伝えることも、自責を緩める効果があります。
 
2.体験を聴くということ
受験者全員が、「CLの体験を丁寧に聴いていく」ということは意識できていました。
中には、「いったいどうしたらいいでしょうか?」というクライアントに対して、対処の説明に入る前に、体験を聴く理由をCLに説明してから始める方もいて、CLへの配慮が感じられました。
ところで、何のために体験を聴くのでしょうか?
CLが(CLの視点を通して)感じた情景・音・臭い・感触などの体験を教えてもらうことで、CLの苦しさの背景を理解し、共感するために体験を丁寧に聴きます。そして、その中にある4つの痛いところ(自責感、無力感、不安感、疲労負担感)を受け止め、要約をすることでそれらを少しでも軽くするために聴いていく必要があるのです。 
そのためには、どの程度詳しく聴けばいいのでしょうか? 今回、ほとんどの方がコンビニ前での事故の様子だけを聴いて図にしたところで、そこで止めてしまっていました。どれくらいの大きさの車だったのか、周囲に人は何人くらいいて、その人達は事故の後何をしていたのか、飼い主の様子はどうだったのか、看護師のCLが現場に駆けつけなくても十分対応ができる人数がいたことや、CLからの見え方など何も分かっていないのに「全部聴いてイメージできたのでもうこれ以上聴かなくても良い」と思い込んでいる人が多いように感じました。
中には、最初から事故の話に興味が無く、CLの仕事のストレスばかり聴こうとする人もいました。事故以前のことを聴くこと自体は間違いではありませんが、限られた時間の中では、聴く順番に注意が必要です。
図を描くこともメッセージになっていることを今一度思い出してください。COのメモでは無く、CLの体験を丁寧に扱っているということも伝えないといけないと考えると、手元ばかりを見ていてCLを見ていなかったり、図が小さくてCLから見にくかったりといったことにも気をつけなければなりません。図を描くことはCLとCOの共同作業なので、CLの顔を見て表情を確認しながら「一緒に作り上げていく」ことを意識しましょう。
   
3.自責の扱い方
CLが話をする中でいくつかの自責が語られましたが、ただ繰り返すだけだったり、「そんな風に自分を責めているんですね」や「そう思うのも当然ですよ」と応答するだけの人が多かったように感じました。CLに自責をもつに至った背景や現場の出来事を詳しく話してもらうことで、自分がその時にできたこと(できなかったこと)を再確認してもらうことができます。これまで誰にも言えなかったことを話せたことによる懺悔効果や新たな視点を得られることもあります。
自責は0にすることはできませんが、配慮しながら触れ、受け止めてから、緩められるなら緩め、できなければ話題を変える、ということを覚えておいて下さい。
 
4.症状説明
今回の試験では、ボールの比喩、電池の比喩、オリジナルの比喩などで説明を試みていました、惨事の反応の変化を説明するのに、疲労の三段階を使っている人が多く見られました。 それぞれの資料には、それぞれの目的があり、CLの状態に合わせてアレンジが必要です。
また、CLが理解できていない表情をしているのに、強引に説明を続けるケースもありました。
もう一度、基礎講座で学んだスライドの意味や目的を確認し、CLの状態に合わせて説明できるようにしておきましょう。
比喩が苦手な方は、ぜひ事例を用いて説明できるように工夫してみましょう。事例は自分が経験したことでないと使ってはいけないと思われている方がいらっしゃいますが、動画の事例や実技指導者が話していた事例などもどんどん使ってみて、事例を使ったときのCLの納得感の強さを体験してみてください。
 
5.構造化面接
構造化面接の手法は、「混乱していてもなんとかできる」ものではありますが、あくまでも「手法」であって、構造化面接を手順通りに進めることが目的ではありません。
CLが「こんな状態がいつまで続くのでしょうか?」とか「どうしてこんな風になってしまったのでしょう?」と不安を口にして質問しているのに、「まだ体験を聞いていないので」とか「他に訊くことがあるので」と先送りしようとした人が何人かいらっしゃいました。
CLの不安を受けとめ、そこまで聴いた内容や一般論を交えながら、安心できる程度の説明をしたあとに、再度体験にもどって詳しく聴くようにしましょう。

