2025年度(令和7年度)MRI認定試験における主任試験員講評
2025年11月2日 MRI認定試験における主任試験員講評
今回の試験について下園主任試験員より講評をいただきました。皆さんの今後の参考になさってください。 2025.11.14 認定部
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皆さん大変よく準備して試験に臨んでくださり、個々の成長を十分に感じるパフォーマンスでした。共通する改善点を記載します。
全体的な印象としては、講義の方はかなり良い発表ができています。一方で、支援目的調整面接は、全体としてまだトレーニングが不十分であると感じました。。
MRSI 下園壮太
1 支援目的調整面接について
現場は千変万化です。その現場に応じた適切なメンタルヘルス支援を行うための調整を行うのが、支援目的調整面接です。今回感じたのは、まだその「場」に合わせることが十分にできていなかったという点です。言い換えると、これまで学習してきたことと、現場の特性を察知してそれに合わせる、いわゆる“応用”のバランスがまだ不十分な人が多かったということです。
今回のシナリオでは、トップの男女関係のトラブルに対して、マスコミが集中する中でのケアという設定でした。
これまで練習してきたシナリオでは、自殺を隠している企業などに対して「情報を開示する」ことが重要なポイントであると学んだと思います。しかし、この「情報を開示する」という対応を、今回のシナリオにもそのまま適用してしまった方が多かったのです。
自殺の場合、構成員それぞれが「いじめだったのでは」「過剰労働だったのでは」などと、自分自身のメンタルヘルスに関わる疑心暗鬼が広がる恐れがあります。そのため、情報開示は非常に有効です。
ところが今回は、トップの個人的なトラブルがテーマです。このことにゴシップ的な関心はあっても、構成員のメンタルヘルスに直接影響するものではありません。
この状況で情報開示を強く勧めてしまうと、組織側にとっては「マスコミに攻撃されていること」と変わらなくなり、支援者が「味方」にはなりません。
学んだことは多くの場合で有効ですが、それを今回適用するのか、しないのか。相手側の気持ちや状況をきちんと想像したうえで判断する練習をしていただくと良いでしょう。
2 基礎講座の科目講師について
皆さん、大変高いレベルでパフォーマンスができていると思います。ただ、それぞれの個性に応じて修正すべき点も残っていますので、今回指摘された箇所については、引き続き努力して改善していってください。内容についてはかなり理解できていますが、この場合も「場」についての理解が、もう少し深まると良いと思います。
例えば、自責のスライド(原始人が川に流される事例で説明することが多いスライド)ですが、これはMCでも、自殺念慮対処でも、惨事対処でも登場します。それぞれの講座の文脈の中で、何を伝えたいのかが異なるため、同じスライドでも三回同じ説明ではいけません。強調すべき部分が異なる必要があります。
講座の中で一つのスライドが持つ意味、いわゆる「スライドのつながり」の理解が、もう少し深まると良いと思います。単体のスライドとしてではなく、講座全体の構成の中で見直してみると、違う視点が見えてくるはずです。ぜひ先輩方にも質問しながら理解を深めてみてください。
2026年3月7日・8日 MRI認定試験における主任試験員講評
今回の試験について「講義・支援目調整面接」両方の視点として下園主任試験員より講評をいただきました。皆さんの今後の参考になさってください。 2026.3.11 認定部
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今回のMRI試験を受験された皆様、大変お疲れ様でした。
皆様がこれまで積み重ねてこられた学習の成果を拝見し、その熱意を強く感じる試験となりました。
一方で、メンタルレスキュー協会が常に意識している「現場で機能する支援者・講師」という観点からは、今後さらに意識していただきたいポイントがいくつか見受けられました。
今後の自己研鑽の指針として、以下の4点を講評としてまとめます。
皆様がこれまで積み重ねてこられた学習の成果を拝見し、その熱意を強く感じる試験となりました。
一方で、メンタルレスキュー協会が常に意識している「現場で機能する支援者・講師」という観点からは、今後さらに意識していただきたいポイントがいくつか見受けられました。
今後の自己研鑽の指針として、以下の4点を講評としてまとめます。
MRSI 下園壮太
1. 「試験の場」を「支援の現場」として捉える態度
メンタルレスキュー協会の試験において、最も重要視しているのは「現場の状況判断ができるかどうか」。いわゆる「場」に応じられるか、です。一般的な試験では「覚えた知識」が問われます。それに慣れていると、どうしても試験では「たくさんの情報を、正確にアウトプットすること」に意識が向きがちです。ところが私たちの支援現場では、知識の質や量よりも、その情報や伝え方が、その場で「どのようなメッセージとして相手に届くか」が重要です。当然、MRI試験でも、そこを見ています。
課目試験だけでなく、支援目的調整面接の場面の「説明」でも、知識を披露することに終始してしまい、目の前の相手や状況への観察、配慮が置き去りになってはいなかったでしょうか。
自分の服装や言葉遣いを含め、常に「今、自分は支援の現場に立っている」という当事者意識を持って試験に臨むことを、改めて意識して受験してほしいと思います。
2. 「巻き込み」を作る実習の進め方
MCの課目講師の課題には実習部分があります。「講義」は自身のコントロールである程度成立させることができますが、「実習」は受講者を「巻き込む」力が必要です。今回の試験では、受講者を動かすための準備が不足しているケースが見受けられました。
- 場の空気を作る:唐突に内容に入るのではなく、簡単な準備運動やアイスブレイクを上手に活用し、受講者の「体」からほぐしていく工夫。
- 個別のフィードバック:全体に向けて話すだけでなく、個々の受講者の反応を拾い、適切なフィードバックを返す。
受講者の身になって、実習に参加しやすくなるような仕掛けや声掛けを、より入念に準備してみてください。
3. 「人となり」を伝える自己紹介
講師や支援者が「どういう人か」が早く伝わることは、相手の緊張を解き、リラックスした環境を作るための重要な鍵となります。この際、単なる経歴や居住地、趣味といった一般的な情報の羅列では、支援に有効な自己紹介にはなりにくいのです。大切なのは、自分の人柄が伝わる「エピソード」を語ることです。
「この人はこういう時にこう動く人なんだ」という具体的なイメージが伝われば、信頼関係の構築が早まります。そこに少しのユーモアを交え、さらにそのエピソードを本日の講義テーマとリンクさせることができれば、全体の構成に強い連動性が生まれます。
4. 単調さを打破する「リズム」のコントロール
カウンセリングにおいてリズムが重要であるのと同様に、講義や面接においてもリズムのコントロールは不可欠です。受験者の多くは「正確に伝えなければ」「時間内に終わらせなければ」という焦りから、どうしても一本調子(単調)なトーンになりがちです。
受け手は、同じ速度・同じ声調・同じようなスライドが続くと、すぐに集中力が低下してしまいます。以下のテクニックを意識的に練習してください。
- 「間」を活用する:重要な局面で一拍置く。
- 抑揚と反復:声の強弱、高低を変える。大事なポイントは繰り返す。
- 情報の動かし方:あえて前のスライドに戻って解説する、事例や比喩を差し込む。語りはリズムを変えるには非常に有効。講談などの語りを参考に、練習してほしい。
- 双方向の対話:(特にオンラインでは難易度が高いですが)受講者の反応により、その方と個別のコミュニケーションをとることが、全体にとって有効な場合があります。
独りよがりのアウトプットではなく、相手の受取状況に合わせたリズムを刻めるようになってください。
今回の試験での気づきを糧に、皆様がより一層「現場に強い」支援者としてご活躍されることを期待しております。
