2025年度(令和7年度)CPS認定試験における主任試験員講評
2025年(令和7年)7月5・6日(オンライン)における主任試験員講評
受験者の皆さま、大変お疲れさまでした。記録的な暑さの中、コンディションを整えるのも大変だったかと思います。
試験会場での皆様の真剣さと緊張は、試験員にも伝わってきておりました。
以下に主任試験員として気付いた点をまとめましたので、参考にしてください。
主任試験員 MRインストラクター 香川武久
1.5ステップを磨く
受験された方、全員が5ステップをかなり練習してこられたことがわかりました。最初に基礎1を受講された時よりも、受験の時はとても上手になっていました。特にうなずきのバリエーションとリズムが良くできていて、更に表情を付けてうなずきあいづちをしながら、聞いてるよメッセージを出していました。しかし、細かいところでは保留のメッセージが多くクライアントを不安にさせてしまったり、逆にクライアントが自分を責めるようなことを話した時には、保留しなければならないところでうなずいてしまっている方もいらっしゃいました。また、図を描き始めると、図を描くこととに注意が向いてしまい、どうしてもMCは薄くなってしまいます。「子供が急に飛び出して」「キキィー!というブレーキ音と・・・」というところでは、驚きで「大事だね」メッセージを出して、更に臨場感を出しながら事柄を聞いていく必要があります。2.事柄を聞くということについて
3週間前の事故について、事柄の概要を確認することは皆さんできていたように思います。ただ、それは何のための確認なのか?という意識が総じて不足していたように感じました。クライアントの状態にあった説明をするための情報収集という意味ももちろんありますが、クライアントが「自分がどんな体験をしたかをカウンセラーにわかってもらえている」と感じてもらう(=味方になる)という意味も大きく、そう考えると体験の聞き方(メッセ―ジの込め方)もおのずと変わってくるのではないでしょうか。
体験の細部まで聞ききれていない=事柄を聞けていないのに、例えば「それは大変でしたね」と言ってしまうと、どんなメッセージがクライアントに伝わるでしょう。
クライアントは、「まだ何も話していないのに、カウンセラーは私の何が大変だと思ったのだろう?」と考えてしまいます。
「目の前で、子供が飛び出し、右折車が急ブレーキをかけた。子供にはぶつからなかったが大声で泣いた。私は何もできなかった。」というクライアントに対して、「それは大変でしたね」と応答された方が何人かいらっしゃいました。
さて、何が大変だったのでしょうか。
目の前で事故を見たことが大変?子供が泣いたことが大変?何もできなかったことが大変?
どこに大変のポイントがあるのか、カウンセラーがどう理解したのかが伝わってきません。
そこで盛った要約が必要になってきます。例えば、何もできなかったにポイントを置くと、
「自分の目の前、手を伸ばせば届く範囲にいた子供が、信号が青に変わった瞬間、お母さんが止める間もなく横断歩道へ飛び出してしまった。そこに運悪く車が右折してきてしまって、キーッというブレーキ音とともにギリギリのところで止まった。幸い子供にはぶつからなかったが、子供は自分の手の届く距離にいたのに、何もできなかった……と思ってしまうんですね。もしぶつかっていたら、子供は無事ではなかった。近くにいた私が止めることができていれば、危険な事は起こらなかったのに……と考えてしまうんですね。」と、盛った要約をしてから、「それは大ごとでしたね」とすると、どうでしょう。
クライアントに、「自分がどんな体験をしたかをカウンセラーにわかってもらえている」と感じてもらう(=味方になる)ことができるのではないでしょうか。
また、人通りはどうだったのか。沢山あるいは数人歩いていて、多くの人が駆け寄って何かしようとしたのか。他の人はできたのに、自分はできなかった、というのは自責を強くするものです。今回は周りに人はいませんでしたが、周りの状況と言うのも聞くことを忘れないでおきましょう。
3.自責感と図を書く目的について
自責感はゼロにはできません。ですが、講座でお伝えしている自責感対策は3つありました。 「安心できる場で自責の念を表現」「語ることにより自責でない事実認識の思い出し」「新たな情報の提供 自責でない事実」というものです。
事柄を細かく、臨場感を持って聞くのは、例えば今回のお話で「語ることにより自責でない事実認識の思い出し」という観点で聞くとどうでしょう。
以下は皆さんが確認をしなかったところです。
片側4車線の道路、車通りはどうだったか、多かったのか少なかったのか → もし、車通りが多かったら、車が近づいてくることに気が付くことは難しかったのでは?
クライアントはどの方向を見ていたか → 右折という事は、車が来たのは背中側ではないか。正面からの左折ではないとすると気が付くのは難しかった?
近くにいた子供は、今にも走り出しそうなそぶりがあったか → 子供は急に動くものではないか?