最後に、今回合格された方は、さらに学びを深め、様々なケースに対応できる力をつけて頂きたいと思います。
残念ながら合格されなかった方も、あきらめることなく再チャレンジしていただければと思います。CPS認定試験は協会でこれから学んでいく多くの知識やスキルのベースとなる部分をみている試験です。
このベースをもう一度じっくりと学ぶことができる機会を持てる、というポジティブな気持ちで再チャレンジしていいただければと思います。

2022年(令和4年)11月26日・27日(オンライン)における主任試験員講評

受験者の皆さん、お疲れさまでした。
ほとんどの方が講座の内容をよく理解されており、試験でのパフォーマンスにそれを出そうと努力されているのを強く感じました。
今回の認定試験について気付いた点をいくつか総評としてまとめました。
1.メッセージコントロール
2.臨場感をもって体験を聞くこと
3.症状説明すること
の3つの視点から解説しましたので、今後のスキルアップの参考としてください。
主任試験員 MRインストラクター 伊藤朗
 
1.メッセージコントロール
5ステップについては、ほとんどの方が、一番注意を払って取り組んでいたことがよくわかりました。
初対面のカウンセラーはどんな人なのだろうか? 自分の話しをちゃんと聞いてくれるだろうか? 
そんな不安をもったクライアントは、恐る恐る話し始めて、様子をうかがっているかもしれません。そんな時に5ステップは短期間での関係性の構築に役立ちます。
ただ、試験という慣れない環境の中だったのか、その5ステップがメッセージとしてクライアントに伝わっていない場面を多く見受けました。
今回の皆さんのパフォーマンスでは、5ステップの「興味津々」が少し弱いように感じました。「興味津々」は小刻みなうなずき、切れの良いうなずきと「はい」「うん」「ええ」などのバリエーションの言葉を入れて行いますが、図やメモに気を取られたのか、うなずきが曖昧になってしまい、クライアントに「もっと教えて」のメッセージが伝わっていない方がいらっしゃいました。
 