コンビニには駐車場はあったのか、あったとすれば車がいたのか、周囲の明るさはどうか → ぼーっとしていたとはいえ、他に気になる動くものは無かったか。
どうでしょう。クライアントに、「そうだった」と気が付いてもらえる一助にはならないでしょうか。
図にする目的は何だったでしょう。ただ図を描いた(描けた)ことに安心してはいなかったですか? 図にしたからこそ、解らない部分を更に詳しく聞くことができるのです。
また、事柄を詳しく聞いていく中で、自責感を軽くしようと思われたのかもしれませんが、「ドライバーの不注意では?」「子供は母親が見ていてあげないと」というようなカウンセラーの発言は、クライアントの「自分が悪かった」という辛さに寄り添えなくなってしまいます。
ご自身が持っている価値観をもう一度整理してもおきましょう。
さて、「その場から動けず、気が付いたら誰もいなくなっていた」。皆さんはクライアントに何が起きていたか、理解できていたでしょうか?
ショックな出来事の直後に起きる「茫然自失」という反応が起きたためにクライアントは動けなかったのです。「何もできなかった」と自責感が強いクライアントに対して、命を守るための「パニック」「マヒ」「茫然自失」という3つのプログラムの中の1つがが発動したという事を説明し、無力感の手当てをしてから、でも自分を責めてしまう気持ちにがあるんだよねとクライアントの苦しさに寄り添っていきます。その時に、事例や比喩を入れて説明すると、更にクライアント自身に起こっていたことを理解していただくことができるはずです。
4.クライアントの疑問に応える説明
クライアントは「この状態はいつまで続くの?」という質問をしましたが、殆どの方が応えられていませんでした。クライアントは「ずっとこうなの?仕事でもミスしてしまう、私は壊れてしまったの?いつになったら良くなるの?」と第2の無力感を感じ、とても不安になっているのです。それに対して、状態を重ねて聞いて「それは辛いですよね」と言ってもクライアントは楽にはなりません。「いつよくなるか、確実な事は言えない」と、具体的な期間を答える事を躊躇してしまったのはなぜでしょう。
「こんな状態がいつまで続くのか」と繰り返し訴えるクライアントに対してご自身の行った説明は、結果としてクライアントにどのようなメッセージとして伝わっているでしょうか。
嘘をついてはいけない、正しくあるべきだという価値観は解ります。内心では、ファーストショックからセカンドショックになってきているのではないかと思った方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、メンタルレスキュー協会のカウンセラーは、クライアントの役に立つことが第一です。
いつまで続くのかに答えないという事は、クライアントに、カウンセラーが言及できないくらい私の状況はひどいの?というメッセージが伝わってしまいます。
不安情報だけで安心情報が無い、これではクライアントの役に立つとは言えません。
例えば、こうお伝えしたとします。
「3週間たっても、辛い状況が変わらず、ひどくなってきている気さえするのですね。でも大丈夫です。私が今からお伝えすることに気を付けていただければ、あと3週間くらいで気にならないくらい良くなりますよ。」「その気を付ける事というのは、睡眠なんです。」
どうでしょう。カウンセラーとしてクライアントを安心させ、回復を促すアプローチになっているとは思いませんか?
クライアントを支えるためには、良くなると言ってあげることが大切です。対処を知っている私たちです。対処方法をお伝えするチャンスでもあると考えてみたらどうでしょう。
出来る事探しをしていけば、「治る」と言ってもらえた安心感、カウンセラーに話せたこと、味方がいる安心感=第3の無力感の手当などで、少しずつ楽になっていくのです。
説明は、クライアントの状況をしっかり聞いて理解してからでないと、いくら効果的な説明をしてもクライアントには入っていきません。まだ、殆ど話を聞いていないのに説明を始めてしまう方もいらっしゃいました。
また説明には事例、比喩が効果的ですが、事例で説明してくださった方は、あまりいらっしゃらなかったのが残念でした。クライアントの状況を聞いて、その上でクライアントに近い事例を出していく事で「私と同じような経験をした人も、そんな風にして回復していったんだ」と安心し、それだからこそ、出来る事探しで話したことに取り組んでみよう、という気持ちにもなるのです。
5.全体を通して
残念ながら、「死にたい気持ち」について、確認された方はいらっしゃいませんでした。CPS試験の時間の制約から、症状確認が終わっていないという状況は理解できます。しかし、大事な事でもありますので、本来は必ず確認する項目だと思ってください。全体を通して、基礎講座で学ばれた内容は、しっかり頭に入っていると感じました。ただ、それを表現するという事がうまくできていないもどかしさも同時に感じました。特に、要約が少なかった。盛った要約はさらに少なかったように思います。質問と要約はセットということは解っておられると思うのですが、実際のカウンセリングになると、盛った要約と質問が絶対に必要だと認識しておいてください。引き続きトレーニングを重ねていく事によって、表現することもできていくと思います。今後に期待しています。