2.臨場感をもって体験を聞くこと
受験者全員が、「CLの体験を丁寧に聴いていく」ということを意識されていたと感じましたが、臨場感を持った聞き方が不十分な方が多かったようです。
では改めて、なぜ体験を聞くことを重要視しているのでしょうか。それは、惨事体験をした人に、出来事の大変さや苦しさ(4つの痛いところ)を話してもらうことで、共感したり、短時間で味方になることができるからです。
つまり、CoがまるでCLと同じ体験をしているかの如く、リアルな反応をしながら、CLの話を聞き、その結果、「ものすごい経験をしたね」というメッセージが出るようにしたいのです。
そのために、講座では図を使ったり、出来事を時系列で詳しく聞くというコツを紹介してきました。
今回、皆さんは図を使ったり、時系列に聞くことはできていたのですが、同じ出来事を再体験しているというより、なんとなく事情聴取的になっていた方もいらっしゃいました。
私がクライアントの体験を聞くときに心がけていることは、体験を聞きながらも、その時のクライアントの心情はどんなものだったのか?をリアルに想像しながら聞くことです。そうすると、自然にそれがCoの表情にあらわれ事務的な対話ではなく、同じ出来事を一緒に再体験するような雰囲気(臨場感)が作れます。
今回の設定で振り返ってみましょう。(  )の中がCoの想像です。
今回の設定は、部下のAさんが出勤しないことから、クライアントが自宅を訪ねる場面から始まりました。
普段遅刻などしない部下が無断欠勤して連絡がつかない状況でしたがクライアントその時は疲れて眠っているのだろう、と思って午後の営業に出ました。(そんな大事にはなってないはず…)
外出先から会社に連絡したところ、いまだAさんは会社に来ていないことを知らされます。(Aさんに何かあった?)
知らせを聞いたクライアントは、会社に戻らないでAさん宅へ向かうことを決めます。(おかしい、〇〇かな?  それとも×△なのかな…)
Aさんの自宅まで来て2階の部屋をのぞくとTVがついているのがわかりました。(よかった。Aさんは部屋にいる)
しかし、玄関まで行ってチャイムを鳴らしても中から反応はありません。(どうして出てこないのだろう。留守だったらいいけど、中で倒れているのではないか?)
次に管理人を呼んで部屋をあけてもらいます。(なんともないと思うが、ここは責任者の私が部屋の中を見よう、Bさんに何かあってはいけないし)
本当は怖かったけれど立場上自分が先頭で部屋に入ることに。部屋の中は暖かく、シチューの匂いがします。(良かった、生活感があるのでAさんは留守にしているだけかも知れない、それとも寝ている?病気?)
TVが映っているのはわかるが、Aさんの姿は見えない(なんとかAさんはここにいないで欲しい)
ゆっくりと歩を進めるクライアント。その後ソファに眠っているように座っているAさんを見つけます。(眠っているだけであって欲しい)
見つけた後Aさんに触れるクライアント・・・・・
こうした想像をしながら話しを聞くと、クライアントと同じような体験することができます。臨場感をもって話しを聞く、皆さんも是非実践してみてください。
尚、今回の設定でAさんが亡くなられた理由について、直接確認された方は少なかったようです。この短いロープレの中で、確認するタイミングがまだきていなかったのかも知れません。
しかし、事前情報をもらった時に、Aさんの死因はなんだったのか?という素朴な疑問を持つべきですし、その疑問をタイミングをみて確認することは必ずしなければなりません。病死だったのか、自殺だったのかでクライアントの自責感の重さが大きく変わっている可能性があるからです。
 
3.症状説明をすること
 今回の試験では、図を使って症状が軽減していくことや、疲労の3段階について説明される方が多くみられました。図解は言葉に加え、視覚にも訴える強力なツールとなりますが、一方でこちらが伝えたい意図とは違ったメッセージとして受け取られる可能性があることを知っておかなければなりません。
惨事反応が落ちていくグラフも、縦軸横軸の説明や落ちていく曲線の角度など、なにげなく書いたものがネガティブ(私はこのグラフのように治っていない、など)に受け取られないようにする配慮が必要です。
また、基礎講座で学んだことを正確に伝えようとするあまり、説明の押し付けになっている方もいらっしゃいました。
例えば、講座では「反応」という言葉を使って惨事の症状を説明していますが、クライアントには理解されない場合もあります。理解されないまま説明が続くと、どうしても納得感は得られず、それを感じたCoは益々説明に力が入ってしまうという悪循環が起きてしまいます。良く相手の反応を見ながら、適切な言葉や説明方法を探していきましょう。 そんな時に有効なのが事例を使った説明です。自分と同じような体験をした人が元の元気な状態に戻っている、という話はクライアントにとって何よりも安心できる情報だと思いませんか?
事例は自分が経験したことでないと使ってはいけないと思われている方もいらっしゃいますが、動画の事例やロープレでやった事例などもどんどん使ってみてください。自分が体験してないことを話すことに抵抗がある方もいらっしゃいますが、目の前のクライアントを支援するために私たちは今面談をしていることを忘れないでください。そして、事例を使ったときのCLの納得感の強さを是非体験してみてください。

最後に、合格された方は、さらに学びを深め、様々なケースに対応できる力をつけて頂きたいと思います。今回残念ながら合格されなかった方には、あと一歩のところであったことをお伝えしておきます。この講評を参考にしていただき、もう一度じっくりと学ぶことができる機会を持てる、というポジティブな気持ちで再チャレンジしていいただければと思います。