2025年(令和7年)11月22日・23日(オンライン)における主任試験員講評
受験者の皆さん、お疲れさまでした。多くの方が、基礎講座以降、大きく成長されたことを実感した試験でした。
今回の認定試験について気づいた点をいくつか総評としてまとめましたので、今後のスキルアップの参考としてください。
主任試験員 MRインストラクター 前田理香
1.メッセージコントロール
5ステップについては、ほとんどの方が、興味津々や了解のうなずきをリズムよくおこなっており、タイミングも声の大きさも意識していることが伝わってきました。一方、驚きについては、表情豊かに大きく表現されている方と、あまり表情も変わらず驚いているように見ない方がいらっしゃいました。
特に今回は、クライアントが日常通いなれた道で人が倒れており、自分以外誰もおらず不安と怖さの中で行動したことを「カウンセラーは、あなたが不安と恐怖の中で必死に行動したことを理解しているよ」「そういう時に迷うのも無理もないよ」という思いを込めて表情豊かに表現していただきたかったです。
驚きのメッセージは、ショックな出来事に遭遇したクライアントに対して「大ごとだね」のメッセージを伝えるのに有効であり、またその後に現れる惨事反応に対して「無理も無いよ」を伝えられる大切なメッセージですが、惨事の場合は体験に対してしっかりと驚けるように練習していきましょう。
また、クライアントが自責を語る際に保留のメッセージを出すことも大切です。中にはクライアントの話を理解したというつもりで興味津々や了解のうなずきをされた方がいらっしゃいました。
理解したことを伝えたいのであれば、「AEDのところに『大きな音が鳴ります』と書いてあると、そのまま外していいのか迷いますよね。
それで看護師さんが来てくれてAEDを持って行ってくれたことで、自分は何もできなかったって思っていらっしゃるんですね。それは苦しいですね」と、盛った要約と併せてどう理解したかを伝えるようにしましょう。自責はゼロにはなりませんが、緩めることはできます。緩められない場合も対処の仕方がります。テキストにある自責の対処について、もう一度復習をしておきましょう。
質問については、状況を確認するだけの質問(直Q質問)になっている方が多かったように感じました。自責を抱えるクライアントは、直Q質問をされると、問い詰められている感覚に陥ります。質問は必ず質問の意図がわかるように要約をするか質問の意図を説明しましょう。
今回、声の表情が素晴らしい方がいらっしゃいました。言い回しだけでなく、間合いや声の高さ低さ、速さなどについてもバリエーション豊かにクライアントの気持ちに寄り添っていることが伝わる声の表現でした。
皆さんも、顔の表情だけでなく声の表情も磨いていきましょう。
2.体験を聴くということ
受験者全員が、「CLの体験を丁寧に聴いていく」「図を描くことで、クライアントが見たこと感じたことを理解しよう」ということは意識できていました。クライアントの体験の中には4つの痛いところ(自責感、無力感、不安感、疲労負担感)が隠れています。ただ体験を共有して共感するだけではなく、その中の痛いところを理解し受け止め、盛った要約でその痛さを少しでも軽くするためのアプローチを試みる必要があります。
限られた時間の中で、必要な部分を詳しく聴くためには、どこから詳しく聴けばいいのでしょうか? 今回、「帰宅途中」ということで会社から自宅の経路を聴いた方がいらっしゃいました。広範囲なところから始めると、そのやり取りだけでかなりの時間を費やしてしまいます。まずは出来事が起きた場所でのことを詳しく聴き、そのうえでその場所が自宅や会社からどれくらい離れているのか、迂回するなど日常生活にどの程度影響が出ているのか、と周囲に広げた方が、クライアントにカウンセラーが出来事自体を大切に扱っていることが伝わります。
図を描くことは、あくまでもクライアントの辛さ苦しさを理解するためのツールです。書くために下を向いていたり、書いている画面を見ている場合も、うなずきやあいづち、表情を意識しつつ、クライアントの表情や様子にも気を配りましょう。
3.説明をする
今回の試験でのクライアントは、惨事自体も人の生死にかかわることですが、それ以前から不眠が続いており疲労の蓄積が想像できる状況でしたが、まだ体験(状況)を詳しく聴いている途中でのクライアントから質問に、早く答えようとすぐに説明する方が多かったように感じました。一方で、クライアントの「この状態はいつまで続くのでしょうか?」という質問に、「眠れない状況が続いたらいつまでつづくか不安になりますよね」と、まずはクライアントの不安を受け止めてから説明をされた方がいらっしゃいました。素晴らしかったと思います。
また説明の際に、クライアントが語った具体的な症状を挙げながら説明すると、クライアントにはわかりやすく、その症状がどう変化するのかがわかると、クライアントの安心にもつながります。
「蓄積疲労の三段階」や「惨事反応の変化」、そしてそれらが組み合わさった場合の説明など、基礎講座で学んだスライドの意味や目的を確認し、クライアントの状態に合わせて説明できるように復習しておきましょう。
特に、事例は最も効果的な説明手法です。是非、事例を用いて説明できるように工夫してみましょう。
